金融業界はさまざまな法規制からデジタルとソーシャルの活用が遅れていると思われてきた。しかし、海外では積極的なデジタルイノベーションが起こり、日本でも、モバイルバンクの「じぶん銀行」が口座数140万件を獲得するなど徐々にその広がりを見せている。金融業界におけるデジタルとソーシャルのマーケティングイノベーションを考察する。
オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンの馬渕邦美です。1996年よりデジタルマーケティングの世界に携わり、現在は外資広告エージェンシーの日本法人「オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン」のデジタル化推進をリードしています。2012年はad:tech Tokyoで2回目のアドバイザリーボードを務めます。「ITmedia マーケティング」では、それぞれの領域の専門家の方々が、最新の情報で連載記事を寄稿されているので、私は外資広告エージェンシーの知見と、海外ネットワークを生かした事例を広くご紹介させていただこうと思います。
これから数回にわたり、筆者の経験を基に「デジタルとソーシャル時代のマーケティングイノベーション」をテーマに寄稿させていただこうと思う。
あまり知られていない事実だが、日本では銀行業界のHTMLメール配信が現在でも規制されている。これは2000年当時に、コンピュータウイルスなどの問題から始まった規制だ。規制の施行までには相応の時間がかかり、いったん規制されてしまうと、見直されるまでさらに時間がかかるのは言うまでもない。
海外ではすでにソーシャルメディアのアカウントを使った送金、スマートフォンやARを使った住宅ローンの照会、iPhoneと認証デバイスを使ったカード決済など、デジタルとソーシャルを駆使したさまざまなイノベーションがすでに始まっている。
が、まだ歴史の浅いソーシャルメディアは、日本では、企業が社内用に定めるソーシャルポリシーの浸透とWebページへの掲載などを除けば、現在はまだ規制と呼べるものが存在していない状況だ。ここには、確実に“ファースト・ムーバー・アドバンテージ”が存在する。
日本の個人金融市場はこの数年大きく落ち込んでいる。個人の消費市場が良い意味で刺激され、活性化されることを願って、本連載では数回にわたり、個人消費に結びつく新しいイノベーションを展開する海外の金融業界事例を紹介したいと思う。
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