資料請求サイトを活用するのは費用対効果が合わないのでしょうか。また、商談につなげるにはどうすればよいのでしょうか。
B2B企業のマーケティング担当者にとって、リード(見込み客)の獲得は最重要課題。そのリードを増やす手段の一つが、「資料請求サイト」または「比較サイト」と呼ばれるサービスです。
しかし、BPOサービス比較サイト「b-pos」を運営する弊社が顧客を対象に「これまで活用した資料請求サイトの商談化率」を調査した結果、商談化率は10%以下であることが明らかになりました。
資料請求サイトを活用するのは費用対効果が合わないのでしょうか。また、商談につなげるにはどうすればよいのでしょうか。
今回はそれらの疑問を掘り下げていきます。
先述の調査(外部リンク)は資料請求サイトの活用経験のあるB2B企業52社を対象に実施しました(調査期間:2025年2月17日〜3月2日)。同調査ではまず、資料請求サイトからのリード獲得数について「月間平均、資料請求サイトから提供されるリード数は約何件ですか?」と質問しました。すると、資料請求サイトからのリード獲得が「1〜5件」と回答した企業が21社で40.4%を占めました。次いで「6〜10件」と回答した企業が21.1%、「0件」と回答した企業が9社で17.3%でした。
獲得したリードから商談につながった割合について聞くと、商談を1件も獲得できなかった企業は31社。実に半数以上の企業が資料請求サイトからのリードを商談化できていないという結果になりました。
獲得リード数が多い企業に限ると商談化率は「1割〜3割」程度となっており、少量でも一定数のリードは商談につながっていることが分かりました。とはいえ、全体を通してみると資料請求サイトからの獲得リードの商談化率は「7〜8%」にとどまっています。一般的にインバウンドリードの商談化率の平均が25%と言われていることを考えると、その差は大きいと言わざるを得ません。
資料請求サイトから獲得したリードの商談化率が低いのはなぜなのか。以下の2つの論点から考えてみたいと思います。
まずは資料請求サイトがどのように集客を行っているかを理解しましょう。
資料請求サイトへユーザーが流入するチャネルはメルマガやリスティング広告などがありますが、基本的には「〇〇ツール 比較」のようなキーワードによるオーガニックでの流入がほとんどです。
例えば「勤怠管理システム 比較」と検索すると、以下のように、ほとんどの上位表示記事が比較サイト上のメディアの記事となっています。
「勤怠管理システム 比較」と検索するユーザーは「勤怠管理システムの導入を検討していて、どのサービスがよいかを比較したい」と思っています。そのため、このような比較記事ではユーザーのニーズを満たすために「勤怠管理システムとは?」のようなサービスの概要説明から、お薦めサービスの比較まで行っています。
ユーザーはサービス比較を閲覧しながら、自社のニーズに合ったサービスを見つけ出し、より詳しく知りたいと思ったタイミングで資料をダウンロードする流れになっています。
そのような流入経路で獲得したリードは「比較検討層」、つまり、あるソリューションに興味を持ち、比較検討を行っていることになります。しかし、一口に比較検討層と言ってもニーズの深さはさまざまです。具体的に導入を検討しているユーザーもいれば、今後発生し得る課題解決のための情報収集として資料をダウンロードするユーザーも存在します。
比較検討層は「準顕在層」とも呼ばれます。言い方を変えれば、必ずしもニーズは顕在化していないのです。つまり、資料ダウンロード発生時にアプローチをしても、すぐに商談化できない可能性があります。そこで、導入意欲を高めるための「リードナーチャリング」が必要となります。
リードナーチャリングにはインサイドセールスによる架電やメールマガジンの送付、ウェビナー開催などの手段があります。これらの手法は時間をかけて徐々に導入意欲を高めていくアプローチになるため中長期的に取り組む必要があり、時間、労力、コストが継続的に発生します。
SaaSプロダクトやITツールの場合、継続利用が前提かつ利益率が高いため、ナーチャリングコストは比較的早期に回収することができます。しかし、受託型やコンサル型の属人性の高いビジネスモデルのサービスの場合、ITサービスに比べて利益率が低く、単発依頼も多いため、ナーチャリングコストを回収できない可能性が高くなります。
故に、後者は「できるだけコストをかけずに契約企業を獲得したい」と、リードに対して即効性を求めてしまいがちです。しかし、自社の製品・サービスに興味を持っていることが明らかでない比較検討層に対して焦って商談を持ちかけても、良い反応が得られないばかりかストレスを感じさせてしまうかもしれません。
こうして、即効性を求めるほど成果が出ず、「比較サイトは費用対効果が合わない」と思い込んでしまうのです。
即効性がないのであれば、中長期的に活用して商談獲得数を最大化していく必要があります。そのために有効な3つのポイントを紹介します。
資料請求サイトは仕組み上、ほとんどがSEOコンテンツで集客を行っています。「〇〇代行 比較」のようなキーワードで表示される比較記事内では、さまざまな類似サービスが比較されており、ユーザーは自身のニーズに合った最適なサービスを見つけやすくなっています。
「すぐに各サービスの比較検討をしたい」と思うユーザーはその場で資料をダウンロードするかもしれませんが、全ユーザーが同じマインドであるとは限りません。以下のアクションで「本当に興味のあるサービスのみの情報収集」を行うユーザーも存在します。
これらのユーザーは記事を閲覧することによって、ソリューションそのものに興味を持っている状態から個別のサービスに興味を持っている状態へと引き上げられます。結果、導入意欲が高い状態でサービスサイトを訪れ、問い合わせにつながるのです。
もちろん、せっかくサービスサイトにリードを呼びこむことができても、離脱されてしまえば意味がありません。離脱を防ぎ、問い合わせを呼びやすくするためには、以下を意識してサービスサイトを整えましょう。
記事閲覧後にWebサイトへ流入する人は「もっと詳しくサービス内容について知りたい」という心理を抱いています。知りたい情報は料金なのか、実績なのか、導入効果なのか、さまざまです。どの情報にもアクセスできるようなサービスサイトにしましょう。
資料請求サイトはSaaSに特化したサイトやITツールに特化したサイトなど、領域を特化していることが一般的です。
SaaS特化型 | SaaSプロダクトに主軸を置いた比較サイト | BOXIL、SaaSLogなど |
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ITツール特化型 | ITツール全般を掲載する比較サイト | アスピック、ITreviewなど |
マーケティング特化型 | webマーケティング系サービスを掲載する比較サイト | LISKUL、ferretなど |
業界特化型 | BPOや製造業など、業界特化で掲載する比較サイト | b-pos(BPO)、イプロス(製造業)など |
特化した領域以外のカテゴリーが存在する比較サイトもありますが、特化した領域の方が記事への流入数や全体のPV数が多くなる傾向にあります。そのため、資料請求サイトに広告出稿を検討している場合は、そのサイトがどの領域に特化しているかを確認し、自社に合ったカテゴリーで掲載可能かを確認するようにしましょう。
また、自社に合ったカテゴリーがあったとしても、記事が取りたいキーワードで上位表示できていなければ見込み客へリーチできないため、掲載する意味がありません。
例えば、人事領域のクラウドサービスを提供する企業が「労務管理システムを拡販したい」と考えている場合、掲載した資料請求サイトが「勤怠管理システム」のキーワードでの上位表示を取れていても「労務管理システム」のキーワードで上位表示を取れていなければ、ニーズとマッチしません。
資料請求サイトを選定する際、まずは自社が獲得したいキーワードを明確化し、そのキーワードで上位で表示されているかをリサーチした上で問い合わせするようにしましょう。
見込み客はその場でWebサイトに流入してくれるとは限りません。情報収集として閲覧していた人の場合、ニーズが高まるタイミングは1カ月後か2カ月後、あるいは6カ月後になる可能性もあります。その際に取りこぼしを防ぐ施策として、並行して実施すると効果的なマーケティング施策を一部紹介します。
指名キーワードでの検索広告 | 指名検索時に他サイトへの流入を防ぐ |
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Metaなどでのバナー広告 | 単純接触回数を増やして第一想起を獲得する |
CVに近いキーワードでの検索広告 | 他のキーワードでした際の取りこぼしを防ぐ |
ユーザーは記事を一度閲覧しただけではサービス名を完全に覚えきれていない可能性があります。バナー広告への接触回数を増加させてサービスの認知度を高めたり、検索広告を使って他社より目立つ位置で表示させたりして、ライバルサイトにトラフィックを奪われないようにしましょう。
ここまで、資料請求サイトを有効活用するために、3つのポイントを紹介しました。見て分かるように「サービスサイトを整える」「最適なサイトを選定する」「他のマーケティング施策も並行して実施する」のうち資料請求サイトに言及しているのは「最適なサイトを選定する」のみです。これはつまり、資料請求サイトだけで商談を獲得するのは難しく、他のマーケティング施策と並行して活用していく必要があるということです。
「b-pos」の導入企業で毎月10件程度問い合わせ数が増えたという成功事例がありますが、その企業は3つのポイントを全て押さえた施策を実行しています。資料請求サイトの活用を視野に入れているマーケティング担当者は、まずはサービスサイトがきちんと整っているかどうかから確認することをお薦めします。
本記事が、B2Bマーケティング担当者の参考になれば幸いです。
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