SnapのCEO、エヴァン・シュピーゲル氏が最近、動画インタビューに立て続けに登場している。その中では「Snapchat」の強みであるAR(拡張現実)や、その領域でライバルとどう違いをを生みだしていくのかについても語っている。
※本稿は「『Metaが本当に腹立たしいのは……』 SnapのCEOがぶっちゃけトークでライバルに痛烈皮肉」の続きです。
AR(拡張現実)に関しては、MetaやAppleがそれぞれARグラスを開発するなど競争が激化している中でも、Snapはこの分野のリーダーになれる可能性を秘めているとシュピーゲル氏は主張する。そして、その鍵を握るのはSnapのAR開発チームと、同社が重視するイノベーションへの取り組みだという。
「何億ものユーザーがスマートフォンで(Snapchatの)AR体験を楽しんでいます。これらのAR体験は全て、何十万人もの開発者の手で作り出されています。こうした高度で複雑な技術を持っていると、簡単には模倣できません。開発者やクリエイター、そしてAR体験を愛するSnapchatのコミュニティーというエコシステムが確立されているため、Snapのプラットフォーム向けに制作された400万種類ものレンズをそのままコピーすることは非常に難しいでしょう。テクノロジー業界では顕著なことですが、単なる機能や製品から本格的なプラットフォームへといち早く進化することで、そこに長期的な価値が生まれるのです」
つまり、シュピーゲル氏はSnapの進化したAR技術とノウハウを武器に、特にMetaとの競争を乗り切ろうとしている。しかし、MetaのRay-Banとの提携によるARグラスの売り上げは好調であり、市場の標準になりつつあるように見える。また、その技術仕様もSnapのAR対応スマートグラス「Spectacles」を上回るものになっている。
今後の展開がどうなるかは、ただ見守るしかないが、圧倒的な資金力とリソースを持つ競合企業を相手に、Snapが現実的に競争を続けられるかは疑問が残る。それでもシュピーゲル氏が指摘するように、SnapがARのイノベーションやユーザー体験において、依然としてリーダーであり続けていることは間違いない。
シュピーゲル氏は米中貿易についても論じており、貿易制限がもたらす潜在的な課題に言及している。Snapは「Spectacles」の製造で中国のメーカーと提携しており、生産拠点を米国内に移さざるを得なくなれば、競争力を維持することはさらに困難になるだろう。
「現在、ビジネス界が抱えている問題は、この点に関して十分な明確さがないことです。政府が『この分野はビジネスに開かれており、この分野では競合するので協力しない』と明確に言えば、ビジネス界にとってプラスになるでしょう。現在の中国の起業家の立場からしても、非常に成功した会社を作り上げたにもかかわらず、米国政府から『わが国とわが国の価値観、そして中国との戦略的関係を考えれば、これはうまくいかない』などと言われるのは、とてもフラストレーションがたまることだと思います」
シュピーゲル氏の希望は、中国との貿易が開かれたままであることだ。しかし、同社が次の段階へ進もうとする中で、この問題は新たなリスク分野となる可能性もある。
ザッカーバーグ氏率いるMetaがワシントンのロビイスト軍団を動員し、制限の導入を推進することは間違いないだろう。そうすることで自社の利益につながる一方で、Snapchatをはじめとする競合他社へ打撃を与えられるからだ。
ソーシャルメディア業界で変化の渦中にいる人物としてシュピーゲル氏を見ると、大手プレイヤーによる分野支配やSnap自身による競争への取り組みについて興味深い観察がなされている。
このインタビューは、ソーシャルメディアの変革期の渦中にいる人物ならではの視点から見た、興味深い考察となっている。それでいて、大手企業がどのように市場を支配しているのか、そしてSnapがどのように競争してきたのかを、部外者のような視点で捉えてもいる。
今後も競争を続けていけるのかという点に関して、シュピーゲル氏は慎重ながらも楽観的な姿勢を見せている。だがこれはMetaの支配に対する対抗策としての「建前」にも思える。
シュピーゲル氏のインタビュー全文はこちら(外部リンク/英語)から視聴できる。
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