「動画広告がディスプレイ広告超え」他、電通「2024年 日本の広告費」インターネット広告媒体費の詳細分析注目すべき変化

国内電通グループのデジタル領域をけん引する4社は共同で「2024年 日本の広告費」のインターネット広告媒体費に関する詳細分析と2025年の予測分析を実施した。

» 2025年03月13日 14時00分 公開
[ITmedia マーケティング]

 既報の通り、2024年の日本の総広告費は通年で7兆6730億円(前年比104.9%)。インターネット広告費は3兆6517億円(前年比109.6%)と過去最高を更新した。インターネット広告費が総広告費中に占める割合は47.6%と半数に迫る勢いだ。

 国内電通グループのデジタル領域をけん引する4社(CARTA COMMUNICATIONS、電通、電通デジタル、セプテーニ)は、この結果のうち、インターネット広告費からインターネット広告制作費および物販系ECプラットフォーム広告費を除いたインターネット広告媒体費の内訳を広告種別や取引手法別などの切り口で分析し、さらに2025年の予測を加えた詳細分析を発表した。

 本稿では、その中から注目すべきポイントを紹介する。

最も大きくシェアを伸ばした動画広告、ついにディスプレイ広告を超える

 2024年のインターネット広告媒体費は2兆9611億円(前年比110.2%)。特に動画広告が前年比123.0%の 8439億円と、最も高い成長率となった。動画広告は広告種別構成比で28.5%となり、ディスプレイ広告を上回った。構成比で最大の検索連動型広告は前年比111.2%の1兆1931億円だった。ディスプレイ広告は金額、シェアいずれもわずかに低下した。

インターネット広告媒体費の広告種別構成比(出典:電通「2024年 日本の広告費」、以下同)

 動画広告の種類別の内訳は、インストリーム広告(動画コンテンツの前、中、後に再生される動画広告)が4260億円(構成比50.5%)、アウトストリーム広告(Webサイト上の広告枠や記事のコンテンツ面など、動画コンテンツ外で表示される表示される動画広告)が4178億円(構成比49.5%) となり、ほぼ同水準だった。取引手法別では運用型広告(プログラマティック広告。入札方式で取引される広告)が84.4%を占めた。

動画広告の種類別および取引手法別構成比

運用型広告は引き続き伸長、予約型も伸びる

 インターネット広告媒体費を取引手法別で見ると、運用型広告は前年比111.1%の2兆6095億円で、インターネット広告媒体費に占める構成比は88.1%だった。予約型広告(純広告やタイアップ広告など非入札方式で取引される広告)は前年比105.4%の伸長で2789億円。成果報酬型広告(閲覧したユーザーがあらかじめ設定されたアクションを行った場合に報酬が支払われる広告)は前年比99.3%の727億円だった。

インターネット広告媒体費の取引手法別構成比

 広告種別×取引手法別では、運用型の検索連動型広告がインターネット広告媒体費全体に占める構成比が最も高い40.3%。次いで運用型の動画広告が24.0%で、運用型のディスプレイ広告を上回った。

インターネット広告媒体費の広告種別×取引手法別構成比

ソーシャル広告市場は初の1兆円超え

 ソーシャルメディアのサービス上で展開されるソーシャル広告は、前年比113.1%の1兆1008億円となり、2019年の推定開始以降初めて1兆円を超えた。インターネット広告媒体費に占める構成比は37.2%となった。

 ソーシャル広告を種類別に「SNS系」「動画共有系」「その他」に分類すると、SNS系が4550億円(構成比41.3%)、動画共有系が4054億円(構成比36.8%)、その他が2404億円(構成比21.8%)となり、 動画共有系の割合が前年から増加した。

ソーシャル広告の構成比推移と広告種類別構成比

2025年のインターネット広告媒体費予測

 2024年のインターネット広告媒体費は2兆9611億円(前年比110.2%)だったが、今後も堅調に拡大するとみられ、2025年には前年比109.7%の3兆2472億円になると電通グループ4社は予測している。

インターネット広告媒体費総額の推移(予測)

 動画広告は2025年も二桁成長を維持し、前年比114.7%の9677億円になる見込み。アウトストリーム広告とインストリーム広告はほぼ同等の成長となるとみられる。

動画広告市場の推移と予測

 冒頭述べたようにインターネット広告は引き続き順調に成長しており、総広告費中に占める割合は半数に迫る勢いだ。

 ただし、電通グループが2024年12月に発表した「世界の広告費成長率予測(2024〜2027)」(外部リンク)によると、全世界においてデジタル広告はすでに総広告費の約6割(2023年の実績ベースで58.7%)を占めており、国・地域によっては8割を占めることもあるという。

 日本のデジタルシェアが相対的に低い理由としては、長年のテレビ広告の支持の高さが一因となっていると考えられる。しかし、インターネット広告は毎年3000億円規模で大きく成長している。電通メディアイノベーションラボ 研究主幹の北原利行氏は2025年2月27日に行われた「2024年 日本の広告費」に関する記者向けの説明会で、「国によってメディア視聴行動は違うので、それに伴う広告出稿も変わってくる。他の国がそうだからといってすぐそうなるということではない。しかし、全体的なトレンドからするとインターネット広告費の伸びは非常に大きく、日本も同じような形で推移していくと考えられる」と述べており、ここ数年で日本でも、インターネット広告が総広告費に占める割合が50%を超える可能性を示唆した。

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