広告業界で急成長する3つのAI活用領域とは? 電通デジタルCAIOに聞く(1/5 ページ)

多くの日本企業が生成AIを業務効率化のツールとして捉える中、電通デジタルは一歩先を歩んでいる。全社横断でAI活用を推進する「AI Native Twin」 という組織を立ち上げ、事業の中核にAIを組み込む。

» 2025年07月30日 06時00分 公開
[仲奈々, 大村果歩ITmedia]

 多くの日本企業が生成AIを業務効率化のツールとして捉える中、電通デジタルは一歩先を歩んでいる。同社は2024年、全社横断でAI活用を推進する「AI Native Twin」(AIネイティブツイン) という組織を立ち上げ、事業の中核にAIを組み込むことで、マーケティングそのものの変革に挑んでいるのだ。

 この変革をけん引するのは、同社CAIO(最高AI責任者)の山本覚氏だ。山本氏の就任後、広告運用の自動化で月次目標の3倍以上を記録し、AIコンサルティング事業でも売上目標の2倍以上を達成している(2025年6月時点)。なぜ同社は、AIでビジネス変革を起こせているのか。山本氏に話を聞いた。

電通デジタル CAIO 兼 執行役員山本覚氏。東京大学松尾豊教授のもと人工知能(AI)を専攻。2013年にデータアーティスト株式会社を設立し、2023年に電通デジタルと合併・参画。

電通デジタルCAIOが推進する「全社AI活用」の背景

 電通デジタルがAIでビジネス変革を実現できている理由の一つは、組織構造の変革にある。山本氏がCAIOに就任した背景には、AI活用における構造的な課題があったという。

 「私はもともと執行役員としてデータ&AI部門に所属していましたが、部門の利益追求と全社貢献のバランスが難しい状況がありました。そもそもAIは、特定部門が単独で扱うべきものではありません。全社に貢献するAI専門組織が必要だということで、CAIO職を新設しました」(山本氏、以下同)

 同時に立ち上げたのが横断組織のAIネイティブツインだ。

 AIネイティブツインは専門組織ではなく、既存事業のAI化を目指すという明確な方針を持つ。マーケティング、トランスフォーメーション、コンサルテーション、テクノロジーなど各領域から約60人が兼務で参加している。既存の事業領域をAIネイティブ化することを目指す、いわば「AI化された未来の電通デジタル」を体現する組織に──という、山本氏の考えに基づくものだ。

 「AIネイティブツインには、基本的にマネジャーレベルの方をアサインしています。自身のグループや部署にAIを浸透させ、実際のプロジェクトに紐づいたAI活用を推進する役割を担ってもらうためです」

 現在は各事業部と話し合いながら、何にAIを使い、どこを変えていくかを決定している。その実装は、電通デジタルのAI開発拠点を担う子会社「電通データアーティストモンゴル」 と連携。グループ内で一貫して開発をしているから、理想に近い形で、かつスピーディな開発が実現できるのだ。

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