最初の顧客接点が検索やSNSではなく、生成AIに置き換わったときに、企業のマーケティング戦略はどのように変わるのだろうか──。米Brazeのビル・マグヌソンCEOは、「ChatGPTはブラックボックスだ」と、消費者行動の可視性の低さを指摘する。
ChatGPTをはじめとする生成AIの普及は、ビジネスにかつてないインパクトを与えている。そのスピードも影響力も想像をはるかに超え、「生成AIが今にもカスタマージャーニーを書き換えようとしている」と多くのマーケターが気付き始めている。
最初の顧客接点が検索やSNSではなく、生成AIに置き換わったときに、企業のマーケティング戦略はどのように変わるのだろうか──。
11月13日に行われた「Braze City x City Tokyo 〜デジタル・ボディランゲージ x AI で実現する次世代CX〜」にあわせて来日した米Braze(ブレイズ)CEO兼共同創業者のビル・マグヌソン氏に、インタビューを実施。AI時代に、マーケターは顧客行動をどのように捉え、カスタマージャーニーを描き直すべきなのか。そのヒントを聞いた。
2025年11月現在、多くの消費者はオンラインで買い物をする際に、まずGoogle ChromeやSafariなどのブラウザ、もしくはAmazonや楽天市場などのアプリを開き、「検索する」ことから始めるのではないだろうか。いきなりChatGPTを立ち上げて、「黒くて肩掛けできる仕事用バッグを探して」とプロンプトを打つ人は、まだ少数派ではないかと思う。
だが、そのように消費者行動が変わる未来は、さほど遠くはないと、マーケターの誰もが感じているはずだ。
これまでは、Google上の検索ワードから消費者の意図を推測したり、アクセス解析を通じて行動を把握したりすることができた。しかし今後、もしChatGPTとの対話だけで「情報収集→比較検討→購入」のカスタマージャーニーを完走するのが当たり前になると、企業は消費者の思考や意思決定プロセスを知る余地がなくなってしまう。
「現状、Googleが提供しているようなデータはOpenAIからは提供されていない。ブランドにとってChatGPTは完全なブラックボックスだ。実際、検索エンジン経由のトラフィックが減少している一方、ChatGPTからのアクセスは増加しているという企業の話を耳にするが、その中身が『ChatGPTが回答を生成するためのリサーチ目的でアクセスしているのか』あるいは『ChatGPTによって誘導されたユーザー(人間)が訪問しているのか』を区別するのは、非常に難しい」とマグヌソン氏は指摘する。
つまりマーケターにとって、新たなチャネルとしてのChatGPT最大の問題点は、消費者行動の可視性が極めて低いところにある。
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