SnapのCEO、エヴァン・シュピーゲル氏がソーシャルメディアの進化について、自身の考えを語った。
「Snapchat」を運営するSnapは最近PR活動を強化しており、同社CEOのエヴァン・シュピーゲル氏を長編の動画インタビューに立て続けに登場させている。その中でシュピーゲル氏はソーシャルメディアの進化やSnapの役割、AR(拡張現実)の開発、AI(人工知能)などについて自身の考えを語っている。
また今週、シュピーゲル氏は起業家のスティーブン・バートレット氏がホストを務めるポッドキャスト「Diary of a CEO」に出演。2時間半にわたるインタビューの中で、業界に関するさまざまな見解を披露した。ここでシュピーゲル氏はMetaとの競争、イーロン・マスク氏とXがもたらした影響、コンテンツの管理、TikTokの台頭など、主要ソーシャルメディアに関連した話題を幅広く取り上げている。
シュピーゲル氏がインタビューで語った主なポイントを紹介する。
シュピーゲル氏はまず、Snapchatの進化と自身がこのアプリを発明するに至った経緯を説明した。Snapchatはシュピーゲル氏のケープタウンでの留学期間に生まれたものだったという。
他のアプリと差別化についても言及した。Snapchatはカメラ画面が最初に開く仕様となっており、いいね数などの虚栄的な指標を排除している。シュピーゲル氏は、この設計がSnapchatのよりポジティブなユーザー体験につながっていると話す。
「昨年、オランダとオーストラリアで独立した研究が行われました。ここではInstagramとTikTok、Snapchatを比較しています。結果、Snapchatの使用は精神衛生に悪影響を及ぼさないものの、InstagramとTikTokの使用には精神衛生に悪影響があると結論付けられました。そして、オランダでの研究では、Snapchatが実際にウェルビーイングを促進し、人間関係の促進にも役立つという結果が出ています」
シュピーゲル氏はまた、この研究に関連して、MetaがSnapのアイデアを模倣していることを皮肉る発言もしている。
「本当に腹立たしいのは、Metaがわれわれの発明を流用して、人々を不幸にし、自信を失わせるような製品を作ってしまっていることです」
この主張は興味深いものである。と言うのも、Snapchatにもネガティブな側面があるからだ。例えば、メッセージが自動的に消える仕様のために、いじめやセクストーション(性的搾取を目的とした脅迫)が密かに行われることがある。しかし、Snapchatのユーザーは、他のアプリとのネガティブな比較やメンタルヘルスへの影響について十分に知らされていない。従って、この点について真の評価を得るには、もっと調べてみるべきことがあるだろう。
しかし、シュピーゲル氏は現時点でこの点について、Metaに対して道徳的優位性を持っていると自信を示しているようだ。
シュピーゲル氏はまた、コンテンツのモデレーションや、ソーシャルプラットフォームがアプリで何を許可すべきかという、より広範な議論にも触れている。
「検閲という概念は、民間企業には当てはまりません。企業には、どのようなコンテンツを自社のプラットフォームに掲載するかを決定する権利があり、それ自体が憲法修正第1条(表現の自由)によって保障されています。ある企業は『何でも受け入れる。すべてOK。問題なし』と判断するかもしれないし、実際にそうした選択をしているプラットフォームもあるようです。一方で、われわれのようなプラットフォームは、『健全な議論が行われる環境を整え、ユーザーが安心してコンテンツを発信できるようにするためには、ポルノや暴力的なコンテンツ、ヘイトスピーチなどを目にしない環境を提供することが重要だ』と考えています。こうしたコンテンツは人々を不快にさせるものであり、われわれの目指すプラットフォームにはふさわしくありません」
シュピーゲル氏のこの発言も、やや都合のいい解釈と言える。というのも、単に一般公開されていないために他のプラットフォームと同じ精査を受けていないだけで、Snapchatがヌード写真やその他の物議を醸すコンテンツの送信に利用されているのは明らかだからだ。シュピーゲル氏がアプリ上で一般公開されるポルノを禁止することは比較的簡単かもしれない。しかし、それはSnapchat全体からそうしたコンテンツが排除されることを意味するわけではなく、むしろより危険な形で存在している可能性もある。
それでも、シュピーゲル氏は昨今大きな話題となっているコンテンツ管理において、Snapchatの立ち位置に自信を持っているようだ。そして、最近のMetaのコンテンツ管理方針の変更についても批判している。
「イーロン(マスク氏)がTwitter(現在のX)を買収して以来、まるでドミノ効果のように、コンテンツ管理の方針やソーシャルメディア上の発言の在り方、さらには検閲と表現の自由をめぐる大きな動きが広がっているように思います。ソーシャルメディアにおける分断が始まり、多くの人が特定のプラットフォームを離れてBlueskyやThreadsへ移行するようになりました。数年前まで、右派寄りの大規模なプラットフォームといえばRumbleくらいしかありませんでしたが、今では私たちの目の前で何もかもが変化しているように見えます。(Metaの)決定について特に興味深いのは、彼らが基本的に政治的な流れに従っている点です。バイデン大統領の時代には、Metaは非常に積極的なコンテンツ管理を行っていました。マーク(ザッカーバーグ氏)自身も公言していますが、当時のホワイトハウスがそれを求めていたことも影響していたのでしょう。そして今、政権が変わり、コンテンツ管理に対するアプローチも異なるものになっているように思います。Metaはその流れに合わせて方針を変えているのではないでしょうか」
シュピーゲル氏は、ザッカーバーグ氏とMetaの姿勢について「生存本能的なものだ」と指摘する。つまり、ホワイトハウスに誰がいるかによって、Metaは都度方針を変えているというのだ。この見解は、ある意味で的を射ているように思える。しかし、Snapのトップであるシュピーゲル氏の発言には、どこか苦々しさや対抗意識がにじんでいるようにも感じられる。
シュピーゲル氏はもう一つのライバルであるTikTokについても批判的な見方を示している。
「私はTikTokを使いません。聞くところによると、あれはまるでクラックコカインのようなもので、人々は何時間も意味もなくスクロールし続けてしまうらしいからです」
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