第22回 ダイナミック・コンテンツ――新しい時代のリアルタイムなマーケティング【連載】海外事例に学ぶマーケティングイノベーション

「リアルタイム・マーケティング」の時代においては、マーケターはこれまでのマーケティング概念を打ち捨て、今この瞬間を生きることを学ばなくてはならない。最先端のキャンペーンを参考にしながら、リアルタイム・マーケティングの特徴を探る。

» 2014年10月27日 08時00分 公開
[馬渕邦美,オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン]

 新しい広告キャンペーンのローンチはいつもエキサイティングだ。時には、プロジェクトに関わったメンバーが集まってパーティを開く。戦略が合意され、クリエイティブアイディア、プロジェクトの最終合意を得て、オンラインの広告枠や屋外広告スペースが確保され、キャンペーンがローンチされる。プロジェクトの責任者や誰もがその広告の前に座って、大きく息を吸い込み成功を待つ。

 このように、旧来の広告キャンペーンの開始プロセスは、子供の誕生からその成長見守るというより、社会人デビューする瞬間のみを見るのに近い。しかし、顧客やチャネルが複雑化した現在におけるマーケティングにおいては、プロジェクトがスタートしてからがより重要なプロセスとなる。顧客の行動データやその分析結果に合わせて、ダイナミックにマーケティングを変化させ続ける必要があるのだ。

 その結果、われわれは努力の大半をキャンペーンがスタートした後に費やすことになる。ブランド戦略的には、スタート時のしっかりとしたプランニングが非常に重要であることに変わりはないが、その比重は軽くなり、キャンペーンに対する消費者のリアクションに合わせて大きくキャンペーンを変化させるプロセスとアルゴリズムにより注力するようになっているのだ。これは、リアルタイムにコンテンツがソーシャルで共有されるようになったことに起因する。スマートフォンの普及により、オンライン上のニュースやアプリ経由でのコンテンツのアップデートが頻繁になり、情報発信がほぼリアルタイムになっているためだ。

 多くのマーケターは、プロジェクトにおけるコンテンツの重要性を理解しているものの、現在展開されているコンテンツマーケティングの議論にはある間違いがある。パワフルなコンテンツの制作と、そのコンテンツ・パワーのみで「ブランドをコントロールしよう」にのみと考えることだ。マーケターは、コンテンツとキャンペーンをプラットフォームとして発想すべきではない。

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