アメリカン・エキスプレスが展開した小規模店舗支援プログラム「スモールビジネス・サタデー」の成功は、さまざまなデジタルマーケティング施策の展開と並行して、政治家や地方自治体への地道なロビー活動を地道に行ったことにある。キャンペーンに実態を持たせ、消費者に「自分ごと」と思ってもらうには?
アメリカン・エキスプレスにとって、アメックスカードが使える加盟店舗の活性化はカードの使用頻度を向上させる上で高プライオリティーのアクションである。そのために同社は、アメリカ国内に数百万店あるとも言われるスモールビジネス(小規模店舗)の支援プログラムを始動させようと考えた。
というのも、アメリカにおける雇用創出の実に64%がスモールビジネスから生まれているからだ。スモールビジネスを支援するプログラムの成否は、アメリカン・エキスプレスのビジネスばかりではなく、アメリカ経済全体にも影響を与える可能性を持つ。ブルームバーグNY市長や州知事をはじめ、政治家のリーダーたちは積極的にこのプログラムを支援した。オバマ大統領までがこのキャンペーンのハッシュタグを自分のTwitterで紹介した。今から考えれば、このプログラムは雇用創出と地域活性の観点から、アメリカン・エキスプレスの見事なロビー活動の成果とも言える。
アメリカの11月第4木曜日はサンクスギビング・デー(感謝祭)である。翌日の金曜も祝日であり、土日合わせると4連休となる。全米のほとんどの小売店では、この連休中の金曜日から年末商戦をスタートさせ、年末商戦は小売店の年間売り上げの20%以上を占めると言われる。年末商戦をうまく乗り切れば収支が黒字化するという意味で、この期間はブラックフライデーとも呼ばれている。ちなみに、週明けの月曜は「サイバーマンデー」。感謝祭の連休中に買い物ができなかった消費者がオンラインで買い物をするためだ。そして、ブラックフライデー(金曜日)と、サイバーマンデー(週明け月曜日)の間の土曜日、日曜日が、スモールビジネス(小規模店舗)の商売を活性化させるためにアメリカン・エキスプレスが仕掛けた「スモールビジネス・サタデー」なのである。
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第2回 地域活性化で雇用創出を――アメックスの小規模店舗支援プログラム「スモールビジネス・サタデー」
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第7回 モバイルが利用される“モーメント”を選び、“モバイルムーブメント”を起こす
第8回 ソーシャルメディアでムーブメントを起こす際の心得
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第1回 拡張現実(AR)の背景と現状について――私はいかにしてARに魅せられたか
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第1回 衰退する企業と躍進する企業、違いは「事業定義の仕方」にある
第1回 CMOが日本の組織に馴染まない理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.