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僕がPR会社に入ったのは8年前。そのとき、ある方から一冊の本をいただきました。
米国のPRパーソンであるアル・ライズが著した「ブランドは広告でつくれない」という本です。PR業界では話題になった本ですので、きっとお読みになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この本には「広告vsPR」という副題が付けられているのですが、本の内容はこの副題のとおり、大まかに言ってしまえば「広告はもう古い。これからはPRの時代」といういささか刺激的なものです。この本が上梓された2003年当時はひょっとしたらそのような空気がPR業界を覆っていたのかもしれませんね。
2003年と言えば、六本木ヒルズが開業し、いわゆる「地デジ」がはじまり、ブロードバンドユーザーが1000万人を突破した、そんな年でした。
広告をはじめとするコミュニケーション業界にもなんとなく次の時代へ向かっていく雰囲気があったのでしょう。「以前ほど広告が効かない」ということが言われはじめたのもこの時期だったかもしれません。ITの発達が人々の情報行動に大きな変化をもたらすのではないかという予想。それに伴い、それまでの企業コミュニケーションの形が変化を強いられるのではないかという不安。「ブランドは広告でつくれない」はそんな業界の空気を受けて、企業コミュニケーションにおける広告主導の時代の終わりとPR主導の新時代の到来の宣言という意味で受け入れられたのだと思います。
この本の主旨である「広告の時代が終わり、PRの時代が到来する」という予言。前半部分が当たったかどうかはさておき、後半部分については多少納得できるところもあります。確かに、このところ、企業コミュニケーションのあらゆる場面で「PR視点」「PR戦略」という言葉を聞くようになりました。「PRの時代」とは言えないまでも、PRはちょっとしたブームであると言えるかもしれません。
- 第1回 PR業界人の悩み――成功パターンが崩壊したいま、僕たちが考えること
ITの普及は消費者を取り巻く情報環境を一変させた。企業PRの観点からすると、このような環境変化は良かったのか、悪かったのか……。マスメディアを中心としたPR戦略の基本パターンが崩壊し、新しい時代のPR手法が求められる時代。電通PR 細川氏のメッセージを送る。
- 第2回 PRは「公共との良好な関係作り」
PRに今、求められているのは、メディア掲載のための安直な手法ではなく、PRの本来の意味である「公共との良好な関係作り」だ。電通PR 細川氏によるPR原論第2回。
- 第3回 クチコミマーケティングを巡る残念な2つのこと
メッセージを正しく届けるうえで重要なのは、メッセージ(=コンテンツ)を運搬するメディアの特性を知ることだ。広告には広告に最適な表現があり、ブログにはブログに適した表現がある。残念なマーケターはそのことを理解していない。
- 第4回 ステマかどうかなんて関係ない
少しでもステマだと疑われるようなコミュニケーション方法は採用するべきではない。企業コミュニケーションにおいて重要なのは、結局、生活者との良好な関係作りに寄与するコミュニケーションかどうか、あるいは、生活者に好かれるようなコミュニケーションかどうか、ということなのである。
- 第5回 ペイパーポストが「ナシ」な理由 〜成果指標と情報流通構造から考える〜
ペイパーポストとは、企業がブロガーに金銭を渡し、企業の情報をブログに掲載させるサービスのこと。確かにこういったものを利用すれば、簡単に企業の情報を多数のブログに取り上げてもらうことができます。しかし、それが何になるのでしょうか?
- 第6回 「ステマ」のカジュアル化がより巧妙なステマを横行させる
ステルスマーケティングの何が悪なのかといえば、「ステルス」という点につきる。情報の受け手に知らされるべき事実が知らされないまま、情報が発信されること。それが悪なのである。
- 第7回 ソーシャルメディア時代の記事の「良い出方」
最近、PR担当者にとっての記事の「良い出方」「悪い出方」の基準に新たな判断軸が加わった。「ソーシャルメディア上でどのくらい語られているか」という軸である。
- 第8回 メディアは見るな、生活者を見よう〜インターネット時代における有能なPR担当者像〜
コンテンツへのアクセス方法が全く違うインターネット上のメディアと従来型メディア。それぞれを対象としたパブリシティでは、考え方が違って当然です。にもかかわらず、実際のパブリシティでは、このあたりの考え分けが十分にできていないのかもしれません。
- 第9回 削除しようとしたとき炎上は始まる
2012年7月、ある電子書籍リーダーメーカーが炎上しました。この電子書籍リーダーメーカーはこれらの書き込みをまとめて削除してしまいます。おそらく書き込みさえ削除してしまえばシステム不備への不満も「削除」できると考えたのでしょう。しかし、そうはいきませんでした。
- 第10回 間違いだらけの新任PR担当者研修
PRとは何でしょうか? 「企業と公共との良好な関係作り」というのが正解です。しかし、PR業務未経験の新任担当者には、何のことやらチンプンカンプンでしょう。つまり、定義としては正解であっても、この定義をそのまま新任担当者に告げるのは間違いなのです。
- 第11回 PRは広告の代わりにはならない
PRは「安価な広告」ではありません。そのような誤解が広まってしまうと、「メディア」「PR担当者」「企業」、いずれも不幸になります。PRと広告は「ある程度違う」ではなく、「全く違う」のものなのです。
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