10月6日に米国でアドバタイジング・ウイーク・ニューヨークが開催された。「AIが検索マーケティングをどのように変化させ、業界はどう適応できるのか」をテーマにパネルディスカッションが行われた。
自動車メーカーのHyundai Motor(ヒュンダイ)は、AI(人工知能)の急速な普及に対応するため、マーケティング戦略をより会話的な方向へとシフトしている。これは、ヒュンダイのメディア代理店である米Canvas Worldwideの幹部が10月6日に開催された「アドバタイジング・ウイーク・ニューヨーク」(Advertising Week New York)のパネルディスカッションで述べたもので、検索ベースのマーケティングがAI主導の検索へと大きく変化している現状を反映している。
「私たちの主な目標は、消費者へのアプローチ方法を根本的に再考することだ。もはや“検索の配信”ではなく、“検索におけるエンゲージメント(関与)”が重要になる」と、Canvas Worldwideの最高製品責任者(CPO)兼エグゼクティブ・バイスプレジデントのグレッグ・ジョンズ(Greg Johns)氏は述べた。
このパネルでは、ジョンズ氏のほか、スペインのMaking Science 最高製品責任者コスタンツァ・ゲルフィ(Costanza Ghelfi)氏、米Google マーケティング・プラットフォーム米州マネージングディレクターのマルタ・マルティネス(Marta Martinez)氏が登壇した。モデレーターはForrester上級アナリストのニキル・ライ(Nikhil Lai)氏、Making Scienceの最高収益責任者(CRO)ジェイソン・ダウニー(Jason Downie)氏が務めた。
グーグルがAI検索とAIモードを導入したことで、「ゼロクリック検索」(ユーザーがリンクをクリックしない検索)が増加している。ゲルフィ氏によると、現在米国内の検索の約65%がクリックなしで完結しているという。
消費者がAIツール検索の利用に慣れるにつれ、キーワードよりも自然言語で質問するようになっている。これにより、検索がより具体的で、より会話的になっているとパネリストたちは指摘した。
一般的に、自動車は「検討度の高い」買い物であり、消費者は購入前に多くの情報を調べる傾向がある。ジョンズ氏によれば、多くの自動車購入者にとって口コミが重要な要素だという。AI検索が急速に普及する以前、マーケターはこのような個人的な口コミの会話に関与することはほとんど不可能だった。だがAIの登場により、消費者が友人と話すようにAIと会話するようになったため、マーケターもその対話に参加できる可能性が生まれた。
「AIによって、私たちはこれまで可視化できなかった“オフラインの会話”にも関与できるようになりつつある。消費者がAIを信頼し始めている今、私たちはその会話の一部になれる」とジョンズ氏は語った。
ジョンズ氏によれば、会話型AIによる検索は、ヒュンダイの公式サイトへのアクセス数を減少させる可能性がある一方で、消費者の知識とエンゲージメント向上につながるという。
メイキング・サイエンスが開発した「Ad Machina」のようなソフトウェアは、ブランドが自社に最適なAI対話を見つけるのに役立つ。その狙いは“友人と話すような感覚”でブランドが消費者と交流できるようにすることである。
検索マーケティングが急速に成長した理由の一つは、その仕組みの「シンプルさ」にあった。つまり「ユーザーがクリックしたときだけ課金される」という単純なモデルである。しかし、ジョンズ氏によれば、この構造は今後大きく変化し、より複雑化していくという。新しい検索環境で成功するためには、企業が自社内のサイロ化(縦割り構造)を超え、手元のデータを最大限に活用する必要がある。
「私たちは、クリックやキーワードによる戦場から離れ、“会話と影響力”による新しい戦場へと移行している。この新たな戦場で勝つためには、もはやサイロ化されたやり方では通用しない」とゲルフィ氏は述べた。
Googleやその他の検索プラットフォームがAIツールを次々と導入し、消費者がAI技術に慣れていくにつれて、マーケターは検索戦略そのものを抜本的に見直す必要がある。
「これは単にテクノロジーを拡大する話ではない。消費者へのアプローチ方法やビジネス運営の在り方そのものを変える話だ」とジョンズ氏は語る。「だからこそ、全ての人がまず“大きな視点で考える”ことが重要だ。なぜなら、これは本当に大きな変化だからだ」
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