メッセージを正しく届けるうえで重要なのは、メッセージ(=コンテンツ)を運搬するメディアの特性を知ることだ。広告には広告に最適な表現があり、ブログにはブログに適した表現がある。残念なマーケターはそのことを理解していない。
「●月×日発売の△△△っていう美容液、マジでおすすめ! ◆◆◆っていう成分が配合されてて、これまでの美容液とは全然違うの!」
……この一文をご覧になってどうお感じになったでしょうか? 「嘘くさい」「気持ち悪い」「いったいなんのステマだ!?」というあたりが多くの方の感想ではないでしょうか。「それは興味深い商品だ。自分も友達に推薦しなければ!」とお思いになったという方はおそらくいらっしゃらないでしょう。
にもかかわらず、こういう文言をWeb上にまき散らすことが「クチコミマーケティング」だとする人もまだまだ多いように思います。今回はこのクチコミマーケティングに関するお話をさせていただきます。
クチコミをマーケティングに活用しようという考え方自体は割と以前からあり、1990年初頭には主婦などを対象にしたオフラインでのクチコミマーケティングも行われていたようですが、現在のように大きく注目されるきっかけとなったのは、やはりソーシャルメディアが普及し始めてからです。
具体的には2000年にエマニュエル・ローゼンが著した「The Anatomy of Buzz」(邦題「クチコミはこうしてつくられる―おもしろさが伝染するバズ・マーケティング」)がベストセラーになったあたりに始まります。
その後ソーシャルメディアがじわじわと普及していくにしたがってクチコミマーケティングもじわじわと注目されはじめ、ブームのピークを迎えたのは2006〜2007年頃だったでしょうか。この頃には米国のクチコミマーケティング団体WOMMA(Word Of Mouth Marketing Association)による「ブロガーとのコンタクトガイドライン10箇条」が日本でも紹介され、多くのマーケティング系セミナーやメディア記事でクチコミマーケティングがテーマに据えられました。僕が理事/事務局長を務めているWOMマーケティング協議会が設立準備に入ったのも確かこの時期だったと思います。
このように21世紀のクチコミマーケティングブームはある種ソーシャルメディアブームと歩みをともにしてきたわけですが、その背景にあるのはやはり「従来の広告が効かない!」というアレです。
第1回 PR業界人の悩み――成功パターンが崩壊したいま、僕たちが考えること
第2回 PRは「公共との良好な関係作り」
第3回 クチコミマーケティングを巡る残念な2つのこと
第4回 ステマかどうかなんて関係ない
第5回 ペイパーポストが「ナシ」な理由 〜成果指標と情報流通構造から考える〜
第6回 「ステマ」のカジュアル化がより巧妙なステマを横行させる
第7回 ソーシャルメディア時代の記事の「良い出方」
第8回 メディアは見るな、生活者を見よう〜インターネット時代における有能なPR担当者像〜
第9回 削除しようとしたとき炎上は始まる
第10回 間違いだらけの新任PR担当者研修
第11回 PRは広告の代わりにはならないCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.