ITの普及は消費者を取り巻く情報環境を一変させた。企業PRの観点からすると、このような環境変化は良かったのか、悪かったのか……。マスメディアを中心としたPR戦略の基本パターンが崩壊し、新しい時代のPR手法が求められる時代。電通PR 細川氏のメッセージを送る。
PR業界の悩みは相当深い。
「ブームを担うべき若い人は新聞を読んでいない。最近じゃ、テレビをまったく見ないなんて人も珍しくない。問題を打開するヒントはインターネットにあるんでしょうけど、Facebookだ、Twitterだ、Pinterestだ、なんて言っても(PR的に)大成功した事例なんか聞いたことがない。いったいどうすりゃいいんでしょう?」
相談なのか愚痴なのか、僕が同業者たち(PR業界関係者)からこんな嘆きの言葉を聞いたのは一度や二度ではありません。企業のメッセージが消費者にうまく届かないのです。あるいは、僕達がプランしたPR戦略通りにメッセージが拡散しないというか。
日本でブロードバンドの本格的な普及が始まったのは2000年代初頭です。この頃はPR業界関係者もインターネットに大きな期待を寄せていたと思うんですね。「これからの俺たちの主戦場はインターネットだ」と。事実、ブロードバンドは急速な勢いで普及し、インターネットが生活インフラとなり、インターネット上に様々なプラットフォームが生まれ、プラットフォームを手軽に利用できるデバイスが発達し、気がつけば人々の情報環境は大きく変わっていました。いまや企業PRの主戦場はインターネットです。これは間違いない。
しかし、どうしても違和感を拭えません。
インターネットを主戦場に、やれアドテクノロジーだ、やれWOMマーケティングだ、といろいろやっているのに、マスメディアを主戦場にしていた頃の「手ごたえ」が感じられない。僕たちは新しいメディアの動向を熱心に研究しているし、以前と変わらず夜遅くまで仕事をしているはずなのに、一昔前(インターネット以前)と同じようなマーケティング効果を出せていないと感じるPR関係者はとても多いのではないでしょうか。
冒頭の相談とも愚痴ともとれるPR業界関係者の嘆きは、どうも、「こういうところ」が原因だという気がします。インターネットを学び、状況に適応しているはずなのに、実際の仕事の場面では、手応え(PR効果)が実感できない。時代は変わってしまっているので、インターネット以前の仕事の仕方には戻れない。多くのPR業界人はこういったジレンマに陥っている気がします。
同じ業界人として、仲間たちのこのような悩みはよく理解できます。愚痴を言いたくなる気持ちも共感できるのですが、一方で業界のひねくれ者の僕なんかは「悩みと努力の方向が間違ってない?」なんて思ったりもするわけです。
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