AIをフル活用する一方でメタバースとの統合を深め、Facebookのユーザー体験はかつてと大きく変化しつつある。人間の手によらないコンテンツであふれたFacebookが「ソーシャルメディア」と呼べるのかは疑問だが、Metaが目指す未来は明らかにその方向を向いている。
現在でも世界最大のソーシャルプラットフォームであるFacebookは、そのクールなイメージを若干失いつつあるものの、ユーザーはいまだに活発に利用しており、多くのコミュニティーにとって重要なつながりの場となっている。
しかし近年、Facebookはソーシャルグラフ(人とのつながり重視)からエンターテインメント重視へのシフトを図っており、AIツールも利用してユーザーに「アニメキャラクターの動画パーティーを想像してください」といった提案を表示させるなどしている。
こうしたアプローチがソーシャルメディアの未来なのかは疑問だが、Metaは新技術トレンドを取り入れるのが得意であるため、次に来る変化も大いに期待される。
以下は、Metaが次に目指すと予想される主な動向である。
Metaは生成AIへの多大な投資を行い、インフラに数十億ドルを費やしている。もともとはメタバースが次世代の中心的なフォーカスだったが、AIツールの急速な発展によって方向が変わり、MetaもAI競争に乗り出している。
公平を期すために言うと、Metaは10年以上も前からAIに取り組んでいる。長年にわたりAI開発に注力してきたMetaは、OpenAIなどの他の企業がけん引力を得ている今こそ成果を発揮する機会だと見ている。
唯一の問題は、現時点においてMetaのAIツールのほとんどが、ソーシャルアプリで人間同士のリアルなつながりを構築する上では役に立たないことだ。
ソーシャルメディアは文字通りソーシャルなものとして設計されており、一般的には人間同士の相互作用を伴うはずだ。しかし、どうやらMetaはこのパラダイムを変えようとしているようで、アプリ内でAIチャットbotの使用を奨励しようとしている。
実際、Metaは既にクリエイターが自分のAIアバターを作成する機能や、ランダムにAI画像を生成して友達と共有する機能を提供している。これらは、Metaがユーザーに共有してほしいと思っているリアルな人間的体験ではなく、コンピュータが生成した陳腐なものであり、Metaのネットワーク全体に問題を引き起こしている、というのも、AIが生成した画像は実際の描写のように表示され、無自覚なユーザーの間で大きな関心を集め続けているからだ。
これらは欺瞞的であり、スパム的だ。それでもMetaはもっとそれを望んでいるようだ。ザッカーバーグ氏は最近のインタビューで、FacebookやInstagramのコンテンツがますますAIによって生成されるようになることを期待していると語った(関連記事:「マーク・ザッカーバーグ氏が描くAIの未来に異議あり ソーシャルメディアから人間性が奪われていいのか?」)。一方でMeta自身もユーザーにAIを投稿や添付ファイルに組み込むよう促すことで、この傾向を後押ししている。
また、Metaは最近、AIチャットbotだけで構成されたソーシャルアプリ「SocialAI」の開発者であり旧Facebook時代に最年少エンジニアとして活躍したマイケル・セイマン氏を再度雇用しているが、これもMetaが向かう方向性を示している。
このように、Metaは人々にAIツールを使用するよう促し続けているので、あなたのFacebookフィードはAIが生成したコンテンツでさらにあふれることになるだろう。Metaはそれらを作成するために数十億ドルを費やしているので、利用を増やすことで投資を正当化する必要があり、究極的には人々が、AIの作成したフェイクコンテンツを愛するようになることを望んでいるようにすら見える。
しかし、それでいいのだろうか。
私は疑問に思うし、また、これがFacebookの本来の役割とどう合致するのか分からない。しかし、MetaはAIトレンドにより一層傾倒している。このため、あらゆる方法でAIツールを使用するよう引き続きユーザーを促すことが予想される。
MetaはARグラスが開発されており、実際のプロトタイプも公開されている。まだ消費者向けのリリースは先だが、2025年にはARグラスとの統合に向けた準備が進むだろう。
それは、どのような形で実現するだろうか。
例えば、バーチャル試着や、家具の配置シミュレーションなどのAR機能が投稿に追加される可能性がある。さらに、Meta Ray-Banを持つユーザーのプロフィールにサングラスのアイコンを追加することで、所有者のステータスシンボル化を図る可能性がある。こうしたAR体験は、将来のグラス普及に向けた基盤作りの一環として期待される。
青いチェックマークの人気からわかるように、ユーザーは自分の重要性や地位を誇示することを好む。だからMetaは、ARグラスやRay-Ban Metaスマートグラスを所有していること自体をステータスシンボルにしたいと考えている。
プロフィール画像の端に小さなサングラスアイコンがあることで、それを強調することができるし、前述したAR体験の盛り上がりとともに、ARの台頭を促し、新しいデバイスの消費者向け発売につながる可能性がある。
同じような路線で、メタバースはMetaにとっていまだに長期的な目標であり、VR体験を盛り上げるための新たな方法を模索している。
MetaはVRユーザーと非VRユーザーが同じアプリ内でゲームを楽しむ仕組みをすでに開発している。VRの世界をVR以外のプラットフォームで見せるような統合が増えることも期待できる。また、アバター機能も進化を遂げており、よりリアルでカスタマイズ可能なアバターがデジタル環境での交流を支えることになるだろう。
最近のFacebookのエンゲージメント増加は動画投稿が大きな要因だ。実際、AIが推奨するリール動画がフィードにあふれ返っているのを目にすることが多くなっている。
人々はこれらの動画をよく見ている。フォロー中の人々やページからの更新だけを見たいと思っている人でも、勝手に流れてくるテレビ番組や懐かしい映画の名場面につい魅了されてしまうのは否定できないはずだ。そのためMetaは2025年も引き続き動画コンテンツの強化に注力するだろう。この目的のために最近、新たに「動画」タブを追加した。
ご想像の通り、Metaのインスピレーションの源はTikTokだ。FacebookがTikTokに倣って動画フィードを公開したり、それをデフォルトの表示としたとしても、特に驚きはない。
Metaは、より多くの人々が動画コンテンツを投稿することを必要としており、可能な限り動画投稿を奨励しようとしている。動画と言っても、最近のMetaを支えているのは過去に試みられたような長編のコンテンツではなく、TikTokのようなショート動画コンテンツだ。そして、TikTokが米国で禁止された場合、この分野でMetaはその役割を引き継ぐ構えだ。
広告面では、MetaはMetaは引き続き広告主に対して自動化された「Advantage+」広告オプションを推奨している。これは手動ターゲティングよりも高い成果をもたらしている。
MetaのAIシステムは広告パフォーマンスを向上させるため、アプリ内データを活用してターゲットの精度を高めており、将来的にはさらに多くの企業がAIの利便性を享受することが期待される。
クリエイティブ(生成AIツール経由)、ターゲティング、さらには予算編成まで含め、広告キャンペーンの作成を機械に任せるのは、あまり良いことではないと感じるかもしれない。しかし、より良い結果が得られるのであれば、試してみる価値はある。
そして論理的には、データを取り込んで定義済みのパラメータに合わせてパフォーマンスを最適化するという点で、生成AIが役立つはずだ。
おそらく、これまで考えたこともなかった新しい視聴者層にリーチできるだろう。
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