若年層に人気のSnapchatだが、大人にはあまり浸透していない。一方で、AR(拡張現実)開発の分野ではリーダー的な存在であり続けている。しかし、リソースに恵まれた大企業からの挑戦を受け、厳しい競争に直面している。2025年のSnapchatはどのような方向に進むかを予測する。
Snapchatは、若年層には依然として絶大な人気を誇っている。だが、大人の間ではそれほど浸透していない。また、AR(拡張現実)開発ではリーダー的存在といえるものの、はるかに大きく資金力のあるプレーヤーからの挑戦を受けているという点で、難しい状況にある。
Snapは広告ビジネスを拡大するため、その魅力を広げようと、競争が激化する中でも独自のARグラスの製造にこだわり続けている。また、広告ビジネスの改革にも一定の成功を収めつつある。だが、どちらの面でも限界があるようで、2025年には頭打ちになるかもしれない。
まず、MetaやAppleがこの市場にしっかりと注力している今、Snapが競争力のあるARウェアラブル製品を作れるとは思えない。
「Apple Vision Pro」は非常に高価でまだ一般利用には不向きだが、技術的に進化した「Ray-Ban Metaスマートグラス」はすでに売れ行き好調だ。規模やリソースでこれらの競合に劣るSnapのARグラス「Spectacles」が競争力を持ったものになるとはとても思えない。
Snapとほぼ同時期に市場に投入されるだろうMetaの新製品は、価格面でも性能面でも優位に立つだろう。このため、2025年には、Snapは開発の難しさが増すこととMeta社の革新的な技術に対抗することが困難になることから、ARグラスの開発計画を中止せざるを得なくなる可能性が高い。
Snapがより実用的なARウェアラブル製品を開発するための唯一の道は、Appleのような別の企業と提携することだろう。しかし、そのような方針転換がなければMetaに勝つ見込みはなく、SnapがARグラスのプロジェクトに資金を注ぎ続けることは難しいと考えられる。
もしかしたら何かが変わって、Snapが決定的な優位性を確保することになるかもしれない。しかし、私はそうは思わない。また、発売までの道のりが明らかになるにつれて、Snapがこの分野で前進し続けることができるかどうかも疑問だ。
それでも、Snapは依然としてAR開発のリーダーであり続けるだろうし、そこにこそ力を注ぐべきであるのは間違いない。
Snapは2023年に企業向けARサービス「ARES」を立ち上げたが、経営状況の悪化に伴うコスト削減策の一環として、わずか6カ月でその事業を中止した。しかし、AR技術を用いた拡張現実体験を次のレベルへと引き上げるための開発プラットフォームを提供するという点において、それはSnapにとって依然として最善の方法であるように思われる。
もしSnapが、自社のAR体験をMetaのデバイスに統合できれば、長期的にはビジネスの成長に大きく貢献できるだろう。Metaは、自社のプラットフォームを魅力的にするために、多様なAR体験を積極的に取り入れようとしている。繰り返すが、Snapは創造的で魅力的なARコンテンツを提供できる企業として知られており、両社の連携は相乗効果を生み出す可能性を秘めている。
これは、Snapが独自のARデバイスを提供するよりも、よほど堅実なアプローチのように思える。
Snapの有料サブスクリプションサービス「Snapchat+」では、Snapユーザーが価値を感じる機能が提供されている。2025年には、このサービスをさらに拡大し、最新の機能をまずは有料ユーザー向けに提供することで、一般ユーザーにも有料プランへの加入を促す方針が続くと予想される。
Snapchat+には現在1200万人のユーザーが登録しており、大きな成功を収めている。一同時期に提供されたXの「Xプレミアム」が推定130万人の有料登録者にとどまっていることと比較すると、Snapが熱狂的なユーザーのマネタイズに成功していることが際立つ。
この成功の背景には、Snapchat+が実用性を重視し、ユーザーにとって価値のある機能を提供している点がある。Snapchat+ユーザーのアイコンにチェックマークは付かないものの、関連性のあるアドオン機能がユーザーの共感を得ていることは間違いない。
2025年には、Snapchat+への取り組みがさらに強化される見込みだ。あらゆる最新機能はまず有料会員向けにリリースされ、その後無料ユーザーにも段階的に提供されると予想される。これらのアドオン機能がストリーム内に登場することで、Snapが擁する4億4300万人のデイリーアクティブユーザーのうち、さらに多くが自分の目にした新機能にアクセスしようとSnapchat+に登録するようになるだろう。一方で、Snapはより幅広いユーザーの関心を引くために、さらなる機能強化を進めると考えられる。
Snapが得意としているのは、ユーザーベースを深く理解することだ。今後も共感を呼ぶ新しい要素を提供し、Snapchat+を進化させ続けるだろう。
Snapは、ユーザーが現実世界での交流を増やせるよう、機能の強化を進めている。例えば、「Snapマップ」に友人が訪れた場所や体験を表示する機能が追加された。この機能は若年層ユーザーにとって、新たな行動を促すきっかけとなっており、2025年にはSnapが人々をつなぐための機能をさらに拡充すると予想される。
MetaがAIやVRによる内向的な体験を重視している一方で、Snapは現実のつながりを促進する機能を強化することで、親世代を含む幅広いユーザー層にアピールする可能性がある。この取り組みには、新しいミートアップメッセージやマッププロンプトの導入が含まれ、特定の時間や場所で誰がいるのかを確認できるようになるだろう。また、映画プロモーションのような広告に活用できるグループ予約機能の組み込みも予定されている。
さらに、Snapはアプリのエンゲージメントを高めるため、これらの機能をイベント主催者向けに拡大することも視野に入れている。これにより、オンラインとオフラインの接続を強化する取り組みが一層進むだろう。
こうした取り組みは、Snapにとって大きなチャンスとなる可能性がある。Snapはここ数年、この方向性に向けた準備を着実に進めており、新年にはオンラインとオフラインをさらに深く結びつける新しい展開が期待される。
Snapは広告メッセージをDM内に導入しようとしているが、この試みは成功しない可能性が高い。
2024年9月、SnapはLinkedInの「スポンサードメッセージ」と同様の機能を開始すると発表した。しかし、Snapの受信箱は、多くの人々にとってプライベートな会話をする最も安全な場所と認識されている。これは、メッセージが一定時間で消える仕組みにより、プライバシーが保たれる安心感を提供しているためだ。
この特性から、ユーザーはSnapのメッセージングツールに対して親密な感情を抱いている。そこに広告が挿入されれば、押しつけがましいと感じる可能性が高く、多くのユーザーにとって大きなストレス要因となるだろう。
Metaも「Messenger」や「WhatsApp」で類似の試みを行ったが、ユーザーの反感を買う結果となった。恐らくSnapも同じ問題に直面し、最終的には広告の提供を撤回せざるを得なくなるのではないだろうか。
Snapにとってこの課題が重要である理由は明確だ。収益の上位市場である米国や欧州ではユーザーベースが低迷しており、事業拡大のためにはより多くの広告収入が必要となっている。しかし、この広告戦略が失敗すれば、Snapの将来的な成長に大きな懸念が生じるだろう。
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