マーク・ザッカーバーグ氏が描くAIの未来に異議あり ソーシャルメディアから人間性が奪われていいのか?Social Media Today

Meta創業者でCEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、AIの生成するコンテンツがソーシャルフィードを席巻する未来がやってくると語っている。

» 2024年09月02日 09時00分 公開
[Andrew HutchinsonITmedia マーケティング]
Social Media Today

 マーク・ザッカーバーグ氏のFacebookについての将来ビジョンは、あなたが期待するようなものではないかもしれない。彼の最近の洞察に基づけば、それは「ソーシャル」とさえ言えないものになる可能性があるからだ。

 技術者コミュニティーの「South Park Commons」が実施したインタビューでザッカーバーグ氏はMetaの長期的な計画やメタバースへのビジョン、ARグラスの開発などについて語った。その中で、ある発言が注目を集めた。

ザッカーバーグ氏は本気でそれが良いことだと思っているのか?

 Facebookやソーシャルメディア全般の進化に関して、ザッカーバーグ氏は次のように語った。

私たちが行っている全てのことが、(AIによって)何らかの形で変わるだろう。(例えば)フィードは以前は友達のコンテンツが中心だったが、今ではクリエイターの投稿が主流になっている。そして将来はAIによって生成されたコンテンツが多くを占めるようになるだろう。

 そう。ザッカーバーグ氏は、ソーシャルメディアのフィードが既に大きな変革を遂げたことを示唆している。かつては友人や家族からの投稿が中心だったが、今ではアルゴリズムに基づいてマッチングされた動画を中心としたエンターテインメントコンテンツが主流になっている。そして将来的にはさらなる変革が訪れ、AI生成コンテンツが主流になると予測している。

 それは良いことなのだろうか。

 というのも、現時点で既にFacebookはスパマーや詐欺師がいいねを稼ぐために投稿した質の低いAI生成コンテンツであふれているからだ。私たちは、本物の人間が生成したコンテンツの代わりに、ロボットが作り上げた何の意味も持たない画像を増やすことを本当に望んでいるのか。

 もちろん、今はまだ生成AIの転換期であって、これらのツールは今後も進化し続けるだろう。また、今後の要素の一つになる動画生成コンテンツはまだ始まったばかりだ。

 しかし、ソーシャルプラットフォームはもともと、人と人とのつながりを促進するために設計されたものではなかったのか。 もし私たちが世界や周りの人々とつながらなくなるなら、これらのプラットフォームが引き続き魅力を持つことはできるのか。

 ザッカーバーグ氏が言うように、いずれにせよ私たちはすでに変化の真っただ中にいる。最終的には、映画やアニメーションの技術を持たない多くの人々がAIを使ってクリエイティブで魅力的なコンテンツを作れるようにすることが大きなメリットになるという議論も成り立つだろう。

 しかし、私の主張は変わらない。魅力的なコンテンツを作るには、単に適切なツールを持つだけではなく、ストーリーを語る能力、すなわち聴衆と共感できる人間らしい物語を伝える力も必要だということだ。それは簡単なことではない。だからこそ、多くのYouTuberが失敗し。ほとんどの作家は大きな注目を集めることができず、ほとんどの作家志望者は作家志望のままなのだ。

 クリエイティブな活動の基本であるストーリーテリングの技術を習得するには、時間と努力、献身が求められる。AIツールが多くの人に多様なコンテンツを作る機会を与えるとしても、それが必ずしも質の高いものになるとは限らない。

 もしFacebookがますますAIコンテンツに依存するプラットフォームになっていくのであれば、それがプラットフォーム全体にとって有益だとは到底思えない。

 とはいえ、AIは今まさに流行の最先端にある。ザッカーバーグがVR文脈でのAIのもっと価値ある利用法について語っていたことも注目に値する。

メタバース関連では、これまでのように多くの開発者が仮想世界を構築するのではなく、歩いているだけで、まるで明晰夢のようにAIが生成していくようになるだろう。これは驚くべきことだ。

 私の意見では、これはより実用的で新しいAIの使い方であり、Metaにとって大きな市場優位性をもたらす。というのも、最終的にはVRが普及し、多くの人々がより没入型の環境に参加するようになると考えられるからだ。歴史的なトレンドはこれを示しており、技術が進歩し続けるにつれて、VRは次の大きなテーマになると予測できる。

 もしユーザーが自分の体験をその場で「話して」創造できるようにする完全なVR体験をMetaが実現できれば、これは大きな進歩となり、現時点では他のどの企業の追随を許さない次世代の体験を提供できるだろう。

 そのときこそ、Meta のVR への数十億ドルの投資が理解される瞬間となる。しかし、Meta の AI への野望の中間段階、つまり同社が視聴者に提供するチャットbotや画像生成ツールは、あまり確固たるものとは思えないし、ソーシャルメディアの根源から大きく離れているとも言える。

 飛躍し過ぎだろうか。なるほど、Facebookは依然として1日20億人のアクティブユーザーを抱えており、ザッカーバーグ氏も最近、MetaのAIチャットbotが世界で最も使用されているAIアシスタントになりつつあると発言している。従って、現時点でのAIの推進が負の影響を及ぼしているわけではなさそうだ。それでも、これが画期的なツールになるとは思えないし、AI生成のゴミコンテンツがますます人々のフィードを埋め尽くしているのは事実だ。

 全ての投稿がAI画像で、全ての返信がAI生成であるFacebookを本当に望んでいるのだろうか。それは本当にユーザーにとって魅力的で面白いものになるのだろうか。

 Meta自らが以下のような画像を公表しているのを見ると、彼らの向かう方向性に不安がぬぐえない。

 CBS Newsの記事(外部リンク/英語)で紹介されている写真を見てほしい。これはオリンピックで実際に撮影されたものだ。この写真が素晴らしいのは、本物のカメラマンが本物の人間のアスリートの驚くべき本物の瞬間を捉えたからだ。

 このような人間性を奪うことが良いことなのだろうか。Facebookユーザーが本当に望んでいるのはそうしたことなのだろうか。

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