顧客の過去・現在・未来のエクスペリエンスは「データ」を媒介にして1本の「時間」の軸で長くつながって行く。全ての産業がサービス業化する時代のマーケティングとはどうあるべきなのか。
スターバックスの「The Third Place 」(オフィスでも家庭でもない第3の場所)やディズニーランドの「Where Your Dreams Come True 」(夢がかなう場所)に代表されるように、これまで、エクスペリエンスの提供は体験の「場」にフォーカスしてきました。しかし、いったんIoTが導入されると顧客の過去・現在・未来のエクスペリエンスは「データ」を媒介にして1本の「時間」の軸で長くつながって行きます。そして、このことは全てのインダストリー(産業)がカタチを変えて、サービス業になることを示唆します。顧客のエクスペリエンス、すなわちブランド体験価値が変わりゆく中、マーケターはどうするべきか。エクスペリエンスデザインの専門家と読み解いていきましょう。
※本稿は朝岡崇史『IoTビジネスモデル革命』(ファーストプレス)から一部の内容を抜粋・編集して転載しています。
「エクスペリエンス3.0」「エクスペリエンス4.0」(※)のステージでは、「シェアエコノミー」と呼ばれるサービスが世界規模で急拡大している。
「エクスペリエンス3.0」「エクスペリエンス4.0」がいかなる概念であるかは、第2回「エクスペリエンス4.0――エクスペリエンスとビッグデータの統合」を参照。
「シェアエコノミー」とは、使われていない個人の資産や時間を他人のために活用して利益を得るという従来にないビジネスモデルが特徴だ。使われていない個人資産とは、具体的には自宅の空き部屋やクルマでの移動時間を指す。市場規模は2025年までに3500億ドル(約42兆円)に拡大するという強気の試算もある。個人間(C2C)の取引の橋渡しをするデジタルプラットフォームの新サービスが世界中の投資マネーを集め、さらにアグレッシブなプロモーションを行っているという事情もある。
「シェアエコノミー」をけん引しているのは、クルマの相乗りサービス(ライドシェア)を提供する米Uber(ウーバー)と自宅の時間貸しサービス(いわゆる民泊)を手掛ける米Airbnb(エアー・ビー・アンド・ビー)の2社のベンチャー企業である。両社のサービスとも会員になるにはスマホのアプリをダウンロードし、日付や目的地など客側が希望する条件を入力するだけで良い。
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