顧客の過去・現在・未来のエクスペリエンスは「データ」を媒介にして1本の「時間」の軸で長くつながって行く。全ての産業がサービス業化する時代のマーケティングとはどうあるべきなのか。
スターバックスの「The Third Place 」(オフィスでも家庭でもない第3の場所)やディズニーランドの「Where Your Dreams Come True 」(夢がかなう場所)に代表されるように、これまで、エクスペリエンスの提供は体験の「場」にフォーカスしてきました。しかし、いったんIoTが導入されると顧客の過去・現在・未来のエクスペリエンスは「データ」を媒介にして1本の「時間」の軸で長くつながって行きます。そして、このことは全てのインダストリー(産業)がカタチを変えて、サービス業になることを示唆します。顧客のエクスペリエンス、すなわちブランド体験価値が変わりゆく中、マーケターはどうするべきか。エクスペリエンスデザインの専門家と読み解いていきましょう。
※本稿は朝岡崇史『IoTビジネスモデル革命』(ファーストプレス)から一部の内容を抜粋・編集して転載しています。
お客さまを主語にしたアナリティクスの進化について少し触れておきたい。そもそも、ビッグデータとアナリティクスはよく混同して使われることが多いが両者は別物である。ビッグデータとは事実を表す指標にすぎない。ビッグデータは、どのように分析するかを示すアナリティクスと組み合わせることで初めて企業のマーケティングツールになり得る。つまりビッグデータ単体では企業に価値をもたらすことはできない。ビッグデータが潜在的に持つ価値を引き出すには、アナリティクスの重要性を企業側が深く理解し、どんな分析手法や分析アルゴリズムを使うかを検討することが必要になる。
ビッグデータの活用がブームになったり、Web解析が注目されたりした時期からわずかに数年間で、データアナリティクスの世界は「企業主語からお客さま主語へ」長足の進歩を遂げた。その進化のプロセスをあらためて整理して図式化すると図のようになる。
例えばWebマーケティングの典型であるネット通販などの場合、かつてはKGI(Key Goal Indicator、以下KGI)である事業成果(売り上げ)に直結するWeb上のお客さま行動データ、具体的には回遊率やコンバージョン率などをKPI(Key Performance Indicator、以下KPI)に設定し、両者の因果関係だけを追いかけてきた。お客さまの立場になってよく考えてみれば分かることだが、お客さまとブランドとのコンタクトポイント(接点)はWebサイト以外にもたくさん存在するし(例えば、テレビ広告、店舗、コールセンターなどオフラインのエクスペリエンス)、お客さまもWebサイトの情報だけでそのブランドの商品やサービスの良否を判断しているわけではない。
従って、企業主語の目線だけでWeb上の行動データだけを解析しても、後知恵以上のアウトプットを得ることは難しく、本当の意味でマーケティングプロセスの刷新にはつながらない。
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