“モノづくり大国“”日本は自動車産業を軸に高度経済成長を牽引してきた。この時代の競争優位性は製造コストに関する生産性を向上させることがカギとなっていた。しかし、国内経済が成長するにつれて必然的に海外市場を求めることになり、国内より人件費の安い海外での一貫生産体制が製造業における競争優位戦略として定着することになった。現地生産における労働生産性の高低はここでは議論しないが、1人当たり賃金が安いことから、少なからず日本企業がコストインパクトという恩恵を被ったことは事実である。
しかし現在は、製造コストのインパクトが企業の競争優位につながっているかどうかを真剣に問う必要がある。成熟社会におけるこれらのインパクトは、競争優位ではなく競争劣位を抑えているに過ぎないのではないだろうか。図1にあるように、製造/組立におけるコスト低減は、製品の成熟化によって相対的に付加価値が低くなってしまっている。
このような状況下で企業が競争優位性を創造するための答えがスマイルカーブの両端に位置する。顧客がアッと驚くようなクオリティの高い商品を企画/開発して市場を席巻するか? もしくは、商品のクオリティが他社と比較して目を見張るような乖離が存在しないならば、マーケティング/営業というサービスで市場を圧倒するか? この2つの領域で他社に対する優位性を創るしかない。前者に属する企業は一握りであり、大半の企業は後者に属する。本連載では、主に後者に属する企業に向けて議論を展開する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.