各店舗スタッフが主役になって展開する“学びのコミュニティ”とイベント参加者の態度変容をゴールに見据えたテーマ設定の融合――。パタゴニア独自の店舗展開を参考に最先端のブランド戦略を考える。
「(前編)パタゴニアの店舗は「地域のギフト」――ただモノを売るだけでは終わらない」を読む。
廣部 イベントの評価軸、そして目標設定を教えてください。
辻井 ストアは、存在そのものがメッセージだと言えます。例えばカタログは2次元ですが、店舗は3次元であり、ブランドとしての想いをストレートに伝えられる場だと考えています。そして、メッセージを伝達するには、お客さまに感動してもらったり共感してもらったりする必要があります。そのために、各イベントのクオリティを上げられるよう工夫します。参加いただいた方同士の垣根を低くするために、わたしが講演をするような場合には、自己紹介を兼ねて、“買い物へのこだわり”といったテーマについて参加者同士で語り合っていただく時間を作ったりもしています。
ただし、イベントのゴールは「盛り上がる」ことではありません。参加者皆さんの行動や活動につながる“後押し”をすることがゴールです。
例えば、パタゴニアは1996年以来、すべてのコットン製品をオーガニック・コットンに切り替えました。栽培従事者の健康や栽培地の土壌に配慮して農薬や殺虫剤を使わないで栽培されたコットンを使用しているのですが、手間を要している分、コストは高くなります。わたしたちは、これを「企業や消費者が本来負担すべきコスト」と考えています。“ストアイベント”に参加した方が、デザインや機能がよいという理由に加えて、この「本来のコスト」を考えながらモノを買ったり、迷ったりしていただければ、1つのゴールに達したと言えるかもしれません。
第1回 企業発の「学びのコミュニティ」が重要視される理由
第1回 目指すは企業、生活者、社会のTriple-Winモデル、共有価値創造の実現が競争優位を創造する
第2回 「社会の役に立ち、生活者から共感を引き出す、自社でしかできないこと」を考える
第3回 価値の変遷〜選ばれるための理由となりえる「価値」について考える
第4回 あの「体脂肪計タニタの社員食堂」が生まれたヒントは? 〜Value Reframing 自社の提供価値を再定義することから始めるストーリー〜
第5回 広告枠に依存しないコミュニケーションをビルディングする重要性について
第6回 CSV創造の土台となるBRAND WILLの明示を――【対談】多摩美術大学教授 佐藤達郎先生Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.