デジタルテクノロジーに始まったマーケティングの小さな変化が、「クライアントと広告会社」という受発注の関係を変化させた。いまや、われわれ広告会社とクライアント企業は、(ビジネス)ゴールを共有する「ビジネスパートナー」という関係性で、マーケティングを展開している。
ビッグデータの出現により、データとマーケティングが最新のテクノロジーで融合しつつある。これからのマーケティングには、マーケティング投資に対する効果や次の施策を打つための戦略、そして成果に対する予測と説明責任(アカウンタビリティ)が期待される。これらを実現することが、広告会社が目指している次世代型マーケティングである。
複雑化するマーケティング課題の解決にはいまや、テクノロジーが不可欠である。そしてビッグデータを活用した新しいマーケティングのプラットフォーム化の動きには、これまでの広告会社の機能だけでは対応できない。今回は、次世代型のマーケティングや、マーケティングのプラットフォーム化を実現するために広告会社が推進しているIT企業との連携/国内外パートナーとの体制構築などをご紹介する。
なぜ今、マーケティングは変化しているのか。
少子高齢化と景況の鈍化が日本市場における企業のマーケティング戦略に影響を及ぼしている。つまり、従来のように新規顧客の開拓/獲得ではなく、既存顧客の維持、つまりデータベースマーケティングやCRM領域にマーケティング投資の比重が置かれ始めているのだ。このことは、広告会社のビジネスの仕方が、「広告キャンペーン型」から、(クライアントと一緒に顧客を育成する)「運用型」にシフトしたことを意味する。「運用型」マーケティングの推進は、広告会社に、広告費用対効果(ROI)やマーケティングの効率化に対する厳しい要求を突きつける。結果的に、「広告のアカウンタビリティ(説明責任)」「メディアアロケーション分析」「アトリビューション分析」の重要性が高まっているのである。
これら3つのキーワードはお互いに強い関連性を持っている。デジタルマーケティングで先行していると言われる欧米のアドテクトレンドが、日本におけるマーケティングの変化に影響を及ぼしていることは否定できない。しかし、大事なことは、デジタルやテクノロジーの普及/発展が、日本のマーケティングに変化をもたらしたことではなく、日本全体の市場変化や経済全体の変化が、これらの技術を必要としたということだ。そして、市場の変化は、マーケティングの変化だけではなく、広告会社の変化にもつながるのである。
もともとアトリビューション分析は、デジタルメディアを中心に、リスティング広告やディスプレイ広告(露出を中心とした媒体)の価値や効果を説明する専門領域のサービスとしてスタートした。しかし今では、デジタルメディア領域を超えて、テレビを含めた既存のマスメディア全体、つまり、マーケティング全体に波及している。そして、マーケティング全体の効果や効率化を説明するため(アカウンタビリティ)に活用されたり、マーケティング全体のメディア投資配分を設計するため(メディアアロケーション)に活用されるようになってきた。
デジタルマーケティングからはじまったマーケティングの新たな潮流は、われわれのような広告会社に、事業展開上の大きなインパクトを与えた。ポイントは2つだ。
その結果、広告会社は、これまでのような「広告キャンペーン型」から「運用型」へその業態を早急に変化させる必要に迫られた。このことは、デジタルテクノロジーに始まった小さい変化が、「クライアントと広告会社」という受発注の関係を変化させ、(ビジネス)ゴールを共有する「ビジネスパートナー」という関係性に変化したことを意味する。広告会社にとっては非常に重要なことである。まさに我々が次世代型の広告会社に変わらなければならないことを意味している。
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