オウンドメディアは文字通り「メディア」です。それはユーザーとコミュニケーションをするためのHUBであり、けっしてカタログではないのです。オウンドメディアを通じて主張するのでなく、コミュニケーションを目指しましょう。
本連載は「オウンドメディアコミュニケーション 成功の法則21」(ソフトバンククリエイティブ)をコンパクトに再編集したものです。
第3回は企業のオリジナルコンテンツの重要さを指摘しました。オリジナルコンテンツこそが、企業とユーザーをつなぐHUBとなり、コミュニケーションに必要な「キャッチボール」状態を作り出すのに欠かせない要素なのです。
企業が自社のオウンドメディアでユーザーに伝えたい内容は、企業情報や製品/サービス情報、IR情報、CSR情報、採用情報と、多岐にわたります。加えて、伝えたい内容の優先度や表現方法については、その企業の業種、業態、事業内容によっても大きく異なるということを前提に考えなければなりません。
例えば、BtoB(対企業向け)、BtoC(対生活者向け)といった業態で分類するだけでも、それぞれの企業が考えるオウンドメディアの考え方や在り方、コミュニケーションしたいターゲットユーザーの定義などは大きく異なることでしょう。つまり、オウンドメディアコミュニケーションはすべて一律のコミュニケーションという考え方は当てはまらず、企業の特性や、インターネットへの取り組み方によって適切なコミュニケーション方法を検討しなくてはなりません。
さらにオウンドメディアコミュニケーションを検討していく上で考慮すべきポイントがあります。企業の生活者とのコミュニケーションは、1つのメディアのみで形成されるものではありません。伝統的なメディアであるマスメディアでのCM展開や店頭でのイベント、ひいては店舗での社員による直接販売営業など、さまざまな顧客接点において作られるものです。このように生活者とのコミュニケーション関係を構築するためには、さまざまなメディアの特性を駆使し、役割を持たせた上で最適なメディア活用が必要となります。
オウンドメディアコミュニケーションを検討していく上では、企業の特性やコミュニケーションにおけるゴールを明確にした上で、最適なメディアを選択し、他メディアとの連携を深め、相互補完し合える関係性にすることが重要です
企業がユーザーとのコミュニケーションにおいて押さえておくべきメディアについて整理しておきましょう。オウンドメディアは自社でコントロールできるメディアであり、ユーザーとのコミュニケーションのHUBとなるメディアです。また対照的にペイドメディアは、ポータルサイトなどへのバナー広告に代表されるように、ユーザーをオウンドメディアに引き込むための起点となります。そして最後にアーンドメディアですが、ソーシャルメディアに代表されるユーザーサイドメディアであり、企業がコントロールできるものではなく、ユーザー同士がコミュニケーションできるプラットフォームと捉えておきましょう。
これらのメディアのうち、今回もっとも重点的に検討していきたいのが「オウンドメディア」の役割です。前述の通り、「オウンドメディア」は企業が自社内でコントロールできる唯一のネットメディアです。つまり、企業側の意図や思いが乗るメディアであり、それをユーザーに届ける、伝えるためのHUBとなります。ユーザーがあなたの会社のオウンドメディアにアクセスしてきた際に、おもてなしというコミュニケーションをする必要があるわけです。
ユーザー視点で、オウンドメディアにアクセスする流れを考えて見ましょう。多くの場合、ユーザーがインターネット上で情報を取得する際には、Yahoo! やGoogleといった検索サイトを通じて「情報検索」を行うことが行動の起点となります。こうしたユーザーの行動に対応すべく、さまざまな施策を投じて、検索サイトに優先表示されることに取り組んでいる企業もあるでしょう。検索連動型広告やポータルサイト内のバナー広告などは、主に対価が伴う広告活動による集客方法の1つと言えます。
こうした流れのなかで、先ほどの「情報検索」を起点としているユーザーの集客に寄与することはできるかもしれませんが、同時にその企業にはあまり興味のないユーザー自体も引き込んでしまう可能性があります。「集客」という点においては効果的ですが、より重要なことは自社のオウンドメディアに引き込んだユーザーを逃さず、コミュニケーションすることにあります。
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