第6回 ワン・ツゥ・ワン マーケティングを実践する分析主導型マーケティング組織へ【連載】今度こそマスターするぞ! データ分析

最終回は組織論を中心に述べる。分析主導型のマーケティング組織について、ビジョンを持ち、組織として行きたいところはどこかを決め、企業文化、組織構成、スキルなど、そこに行くために継続して何をするかを徹底的に考えることが必須である。

» 2012年09月28日 08時00分 公開
[北川裕康,SAS Institute Japan]

マーケティング組織論

 これまで5回にわたり、さまざまな分野のマーケティングにおけるデータ分析の活用とROIへの貢献について、事例を交えながら解説しました。いかがでしたでしょうか? 最終回は、マーケティングにおけるアナリティクス、データ分析の活用について、組織論も含めた総論を述べ、まとめます。

 唐突ですが、皆様はアナリティクスという言葉の意味をご存知ですか? Analytics/Analysisの語源は古代ギリシャ語で、“紐解く”という意味です。“データを分析する”ではなく、何か問題や課題を紐解いて解決するという意味なのです。では、マーケティングが“アナリティクスする”課題は何かというと、私の意見は「預かったお金(マーケティング予算)から最大限の効果を出し、売上の増大、顧客の維持に、直接的または間接的に貢献すること」です。

 課題の中の「売上の増大」に対しては、もはや狙いを定めないマスマーケティングは通用しません。適切な顧客セグメンテーションを行い、ターゲティングした見込み顧客に対して、クリアな差別化を持ったメッセージで、最適な時期、最適な手段、最適なオファーによって、キャンペーンを実施する必要があります。私はたまに部下に、自分の給与やボーナスがどこから出ているのかを考えてくださいと言います。要するに、大規模なイベントがうまくいったとか、かっこいい広告ができたとかではなく、マーケティング部門であっても、それらが(すぐ、あるいは、いつか)売上に結び付くかどうかです。プロダクトマネージャやブランドマネージャを担当すると売上に対する責任が生じ、売上にかなり敏感になりますが、それ以外のマーケティングではついつい忘れがちなのではないでしょうか。何のためのブランド価値か、何のためのLeadか、何のためのOpt-Inかです。

 「顧客維持」では、ものや情報があふれる顧客へのパワーシフトの時代、顧客は簡単に離反します。よく言われるように、新規顧客の獲得は、既存顧客の維持より圧倒的にコストが高く、容易なことではありません。ですから、顧客満足度を高めるともに、既存顧客の離反を予測して、事前に対策を打つ必要があります。特に収益性の高い顧客を維持することが、売上、利益の確保においても重要です。リレーションシップマーケティングを基盤にプログラム開発者向けのエバンジェリズムを以前の会社で担当していたとき、3つのメトリクスで顧客リレーションの状況を評価していました。「売上」「満足度」「利用の深度」です。その中の「満足度」の項目では、単にその人が満足しているかだけではなく、“他の人に勧めるか”という点で評価しました。この例のように、他の人に勧められるくらいの状況になって初めて顧客ロイヤルティは維持できるものです。

 売上の増大においても、顧客維持においても、顧客1人ひとりが特別に扱われていると感じられる、真のワン・ツゥ・ワン マーケティングが求められると言っても過言ではありません。そして、顧客の数が数名、数十名といった規模でない限り、データ分析をベースにしたPDCAサイクルと事実ベースの意思決定なくして、ワン・ツゥ・ワン マーケティングは実装できません。なぜならワン・ツゥ・ワン マーケティングの実装のためには、顧客および顧客経験を中心に置き、データ分析を使い、顧客インサイトを深め、顧客との対話を演出して、かつ、マーケティング効果を継続的に改善することが求められるからです。これら、顧客インサイト(Insight)を深め、顧客との対話(Interaction)を演出して、かつ、マーケティング効果を継続的に改善(Improvement)することを、マーケティングでよくある法則どおり「3I」で覚えてみてください。それぞれの「I」に関連するデータ分析については、以下のようなものがあります。

顧客インサイト(Insight)を深める

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