サブスクリプションビジネス成功の第一歩はユーザーの解約防止にあり。その実践事例を「バンダイチャンネル」の担当者に聞いた。
前編「サブスクの難題『カジュアルな解約』を防ぐためにできること」では、サブスクリプションビジネスの成否を握る鍵として「解約」に着目すべきと述べた。
では、実際にはどう解約のシグナルを見極め、継続率向上に生かしているのか。アニメ動画配信サイト大手バンダイナムコライツマーケティング コンテンツサービス部の川畑豪介氏に話を聞いた。
佐野 まず川畑さんの現在のお仕事について、ご紹介ください。
川畑 弊社はアニメーションや特撮関係、声優さんのバンドやライブ映像といった動画コンテンツの見放題サービスを手掛ける「バンダイチャンネル」を運営しております。私はその中で、開発やサービスの企画、コンテンツの調達や編成などを統括しております。
佐野 バンダイチャンネルさんで当社Macbee Planetのサブスクリプション解約防止サービス「リテンションマーケティング by Robee」を導入いただいた経緯について聞かせてください。
川畑 もともと佐野さんには以前からお世話になっておりまして、コミュニケーションを取っている中で、サブスクリプションの「解約防止」という部分にチャレンジされているというお話をうかがいました。われわれの中では、バンダイチャンネルに新たなお客さまを獲得するということももちろん重要だったのですが、月額料金をお支払いいただきながらコンテンツを視聴していない「休眠」アカウントをお持ちの方や解約をされる方に対してどう楽しんで見続けていただくかという部分に課題を感じていました。「リテンションマーケティングby Robee」はちょうどそこにマッチするものでしたので、導入させていただきました。
佐野 何度も何度も川畑さんのところに通っている中で、バンダイチャンネルさんのサービスの現状や課題を理解していたので、その分析を通して、結果的に解約防止のためのサービスを提供することになりました。今、バンダイチャンネルさんに提供しているのは「解約分析」という手法で、会員用の解約ページにわれわれのチャットbotを置かせていただいてます。解約ページで「なぜやめてしまうのですか」「やめてしまう理由は何ですか」などと質問し、もし良かったらやめないでほしいという旨を伝えます。時には「こんなサービスができました、せりふ検索などもできるのですが知っていますか」と、ユーザーがこれまで知らなかったサービスを紹介するなどして、少しでも解約を減らそうとしています。
川畑 施策を通じて得たデータはフィードバックされるので、解約防止と同時に業務改善にもつながります。
佐野 分析を通じてライフイベントの節目が解約理由になることが多いと分かりました。そこで、テクノロジーのチカラでそうした機会を捉えてサービスに親近感や親密感を感じてもらうようなお手伝いをしています。例えば「仕事が忙しい」という方にはブラック企業で働く人が主人公のアニメを提案したり、「結婚する」という方には「おめでとうございます」と言ったりするのです。こうしたコミュニケーションの結果、3人のうち2人は解約を防げるというデータも実際に出てきています。
川畑 導入後、私たちの予想よりはすぐに実績が出ました。
佐野 導入1カ月で7%ぐらい解約者が減っています。それがどんどん上がり、直近だと解約防止率が12%ぐらいまで上がっています。
川畑 当初佐野さんとも3〜4%ぐらいの解約防止率が出ればいいのではという話をしていたので、かなり上振れした結果になりました。最初私たちは、チャットbotが出てきても、なかなか会話をしてくれる人は少ないのではないかと思っていましたが、利用率も比較的高く、利用者とのコミュニケーション手段としても重要なものになると感じました。
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