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» 2019年11月27日 20時00分 公開

所有から利用へ:「スマートドライブ」「カルモ」「akippa」「Zuora」 移動×サブスクの未来を語る (1/2)

これからの自動車関連ビジネスについて、MaaSとサブスクリプションビジネスのトップランナーたちが語り合った。

[やまもとはるみ,ITmedia マーケティング]

 2019年11月15日、モビリティー(移動)をテーマにしたイベント「MOBILITY TRANSFORMATION 2019」が経済産業省の後援により開催された。

 同イベントの実行委員会代表を務めるスマートドライブ代表取締役の北川 烈氏は「CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)やMaaS(Mobility as a Service)といった言葉に代表されるようにモビリティーの領域が大きく変わろうとしている。これまでモビリティーと関係のなかった業種とのコラボレーションが増えていく中で、どのようなビジョンや事例があるのか、業界の垣根を越えて共有する場が必要」と開催意図を語る。

 実際、モビリティーとその周辺において新たなビジネスモデルが次々に勃興している。交通・移動データを収集してビジネス活用するための基盤となる「SmartDrivePlatform」を提供しているスマートドライブ自身も、モビリティーの進化の中で新たな市場を創造しつつあるプレーヤーの1つだ。

スマートドライブの北川 烈氏

 「所有から利用へ」というスローガンが叫ばれて久しいが、自動車や交通の世界においても、カーシェアリングやライドシェアリングをはじめとするサービス化のトレンドは止まらない。新たな市場を創造する上では顧客のニーズを着実につかみ、取り逃がさないための工夫が必要だ。サービスを購入し、使い続けてもらうために何が求められるのか。

 同イベントではパネルディスカッションに、個人向けの車のサブスクリプションサービス「マイカー賃貸カルモ」を運営するナイル社長の高橋飛翔氏、駐車場のシェアリング予約サービス「akippa」を手掛けるakippa社長の金谷元気氏、サブスクリプションプラットフォームを提供するZuoraの日本法人であるZuora Japan社長の桑野 順一郎氏の3人が登壇。モデレーターとして北川氏も加わり、「変わるクルマとの付き合い方」について熱い議論を交わした。

後戻りできないサブスクリプションの潮流

 最初のテーマは「所有から利用へ」が一過性のものなのか、もう止められない不可逆の流れなのかについて。口火を切ったのは桑野氏だ。桑野氏が日本法人を率いるZuoraは2007年にシリコンバレーで生まれ、企業のサブスクリプションビジネスへのビジネスモデル転換支援とそのための収益管理プラットフォーム「Zuora Central Platform」を提供している。

 日本へは2015年2月に進出し、5年がたとうとしている。桑野氏は、「日本でもサブスクリプションエコノミーが各分野に広がっており、最近さらに加速してきている。もう元に戻ることはない」と断言する。生活者のニーズが所有から利用へと変化する中でモノが売れない時代はこの先も終息することはなく、新たな収益モデルを構築できない企業は衰退の道をたどるしかなくなっているからだ。これは特定の業界の話ではない。自動車業界でも既に世界トップ10企業のうち7社がZuoraの顧客となっているという。

Zuora Japanの桑野 順一郎氏

 モビリティーに関していえば全てが「所有から利用へ」に向かうわけではないと見るのが高橋氏だ。地方においては所有コストが低く都市ほど公共交通網が発達していないケースもあるので自動車を所有するニーズはまだ根強いというのがその根拠だ。

 サブスクリプション型のカーリースサービス「マイカー賃貸カルモ」を手掛ける高橋氏がそう主張するのは興味深いところだが、一方で都市において人とクルマの付き合い方が変わっているというのは間違いないとも考えている。高橋氏によれば、日本でモビリティーのサブスクリプション化が進む背景には、都市への人口移動と自動車の買い替えサイクルの長期化がある。地価の高い都市部ではコストをかけて自動車を所有するメリットが薄れつつある。加えて、自動車の品質が向上して長く乗り続けられるようになっているので、新たな売り上げが生まれにくい。そこで、サービスとしてのモビリティーへのニーズが生まれてくる。

 カルモはネット完結の個人向け新車リースサービスだ。クルマのサブスクといわれるが、ビジネスモデルそのものは必ずしも新しいものではない。注目点は、一般的に3年や5年というリース期間を日本で初めて個人向けに11年間リースすることに成功して1回当たりの支払額を低く抑えたことだ。これにより、今まで経済的な理由で「クルマを持ちたくても持てない」と諦めていた人の需要を喚起した。現在ではさらに、全国約3万店舗のディーラーや整備工場との提携によってメンテナンスも含めたサブスクリプションサービスも提供している。

ナイルの高橋飛翔氏

 所有から利用へと視点を変えることで生活者の潜在的なニーズに応えた点では金谷氏のakippaも同じだ。同社による駐車場のシェアリング予約サービスは、空いている月ぎめ駐車場やマンションの駐車場を15分〜1日単位で貸し出すもので、駐車場オーナーも利用者も登録は無料だ。予約から決済までスマホアプリで完結でき、利用が発生するとakippaからオーナーに利用料金の50%を支払うレベニューシェアの形態を採用している。

 2013年に行った市場調査で、日本には乗用車が8000万台あるのに対してコインパーキングは470万台しかないことが分かり、金谷氏は時間貸駐車場の不足を認識した。さらに路上駐車の数は1秒当たり東京で6万3000台、大阪で3万1000台に上る。かたや月ぎめ駐車場やマンションの空き駐車場は3000万台以上。路上駐車の多さについて「大問題だ」と感じた金谷氏は、空き駐車場と駐車場に困っているドライバーをマッチングするサービスを始めようと思い立ち、akippaが生まれた。

 金谷氏は「所有から利用へ」にも難しい面はあると考えている。例えばB2Cのカーシェアリングサービスを提供するには自動車を置くための場所を確保しなくてはならないので、どこででも簡単に始められるわけではない。一般的なビジネスと同様、高い駐車場代を払っても十分に利用者が集まらなければ投資を回収できない。「特定の人々の間でリスクを分散するような形」が望ましいというのが金谷氏の考えであり、それはakippaのサービスの在り方にも通じる。

akippaの金谷元気氏
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