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» 2020年05月18日 09時00分 公開

成功するサブスクリプションビジネス【前編】:サブスクの難題「カジュアルな解約」を防ぐためにできること (1/2)

サブスクリプションビジネスが浸透し利用者の行動にも変化が見られます。新たな課題として浮上したのが「何となく」の解約行為。これにどう対処すればいいのか。エキスパートが解説します。

[佐野敏哉,Macbee Planet]

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 サブスクリプションビジネスの拡大を背景にユーザーの需要は「所有」から「利用」へと徐々にシフトしている。最近ではソフトウェアのみならずモノのサブスク化も進んでおり、高級外車、メガネ、掃除機、ランチとジャンルも広がっている。将来的にはパンツと歯ブラシ以外は全てサブスクリプション化するのではないかという勢いを感じるほどだ。

 海外ではチーズやダイエット食品、ペットフードなどにおいて、ただ単に商品を毎月送るのではなく、そこに何が届くか分からないというワクワク感や今まで知らなかった商品との出合いといったストーリー性、メッセージ性を加えたものが増えてきている。鍵になるのは付加価値だ。今後は例えばInstagramやPinterestなどのSNSでの流行を捉えた商品が毎月配達されるようなサービスも出てくるかもしれない。

 サブスクリプションビジネスが多様化する中で、利用者の側もサービスを選ぶことに楽しみを見いだしたり、複数のサービスを掛け持つようになってきた。2つ3つは当たり前、多くの人が10を超えるサービスに申し込むようになる日も、そう遠くはないだろう。

解約防止に「寝た子を起こすな」はもう通用しない

 多くのサービスを使うようになると、利用者はサービス一つ一つの経済的合理性について意識するようになる。利用頻度が少ないサービスは当然継続について考えるだろう。一度所有したものを放棄することに比べ、サービスの利用を放棄することは何倍も気軽にできる。

 一昔前のサブスクリプションビジネスであれば、ユーザーがアクティブであることにそれほどのこだわりはなかったかもしれない。かつては料金だけ払って実質何も利用していない幽霊会員と呼ばれるような登録者がサービスの黒字を大きく支えていたということさえあった。そのようなサービスにおいては「寝た子は起こすな」とばかりに、会員にあまり関わってこなかった。

 しかし昨今のように類似サービスが乱立している中では、そうはいかない。サービスを使っていないユーザーに対しては積極的に使ってもらうよう促し、どんどんサービスの良さを理解してもらわないことには、簡単に解約や乗り換えを許してしまう。ユーザーには多くの選択肢が与えられている。新たなサービスがあれば手軽に申し込み、手軽に解約する。そのことに何のためらいもない。

 このようなカジュアルな解約行為を防止するため、デジタルチャネルを通じたユーザーとのコミュニケーションは欠かせない。また最近では、一時休止のようなステータス変更が柔軟にできたり、料金に段階を設けて利用者に選択肢を与えられたりするようなサービスも出てきている。海外の新聞ではページ単位で課金体系が変わるサービスもある。

 サービス提供側はさまざまな手を尽くしてユーザーの継続率を上げ、LTV(顧客生涯価値)やリテンション率を高めようとしている。こうした動きを支援するため、当社Macbee Planetは解約防止のためのサービスを提供している。

 当社が解約防止サービスを手掛けるようになったきっかけは、クライアントである通販や美容エステの企業において、獲得したユーザーの定着率が落ちていたことだった。

 さまざまな広告で初回特典やポイントなどのインセンティブを提供し、あの手この手で新規ユーザーを獲得しても、ユーザーは最初のお得なところだけを利用してその後定着しないというケースが多く存在する。LINE広告などの新たな広告媒体、インフルエンサーやVTuberなどを介したマーケティング手法が増えてはいるが、結局のところその成果は初回購入だけにとどまっていることが多い。つまり、企業のLTVには無関係だということだ。

 5000円の美容クリームを売っても、初回お試し価格980円で送料まで無料にしては、利益は出ない。もちろん、初回購入者の何割かが引き上げられる(再購入する)前提でこのようなプロモーションが設計されているのだが、初回特典に使われているコストは、既存のロイヤルカスタマーの売り上げによって捻出されていることを忘れてはいけない。

 新規ユーザーの獲得がとても大切であることは重々承知している。だが、サービスの成長には長期利用のロイヤルカスタマーをより重要視しなければならない。

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