「Adobe Symposium 2019」で提唱された「CXM」とはカスタマージャーニーを再構築する(1/2 ページ)

「世界を変えるデジタル体験」の実現に向けて企業は何を目指すべきか。

» 2019年07月29日 19時00分 公開
[織茂洋介ITmedia マーケティング]

 Adobeの日本法人であるアドビ システムズは2019年7月24日、年次イベントである「Adobe Symposium 2019」を開催した。10回目の開催となる今回、Adobeが提唱した「CXM(Customer Experience Management:顧客体験管理)」とはどのようなものか。基調講演からポイントをまとめた。

CXMとは何か

 世界を変えるデジタル体験(Changing the world through digital experiences)――これは、Adobeが創業以来掲げるミッションだ。

 イノベーションに遅れないためにパッケージソフトウェア販売からサブスクリプション(課金)へとビジネスモデルを劇的に変革した同社がまず着手したのは、カスタマージャーニーの再構築だ。「発見(Discover)」「体験(Try)」「購入(Buy)」「利用(Use)」「更新(Renew)」という各段階で体験を最適化することで、顧客の期待を超え一人一人にとって最適な体験を素早く提供することができる。この営みこそがCXMだ。

 「Adobe Creative Cloud」「Adobe Document Cloud」と並ぶクラウド製品群としてAdobeが提供する「Adobe Experience Cloud」は、企業のCXMに向けた取り組みを支援する。

CXMを実現する「DDOM」というアプローチ

 CXMを実現するための統一化されたアプローチがDDOM(Data Driven Operation Model)だ。DDOMでは、データを使いジャーニーの進展を正確に捉える。これにより、あらゆる段階において全社で合意した指標を測定し、単一のダッシュボードを使って「シングルソースオブトゥルース」を通じた俊敏な意思決定を支援する。

 ビジネスには、各業界各社個別のやり方があり、成功の定義も異なる。しかし、それぞれのDDOMを核において、カスタマージャーニーを中心に顧客への価値提案を考えなければならないのは同じだ。DDOMにより一貫性のある指標を高い精度で測定し続けることで、組織のサイロ化(縦割り化)の弊害を防ぐこともできる。

 もちろん、データの利用に際してプライバシーの確保は大前提となる。アドビでは「信頼と透明性」「データのユーザーコントロール」「顧客主導の選択」といった原則を掲げている。

Adobe会長・社長・CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏。「それぞれのお客さまを唯一の存在であるように捉える。過去に何があったのかを理解し将来何をするかを予測できる」と語る

CXMが生み出す新たなる価値

 AdobeがForrester Consultingに委託して行った調査の結果によると、日本の消費者のデジタル体験に関する期待は400点満点中216点と、現在企業が提供しているものと期待値の間に大きなギャップがあることが分かった(関連記事:「日本は100点満点中54点、デジタル体験に関する消費者の期待――アドビ調査」)。

 顧客体験を戦略の中心にすることで、大きなチャンスが生まれる。Adobeの調査では、Adobe Experience CloudのRoIは242%に上ると試算している。

 CXMの実現は待ったなしのテーマであり、新しいテクノロジーの活用は欠かせない。それと同時に重要なのが人とプロセスだ。「あなたの成功が私たちの成功である(Your Success is Our Success)」という考えの下、Adobeはコンサルティングサービスや教育プログラム「Adobe Experience League」などを提供するによって企業のCXMを支援していく方針だ。

消費者のデジタル体験に関する期待について説明するアドビ システムズ代表取締役社長のジェームズ・マクリディ氏
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