2019年3月にAdobe傘下となったMarketo。電撃的な買収発表から半年で何が進んでいたのかが明らかになってきた。
Adobeは2019年3月26〜28日(日本時間27〜29日)、米ラスベガスで年次イベント「Adobe Summit 2019」を開催した。
今回は最終日の基調講演に旧MarketoのCEOで現Adobeデジタルエクスペリエンス事業部門担当シニアバイスプレジデントを務めるスティーブ・ルーカス氏が登壇。同氏がホスト役となって、AdobeとMarketoの統合を担うキーパーソンと共に、Marketoユーザーとパートナーに向けて、買収発表から約半年の経過を報告した。
ルーカス氏は最初のゲストにAdobe会長・社長・CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏を迎え、基調講演の口火を切った。ナラヤン氏は2人の初めての話し合いを振り返り、Marketoの能力だけでなく「お互いが顧客志向であり、ビジョンと企業文化を共有できることを確認できた点が収穫」と振り返った。
以前のAdobeはB2Cと大企業を重点市場としてきたが、MarketoとECプラットフォームのMagentoの買収統合を機に、B2B市場と中堅市場の攻略にも本格的に取り組む。
両社の顧客ベースを確認すると、JPMorgan ChaseやNVIDIAなど、B2BとB2Cの両方のビジネスを手掛ける共通の顧客も多い。ナラヤン氏は「Adobe自身もB2BとB2C両方の顧客を抱える。1つの会社になればユニークなビジネス機会が生まれる」と語った。
さらにナラヤン氏はMarketoのテクノロジーについても言及した。Marketo Engage(AdobeにおけるMarketoの新しい呼称)はリードジェネレーションから収益化までを包括するテクノロジーを提供する。「Adobe Analytics」や「Adobe Campaign」「Adobe Experience Manager」などのAdobe製品と連携すれば「魔法が起きる」というのだ。
「スティーブと会って、顧客エンゲージメントを深めることの重要性に気付いた。エンドユーザーが顧客エンゲージメントを深めているという意識が持てれば、私たちのプロダクトはもっと良くなる」(ナラヤン氏)
ここ数年のAdobeは「体験が他社と差別化する競争優位の源泉」というメッセージを繰り返し発信してきたが、今後はMarketoが重視してきた「顧客エンゲージメント」を体験の中に織り込むことを重視するという。
Marketoはパートナーエコシステムの発展にも力を入れてきた。この戦略はAdobe傘下に入っても変わらない。視点を変えると、AdobeがMarketoと完全に統合すれば、約600社のテクノロジーベンダーが集まるパートナーエコシステムとのつながりができる。もちろん、Adobeの既存製品との連携にも積極的に取り組んでいる。具体的にはこの半年間でどのような製品連携を進めてきたのか。
最初に着手したのは、コンテンツ管理製品(CMS)の「Adobe Experience Manager(AEM)」およびクリエイティブ制作のための「Adobe Creative Cloud」との連携である。2019年4月に提供を開始した最新の「Adobe Experience Manager 6.5」では、「Adobe Asset Link」を使用し、「Adobe Photoshop」「Adobe Illustrator」などのデジタルアセットをAEMから直接検索、編集、再利用できるようになっている。この連携をMarketo Engageにまで広げ、Marketo EngageのユーザーもAEMのコンテンツやAdobe Creative Cloudのクリエイティブアセットに直接アクセスできるようにする(図1)。これにより、PCサイト用のコンテンツをモバイルデバイス向けに編集することもMarketo Engageから行うことができるようになる(図2)。
従来のキャンペーン準備では、コンテンツをメールやWebページに即した形に展開する際、さまざまなツールを行ったり来たりしなければならなかった。今回の連携でMarketo Engageユーザーは、コンテンツを早く簡単に、ストレスなく作ることができるようになる。
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