一般的にアプリ広告は「インストール広告」と「リエンゲージメント広告」の2つに大別される。インストール広告は文字通り、まだ自社のアプリを持っていないユーザーに対してインストールを促す新規獲得のための広告で、アプリ広告市場の大半はこちらが占める。これに対してリエンゲージメント広告は、アプリをインストールしてはいるものの長期間アクセスのない既存ユーザーに対して再度の利用を促す広告だ。
インストール広告の場合は広告をタップするとアプリストアに遷移し、インストールが求められる。一方でリエンゲージメント広告は既にアプリをインストール済みのユーザー向けの施策であるから、広告をタップするとそのままアプリが起動する。Criteoのアプリ広告ではこの2つに加えて、Criteoの代名詞でもある「ダイナミックリターゲティング広告」を提供している。既にアプリを持っているユーザーを対象とする点はリエンゲージメント広告と同じだが、閲覧履歴に応じてお薦めの商品を広告上で表示するなど、広告クリエイティブをリアルタイムにパーソナライズにするところに特徴がある。
また、アプリ広告のみならず、Web広告からアプリインストールを訴求することもできる。Criteoのダイナミックリターゲティング広告では、例えばWebサイトで旅行について情報を探しているユーザーに対して、その人の行動履歴から関心の高そうな旅行先をパーソナライズして表示する。そこで同時にアプリのインストールを促すことで、広告に興味を持ったユーザーがアプリストアに遷移し、アプリをインストールするという動線を作り出す。そして、インストールしたアプリの初回起動時に、広告に表示された商品ページがディープリンクで直接表示される。ユーザーはそのまま予約に進むことができるのだ。
Web広告ではユーザー(ブラウザ)の識別にCookieが用いられるのに対してアプリ広告では広告識別子と呼ばれる、個別の端末に割り振られた広告専用IDが用いられる(iOSではIDFA、AndroidではAAID)。CriteoはUniversal Matchという技術で双方のデータをマージして人軸で行動を理解することができる。
Criteoは2018年11月に、アプリインストール広告のManageの買収を発表している(関連記事)。両社は現時点では別々にサービスを提供しているが、2019年末から2020年までには統合される予定だ。
Criteoでモバイルアプリ事業統括責任者を務める鶏田 薫氏は「これまで、インストール、リエンゲージメント、ダイナミックリターゲティングというソリューションをワンストップで提供できるのは(GoogleやFacebookなど)大手プラットフォームに限られていた。Criteoのビッグデータと強力なAIエンジンを使うことで質の良いユーザーを獲得し、エンゲージメントを高め、ROAS(広告費用対効果)を提供できる」と語った。
説明会の後半では、Criteoのモバイルアプリ広告を既に導入している立場から、ディップ マーケティング室の藤野 亮氏が登壇。導入背景やモバイルアプリ戦略、今後の展望について語った。
藤野氏のミッションは、求人情報サイト「バイトル」におけるターゲットユーザーの集客、そしてアルバイトの応募を増やすことにある。
ディップがバイトルのアプリプロモーションで重視するのは「ユーザー」「LTV」「CPA(顧客獲得コスト)」の3点だ。アプリをインストールしたユーザーは基本的にはサービスに興味関心が高い人と考えられる。当然、応募してもらえる可能性が高い。また、一度アプリをインストールすれば長期間使ってもらえるかもしれない。ディップにとってはこのアプリの「残存効果」こそがLTVということになる。Web広告においては現状、キャンペーンを繰り返して投資を増やすにつれてCPAも上がってしまうのが一般的だが、アプリ広告においては現時点ではCPAをほぼ一定の水準に維持できているという。
「アプリにおいて重要なアクションは2点。インストールを獲得することと、そのインストールユーザーが応募をしてくれることだ。インストール広告を最適化して応募率を高める必要がある。また、インストールはしたものの能動的に動かないユーザーの背中を押す意味で、リエンゲージメント広告も必要」(藤野氏)
そうした観点からディップでは、バイトルアプリをインストールしたユーザーに対して閲覧履歴などを基におすすめの仕事をCriteoのモバイルアプリ広告で配信している。表示された仕事に関心を持ったユーザーはそのままディープリンクでアプリの仕事詳細ページに遷移し、応募できる。
Criteoのリエンゲージメント広告は他社の同類の広告と比べてCTR(クリック率)が約4倍、CPC(クリック単価)は約2分の1に抑えられたという。また、Criteoのモバイルアプリ広告経由の応募数は着々と増加し、最近では2016年10月から最大11倍にまで達した月もある。
藤野氏は「CPAで比較してもWeb広告の約65%の単価で獲得ができている。Webが悪いわけではなくアプリ広告の効率がいい。今ではCriteo内でも半分以上をアプリ広告が占めている」と語る。今後もCriteoを活用し、AIによるクリエイティブの自動化や強化カテゴリに合わせた入札などを活用しつつ、人の手も加えながら、より効果の高い運用を目指す。
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