テクノロジーの進化はクリエイティブのアイデアを拡張させる。メディア接触の在り方が変わり続ける時代におけるPRは何を成果指標とすべきか。
2017年7月に業務提携を発表したクリエイティブチーム BIRDMANとPRエージェンシーのアウル。デジタルを土俵にそれぞれの領域で実績を積み重ねる両社は、連携することで何を狙うのか。BIRDMAN代表の築地ROY良氏とアウルCEOの北村俊二氏へのインタビュー後編では、現在のデジタルPRが抱える課題とその打開策に向けた両氏の熱い思いをお届けする。
――PRの成果はメディアへの露出量を広告費に換算して出すことが多いと思うのですが、露出量よりも反響の質が問われるとなると、そうした考え方が変わってきますね。
北村氏 なので、広告価値換算には全く意味がないと思っています。新聞、テレビ、ラジオ、雑誌の4マスメディアしかない時代であれば、放送時間の長さや紙面の面積をもって「広告ならいくらか」と示すのは分かりやすかったかもしれません。しかし、Webメディアの広告価値を横並びで測るのは簡単なことではありません。実際、価値算出のロジックはPR会社によってバラバラですから。
――誰が計算しても同じ数字になるわけではないと。
北村氏 毎年行っている施策の成果を相対的に比較するような場合には広告価値換算もまだ一定の役割を果たしているとはいえます。それでも、Webの世界では違う指標を見た方がいい。Webには一次メディアと、それを複製した二次メディアがあります。あるメディアで取り上げられた後、その記事が10媒体にフィードされれば数字上の掲載数は10倍になるわけです。しかし当然のことですが「載った」と「読まれた」はまるで別のことです。実際にはほとんど読まれていない記事も多い。それらを含めて記事の本数で価値計算することに何の意味があるでしょう。共感されない100記事よりむしろ共感を呼ぶ3記事の方がよほど価値があるといえます。もちろん、トラフィックの多い大手ポータルサイトのトップページに見出しが出れば、PVは稼げるかもしれませんが、そこに全く「いいね!」が付かないということだってあります。より重要なのは見た人の何人が共感したかです。
――質の高いクリエイティブを、本来リーチすべき人にきちんと届けるというのが、今回の提携の大きなテーマだと理解しました。しかし、リーチは拡大しても、意図せざる反応を生むこともありますよね。
築地氏 実際、インターネットにおけるキャンペーンが炎上して企業が謝罪して取り下げるといった事例が増えていますからね。クリエイティブを担う立場にしてみれば、普通のアプローチでは埋もれてしまうから、頑張ってギリギリのところを攻めたいという気持ちは理解できます。そもそも炎上狙いのつもりはなくとも、何かを表現する以上、ネガティブな反応というのは付きものです。批判も想定した上で、自分たちは何のためにそれをやっているのか、きちんと説明できなければいけないと思うのですが、それができている企業は、日本ではまだ少ないですね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.