本稿では、2017年5月11日に実施された「Web & デジタル マーケティング EXPO 春」におけるヒトクセ 宮崎 航氏の講演の内容をダイジェストで紹介する。
2017年5月10〜12日、東京ビッグサイトで「Web & デジタル マーケティング EXPO 春」が開催された。展示会と並行して開催されたセミナーでは、業界のトップランナーが最新の技術トレンドや事例などを紹介するセミナーが多数開催された。
ITmedia マーケティングでは、テクノロジーを駆使した広告領域で存在感を増すベンチャー企業、ヒトクセ 代表取締役社長CEO 宮崎 航氏のセッションに注目。「動画広告の効果的な活用方法」と題して語られた講演のポイントを紹介する。300案件以上の配信実績から得られたという実践的なノウハウをつかみ取ってほしい。
2016年に842億円とされた動画広告の市場規模は、2020年には3倍近い2309億円まで成長することが見込まれている(※)。2011年の東京大学在学中に起業して以来、スマートフォンアプリやWeb広告の分野において最前線を走り続ける宮崎氏も、動画広告市場の伸びを肌で感じているという。動画広告が注目を集める背景として宮崎氏は以下の5点を挙げた。
※サイバーエージェント オンラインビデオ総研とデジタルインファクトの調査より。
1番目の配信環境の整備とはもちろん、スマートフォンの爆発的な普及と動画配信に耐えるだけの高速なモバイル通信網が整備されたことを指す。
次にコスト。テレビCMを制作し放映するとなると、数千万円から数億円の費用が当たり前のように発生する。一方、動画広告を制作したり配信したりするためにかかるコストは、テレビCMに比べれば概して安価だ。クラウドソーシングによるサービスを利用することもできるし、機材そのものも大掛かりなものを必要とせず、スマートフォン1つで撮影から編集まで済ませてしまうことさえできる。内容にもよるが、数十万円もあればコンテンツを用意することは十分に可能だ。
また、既にテレビCMを打っているクライアントが同じ素材を使って補完的に動画広告を実施する事例も増えているという。
ブランドの認知にも効果的だ。情報量が多くわかりやすい動画広告は、テレビCM同様に「低関心層」「潜在層」に効果的なアプローチとなる。
そして何より、動画広告はターゲティングに優れている。リーチの大きいテレビCMは料金が高い割に、それがどのくらい効果があったか、具体的にどれだけ購買行動につながったかを測定するのは困難だ。片やインターネット動画広告配信の場合は、年齢や性別など属性を指定して配信でき、閲覧したユーザーの行動追跡や態度変容も確認できる。
動画広告にもさまざまなフォーマットがあり、商品特性やプロモーション方法によって最適な広告フォーマットを選ぶことが重要になってくる。
例えば動画広告の代表的なフォーマットとして、YouTubeやVimeoなどの動画視聴サービスにおいて動画の前後や合間に再生される広告領域である「インストリーム広告」と、Webサイトのさまざまな場所に設置される「インバナー広告」ある。前者は認知効果が高く確実に視聴される一方で、配信枠が限られるためボリュームを見込めないという特徴がある。後者は広告枠が大量にあるため広くリーチが可能で高いクリック率も期待できる一方でインパクトに欠けるという短所もあるという。
宮崎氏は、ヒトクセが手掛けて成果を上げた動画広告の改善事例を紹介し、それぞれのポイントを解説した。以下がその内容だ。
ヒトクセの調査によると、ユーザーがスマートフォンで動画を視聴してくれる時間は5.5秒と、思いの外短い。ちなみに静止画であるバナー広告だと2.7秒だという。動画広告というと、30秒や60秒といったテレビCMより長い時間のコンテンツを届けられることがメリットという印象があるが、実際には視聴されていない可能性も高いのだ。そこで、長い動画の中でインパクトのある部分だけを切り抜き、集約して5秒以下に再構成してアドネットワークで配信したところ、静止画と比較してCVRは2〜3倍と大幅に上がったという。
そうなると、長い動画のどこを切り出すかが課題になる。ヒトクセでは複数の広告素材を用意してA/Bテストを繰り返し、PDCAを回しながらクリエイティブの改善を図るようにしている。一方で、CTRについては、動画は静止画の8割ほどに下がる傾向にあるという。これは、動画がクリックできるということが認識されにくいことが原因と考えられる。分かりやすいアクションボタンを設置することも重要になってくる。
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