ソーシャルメディアで広く拡散されることを狙った「バイラルコンテンツ」は、当たればそのインパクトは大きい。しかし、それがコンテンツマーケティングの本質と考えるのは早計だ。
ソーシャルメディアでバズる、つまり広く拡散され多くのPVを稼ぐ「バイラルコンテンツ」は、コンテンツマーケティングにとっての「ホームラン」だ。
野球ではホームランが出ると試合の展開が一気に変わる。ならば、ホームランを狙って強打者ばかりを集めて打線を固めれば、連戦連勝でチームもファンも大いに盛り上がるかといえば、実際にはそうではない。1番から5番までホームランバッターばかり並べても、攻撃が単調になり、意外と点が取れないということになりがちだ。理由は簡単。効率が悪いのだ。ホームランが多いバッターでも、1年間に打てるのはせいぜい50本。フル出場して500打席くらいだから、ホームランの確率はせいぜい1割である。
野球では勝つための戦術を考えて1番から9番までの打順を決める。特に上位の打順には、それぞれ比較的明確な役割がある。1番は打率が高くて俊足。2番はバントやエンドランなど小技が上手で俊足。3番は長打が打てて打率も高く、4番と5番はたまったランナーを一気に返せるホームランバッターを並べるのがセオリーとされる。
同じようにコンテンツマーケティングにおいても、各ターゲット層に向けたコンテンツ設計をする必要がある。野球の打順をファネルに置き換えると「潜在層→顕在層→見込み客→顧客→優良顧客」と、ターゲット層に合わせたコンテンツを考えて攻めなければならない。バイラルコンテンツは主に認知獲得を目的とするので、潜在層へのアプローチが中心になる。だが、狙ってホームランを打つのが難しいように、バイラルコンテンツにするつもりで出したもの全てが思うような成果を挙げるとは限らない。また、そこばかり狙っても、他の層への対策ができていなければ、必ずしもエンゲージメントにつながらない。
攻撃力や機動力、守備力をなおざりにしたバランスの悪いチームが優勝することはまずない。10点取っても11点取られれば勝利には結び付かない。1990年代の巨人がフリーエージェントでホームランバッターばかりを集めた割に優勝が少なかったように、決して効率のいい攻めにはならないのだ。
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