第23回 2015年のソーシャルメディアは「動画」で覇権争いが勃発【連載】海外事例に学ぶマーケティングイノベーション(2/2 ページ)

» 2015年02月02日 08時00分 公開
[馬渕邦美,オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン]
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1. 2015のトレンド1:Twitter ZERO

 Twitterのユーザー数は停滞期に入っているが、コンテンツの量は引き続き加速傾向にある。この伸びを加速させ、さらに稼ぎ続けるために、Twitterはユーザーにやさしいエクスペリエンス(UX)を作るとともに、既存のユーザーには、関連性のあるコンテンツを配信しながら、さらに新しいユーザーを誘致するフレッシュな方法を模索している。

 Twitterは、Facebookのように従来のタイムラインのフォーマットからは離れ、アルゴリズムに沿ったコンテンツ提供を適用していくだろう。これにより、ブランドが投稿するコンテンツのオーガニック・リーチはゼロに近づくため、Twitterのペイド・プロダクト一式を配置するように多大の圧力がかかるだろう。

 Twitter ZEROに備えるには、

1) パフォーマンスに重点的に取り組む

 これまでは、口コミやアーンドメディアを操りファンのコミュニティを構築し、「いいね」を増やし、オーガニック・リーチを行ってきた。しかし今後は(効果ある間はオーガニックなものをテストしながらも)オーディエンスに効果があるものを検証した上で、ペイドメディアを利用し、最も成果が出る物に集中的に投下して口コミやアーンドメディアを獲得する必要がある。

2) ターゲティングで勝つ

 オーディエンスのソーシャル行動を分析し、プラットフォームを介してターゲティングする選択肢は豊富にある。広告的なコンテンツのアルゴリズムはユーザーの評価を下げるだろう。逆に、優れたターゲティングで配信される編集型(エディトリアル)コンテンツは非常に大きなパフォーマンス利益をもたらすことができる。

 ただし、「エディトリアル」と言う場合、記事配信のタイミングがソーシャルと連動していることが重要であることを忘れてはならない。

3) Twitterカードを活用

 Twitterカード(タイムラインで記事の「概要を表示」させ、説明文や画像を見られるようにする機能)は、プロダクトカード、リード・ジェネレーションカード、APPダウンロードカードなどさまざまあるが、情報フィードで目立つだけでなく、コンテンツ配信のアプローチにおいて、より商業的に成功する道を開く可能性を秘めている。この記事を読んでいる間にも、アメリカでは統合型Eコマースが試験的に行われているはずだ。消費者に直接販売したいのであれば、これこそ現在探求すべき重要事項だ。

4) Facebookも忘れてはいけない:少額の投資で実験する

 多くの中小企業がオーガニック・リーチの崩壊によって、ソーシャルの広告が高いものとなることを懸念している。が、少額の投資で実験してみて、その効果をみることを勧める。わずか300ポンドをFacebookのペイド・メディアに使うことでそのユーザー10万人以上にリーチできるのだ。

 しかしながら、ソーシャルはFacebookやTwitterだけではない。どのチャネルを使おうと関係ない。重要なのは常にビジネスの目標を考えていることだ。

2015のトレンド2:動画の覇権争い - Facebook vs. YouTube vs. Twitter

 2014年5月、Facebookはユーザーのタイムラインに表示する動画の量を大幅増大にするアルゴリズムを発表し、アイス・バケツ・チャレンジは、Facebookの動画の利用を一気に増加させた。また、マーク・ザッカーバーグはFacebookのQ3の業績発表の機会に、最優先事項として動画を位置付けた。動画広告においてFacebookはYouTubeに先んじたと言える。

 FacebookはYouTubeの縄張りを荒らそうとしている。それを阻止するために、各ソーシャルネットワークはコンテンツ・クリエイターを引き寄せ活躍させることに必死だ。Facebookの動きを検証してみよう。

1) Facebookの動画広告が急増!

 Facebookは動画に閲覧カウントを付け加え、現在、2014年Facebookの動画は閲覧数でYouTubeに並んだ(アイス・バケツ・チャレンジはここでも役立った)。動画の自動再生増加により、2014年8月Facebookはアメリカのデスクトップ上での動画閲覧回数においてYouTubeを超えた。

2) Facebook内にいたほうがよい

 Social Bakersによると、Facebookのネイティブ動画は、Facebookに埋め込まれたYouTube動画よりも40%も高いエンゲージ率を達成した。アドパーラーのデータでは、Facebook ネイティブアプリは、

  • 2.5倍の高いCTR
  • エンゲージ1回ごとに10%低いコスト
  • 3.5倍もの低いCPC
  • 1回の動画再生に5.5倍もの低いコスト

を実現している。そのため、マーケターは2014年11月時点でFacebookのネイティブ動画を優先して採用するとしている。

3) エンゲージやシェアにより強みを発揮

 FacebookとYouTubeのネイティブアプリの動作をくらべると、早期からFacebookの方がYouTubeよりも極めて高いエンゲージ率を実証していた。John Lewisのクリスマス広告では、YouTubeは0.8%のエンゲージ率(この記事を書いている時点で1850万の閲覧)であるのに対し、Facebookでは5.2%ものエンゲージ率を打ち出した(620万の閲覧から)。550%の改善だ。しかも閲覧数が3分の1にもかかわらず、Facebookのシェア(15万9000)はYouTube(6万1000)よりも160%高い。言い換えると、「ペンギン・モンティ」の場合Facebook動画は、たった25%閲覧数のから72%ものシェア率を占めていることになる。

動画が取得できませんでした

 このように、Facebookが圧倒的な優位性を見せているが、注意すべき点がある。自動再生だ。デスクトップやモバイルで動画を音声をなしで再生させるFacebookの決定は、閲覧カウントを結果的に拡大させたが、プラットフォーム上に配信する動画広告の完結率が恐ろしく低い結果になった(あるコメンテイターによると、YouTubeの80%に較べ、Facebookは25%の完結率だとしている)。ビデオ自動再生中に、動く画面をスクロールするために完結率が低いと言ってもよいだろうが、いずれにしても理想的な状況ではない。

 ユーザー間の動画シェアは増加傾向にあるが、この動きはニ分岐、三分岐する方向性にある。Facebookが所有しているインスタグラムは、特にユーザーが最初に呼び出すアプリであり、モバイル上で制作した短い動画公開に利用している。ハイパーラプス(Hyperlapse)の利用拡大の成功はインスタグラムの地位を強化した。

 Twitterカードによる動画を直接フィードする動きは、ますますTwitterの関連サービスを強化してVineが成功する基礎となっている。

 さて、話を「動画ロワイヤル/覇権争い」に戻そう。先に述べた通り、Facebookが動画の公開/配信においてYouTubeの地位を脅かした。よって、マーケターは今後、FacebookとYouTube双方のネイティブアプリに動画コンテンツを出し、各プラットフォームへの有料配信を支えて行くだろう。Twitterやインスタグラムも、前よりもさらに関連サービスとしてビデオコンテンツや広告のサービス開発に投資して行くだろうし、インスタグラムは、2015年中ごろまでに進化した動画サービスをローンチするだろう。

 2015年、Facebookは著作権の侵害に真剣に取り組むだろう。そして、その潮流はコンテンツクリエイターとの収益の分配へと議論が進むだろう。著作権を獲得すれば、Facebookは次のYouTubeになるかもしれない。常に改善を続けるプラットフォーム、それがFacebookだ。

 では、マーケターはこの覇権争いにどのように備えるべきであろうか。

 まずは、ネイティブ動画の活用方法を見直すことをおすすめしたい。デジタル化されたコンテンツは、ユーザーの嗜好や、行動などのさまざまな情報を与えてくれる。ユーザーの行動も日々進化を遂げているので、ブランドは動画コンテンツのバリエーションを増やし、各プラットフォームへの最適化の準備をするべきだ。

2015のトレンド3:デジタル時代の若者たち

 現在の若者たちは日々インターネットを利用するデジタル世代だ。大人の世代が示した行動形や枠から溢れ出して、確かな研究の対象ともなっている。

 2015年、若者たちによる匿名性の高いプラットフォーム利用が伸び続けるだろう。まだ自分自身が何者かを見つけ出していない彼らにとっては、「実名」による堅固な身分証明はそれほど魅力的でないからだ。

 Tumblrの利用者に10代が多いのは、彼らが自分のアイデンティティを見つけようといまだ模索し続けているからだ。匿名で自分を表現し、限定的ソーシャルネットワークで一過性なコンテンツを共有するTumblrs、Whatsapps、Snapchatsなどのアプリはより好まれる傾向にあり、いまだ成長の途上にあるからこそのプラットフォームであると言える。

 大人になり、車を運転し、たばこや酒を買い、投票権も得たなら、社会的規範の定義は身元が識別可能になる。やや拡大解釈的な意見だが、Facebookはこれらの社会的規範の枠内でわりと動いていると言える。やがて10代を卒業して大人になった若者は、プラットフォームの選択も変わり、LinkedInアカウントのように一貫性のあるプラットフォームを必要となる。

 ここまで、2014年のソーシャルのまとめと2015年のトレンドについて書いてきたが、今年もソーシャルは世界のデジタルマーケターにおいて非常に重要な要素であり、全てのマーケティング活動をさらに効果的に変える魔法の杖となる。

 2015年、各社がそのプラットフォームの機能をさらに磨いてくることは間違いない。弛まぬ情報収集と、小規模な実験、大きなアクションで日本からも大きなソーシャルに連動したキャンペーンやユーザーを惹きつけるコンテンツ、広告賞が取れるケースが生まれていくことを願ってやまない。

寄稿者プロフィール

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馬渕邦美 オグルヴィ・ワン・ジャパン 代表取締役。ネオ・アット・オグルヴィ 代表取締役。Sapient inc(US)をスタートに、インタラクティブマーケティング業界で12年に及ぶトップマネージメントを経験し、2009年にオムニコム・グループであるTribal DDB Tokyo ジェネラル・マネージャーに就任。日本における事業の立ち上げを成功させる。2012年オグルヴィ・ワン・ジャパン及びネオ・アット・オグルヴィの代表取締役に就任。 オグルヴィ・ジャパン・グループのデジタルビジネスを牽引している。

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