適切なコンテンツをロジカルに導き出すためのコンテンツストラテジー。しかしこれだけで人を惹きつけるコンテンツが作れるわけではありません。人を購買に導くには理性だけではなく、情緒的な側面も不可欠です。ではどうしたら魅力的なコンテンツを作成することができるのか?コンテンツマーケティングではストーリーの力を利用します。今回は、コンテンツマーケティングの奥義ともいえるストーリーの活用方法について紹介します。
「マーケティングにはストーリーが必要だ」「成功する企業は優れたストーリーを持っている」といったように、ストーリーの重要さはさまざまな局面で議論されてきました。しかし、ストーリーとは一体何でしょう? ストーリーテリングのことを示す人もいるかもしれませんし、またある人は童話や小説のことであるというかもしれません。人によって解釈は異なりますが、そこには共通の何かがありそうです。
このストーリーという、曖昧だが多くの人が重要視する考え方について深く探求した1人が、アメリカでプロのストーリーテラーとして活躍するケンダル・ヘイブンです。辞書においてもストーリーの明確な定義がされていないことに気づき、2007年に出版された「Story Proof」という本の中で、ストーリーという言葉の定義を試みました。ケンダルによるストーリーの定義が下記です。
“A detailed, character-based narration of a character’s struggles to overcome obstacles and reach an important goal.”
登場人物が困難を乗り越えて重要な目的を達成するまでの奮闘を詳細に描いた叙述である。
さらにケンダルは、ストーリーが必ずしも言語に頼らないものであることを、心理学者のフリッツ・ハイダーと助手であるマリアンヌ・ジンメルが作成した映像によって示しています。下記の実験的映像を見てください。
いかがでしたでしょう。ナレーションもない大小の三角形と丸の動きだけで、人はストーリーを感じ取ることができることに驚いたのではないでしょうか? この映像を見た多くの人は、年齢/地域を問わず「小さい三角形と丸が恋愛関係にあり、そこに大きな三角形が登場し、丸を奪おうとするが、小さな三角形は戦い、最終的には丸と二人で逃げ切り、取り残された大きな三角形が激怒する」というストーリーを読み取るようです。
これは、脳が、受け入れた情報を自分でストーリー化した後、考えたり、記憶したり、思い出したりするからだといわれています。ケンダルは、ストーリーは言語が生まれる前から存在し、10万年以上前から人間の思考の基本を成すものであったと述べています。そしてこのことが、ストーリーが記憶に残りやすく、しかも人に伝わりやすい理由です。
皆さんも、昔読んだ新聞や雑誌の記事、レポートなどで思い出せるものは少ないのに、小説や物語については覚えているものが多いのではないでしょうか。それは論理的な文章というものが、多くの人が触れられるようになってから数百年の歴史しかなく、脳にとって非常に新しい情報伝達の形であることが原因です。ただし、物事の仕組みや構造、詳細情報を伝達するには、論理的な説明の方が優れています。情報の受け手側が、論理的な説明を受け入れやすい状態にするために、まずストーリーで相手に下地を作ることができれば、論理的な説明はその力をフルに発揮できることになります。
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