今回お話しするマーケティングコミュニケーション活動における「学習と成長の視点」では、財務の視点や顧客の視点、そして業務プロセスの視点で得られた戦略目標やターゲット、コミュニケーション戦略ストーリーの達成度を「見える化」するためのフレームワークを紹介します。
商品やサービスがあふれ、厳しい競争に見舞われている昨今、「お客さまはものを買わなくなった」という言葉をよく耳にします。また、魅力的な商品やサービスであっても、なかなかお客さまの期待や価値、ニーズに響かず、お客さまの反応や行動に結びつけることが難しくなったといった声も耳にします。
その原因の1つには、お客さまの嗜好やライフスタイルの多様化が進んでいることが挙げられます。値引きやこれまでにない機能や効用をいくら訴求しても、それがお客さまの嗜好や心に響かなければ、お客さまは反応や行動をなかなか起こしてくれません。
そんな中、お客さまの嗜好や心、期待や価値、ニーズを知る上で、「お客さま経験価値」という概念に注目が寄せられています。
そして、ビッグデータやソーシャルメディアが示すように、情報通信技術(ICT)を活用することで、「お客さま経験価値」が把握しやすくなりました。本連載最後の視点、BSCフレームワークの締めくくりとして、「学習と成長の視点」から、マーケティングコミュニケーションにおける「お客さま経験価値」の理解がもたらす企業への価値と、その「お客さま経験価値」を「見える化」するためのフレームワークを紹介します。また、「お客さま経験価値」の「見える化」の進め方、「見える化」を進めるためのポイントやコツを紹介します。
一般にBSCにおける「学習と成長の視点」は、財務の視点、顧客の視点、および業務プロセスの視点における戦略目標やターゲットを達成度および成果を「見える化」し、さらにはその能力を高めていくための「気づき」を得るための視点になります。また、そこで得られた「気づき」を組織知とするための組織学習の仕組みづくりを行うための視点でもあります。
マーケティングコミュニケーション活動も同様で、コミュニケーション戦略目標を達成するために、マーケティングコミュニケーション施策が遂行され、施策の評価や達成度を「見える化」し、「見える化」された結果から「気づき」を得ることが重要です。
そして、マーケティングコミュニケーション活動に関する能力を把握し、その能力の向上を図るために重要となるのが「データに基づいた定量的な評価」になります。データに基づいたマーケティングコミュニケーション能力の評価と向上、そしてマーケティングコミュニケーション活動に関する組織学習力を高めていかなければなりません。
そのためには、企業がお客さまとのコミュニケーションを通じて得た「お客さま経験価値」を「見える化」し、お客さまの嗜好やライフスタイルに沿ったマーケティングコミュニケーション環境を整備し、そして単にお客さま経験価値を「見える化」するだけではなく、組織として学習を促進する仕組みづくりが重要になります。
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