リクルートSUUMOから学ぶ、Facebookの使い方5つのポイント(前篇)Facebook戦略策定の勘所

リクルートSUUMOのFacebookページ運用についてインタビューした記事です。効果算出の考え方だけではなく、ブランド戦略の中でのソーシャルメディアの位置づけ、TVCMとの連携の仕方などを聞いています。まずは前篇をどうぞ。

» 2012年12月11日 11時00分 公開
[GaiaXソーシャルメディア ラボ]
ガイアックス ソーシャルメディア ラボ

1「低頻度高単価商材」におけるSUUMOのソーシャルメディアの使い方

 自社の運用しているFacebookページが、どのような効果を出しているのか、定量的に計測している企業は意外と少ないのではないでしょうか。リクルート住まいカンパニーのSUUMOのFacebookページでは、「SUUMOサイトの利用意向」などの態度変容調査を定期的に行い、定量的なFacebookページの効果を算出しています。

[GaiaXソーシャルメディア ラボ(以下、ガイアックス)井出] SUUMOは、2010年からFacebookを活用するなど、ソーシャルメディアの活用に積極的ですが、使用目的を教えてください。

[リクルート(以下、リクルート) 田島氏] 住まい探しをする時にSUUMOを利用する人を増やすのが最終目的です。そのために「SUUMOを使おう」と思ってくれる人を増やし、「SUUMOの利用経験率を上げること」を第1の目的としました。住宅は検討頻度が極めて低い商材です。「住宅の売買経験」は一生のうち平均1.8回ですし、「賃貸」だけで見ても2.3回です。つまり、10年単位でしか「住宅」についての欲求は生まれないのです。

 また、住宅は一生分のローンを組むほど高額かつ関与度が高い(こだわりが強い)商品のため、企業からの一方的な購買促進は消費者に響きにくい傾向があります。さらに、住まい探しは多様な価値観を反映し、個人で検討するタイミングが異なります。企業からのプッシュによって「住み替え」というアクションまで推し進めることは難しい。つまり、住宅購入の欲求のトリガーは消費者側にあります。このような背景があり、とにかく欲求が発生したカスタマーと少しでも多く接触するため、リスティング広告、SEO対策など、検討層向けの集客施策を数多く行なってきました。

検討層マーケティングから潜在層マーケティングへのシフト

リクルート 住まいカンパニー企画統括室事業推進・事業開発部 ブランドマネジメントグループ ブランドチームリーダー 田島由美子氏

 もちろん、今でもリスティング/SEO対策は行なっていますし、今後も重要な集客戦略です。しかし、「リスティング内ビックワードの単価向上」や「SEO対策での主要ワードの競争激化」など、ネット上の集客競争が激化し、検討層との接点だけを考えていたのでは限界があると感じていました。そんな中、3.11以降急速にソーシャルメディアが普及しました。潜在層と接触する場ができたのです。さらに、アトリビューションマネージメントの技術により、間接効果を測れるようになりました。SUUMOサイトへのラストクリックだけでなく、そのクリックに影響したソーシャルメディアの活動が計測できる可能性が出てきたのです。

 潜在層へのアプローチ手段と効果測定の仕組みができたことにより「潜在層マーケティング」の環境が整いました。お話しした通り、欲求のトリガーが消費者側にあるため、いつニーズが高まるか分からないことも低頻度商材の特徴です。だからこそ、ニーズが潜在化している時も、常に消費者に寄り添い、「スーモくん」のキャラクターをフックにコミュニケーションを取って「家を購入しよう」「引越ししよう」と思った時に最初に思い浮かべてもらえるブランドにしたいと考えました。

ソーシャルメディアは戦術の1つでしかない

 また、SUUMOではブランド戦略を事業戦略の1つと位置づけています。単にSUUMOを宣伝することがブランド戦略ではなく、「SUUMOメディアを利用してもらう」という事業戦略を遂行するためにブランド戦略が存在しています。ソーシャルメディアはそのブランド戦略を遂行する戦術の1つでしかありません。Facebookがただ流行っているから、と取り組んでいるわけではないのです。

 おそらく、(ソーシャルメディアマーケティングを)何となく始めてしまうと、「結局何のためにやっているんだっけ? 」と、マーケティング施策におけるソーシャルメディア利用の優先順位が下がり、予算や投下できる工数までも減ってゆく負のスパイラルに陥ると思います。事業戦略に則してブランド戦略を立案し、その事業目標を達成するための施策として「ソーシャルメディア」を位置づけることで、社内コンセンサスが取れ、他の部署とも連携しやすくなります。

2 TV CMの課題はソーシャルメディアを軸にWebと連携させることで補完

[ガイアックス 井出] SUUMOでは、CMなどのマス広告も多く拝見しますが、Webやソーシャルメディアとの連携や位置づけをどのように考えているのですか?

[リクルート 田島氏] SUUMOはTV CMを打っていますが、Webとソーシャルメディアを有機的に連携させる「統合ブランドコミュニケーション」が大事だと思っています。「CMで上げられる認知度は一過性」だからです。以下のグラフが示すように、CMを投下すれば認知率は上りますが、投下していない時には下がってしまいます。

 継続的にCMを投下することが可能なら、認知率を向上させるにはTV CMを出稿し続けるだけで十分かもしれません。しかし、冒頭にもお話しした通り、低頻度商材かつ欲求のトリガーが消費者側にある商材では、継続的にTV CMを打ち続けるのは非効率です。CMを放送すると、その時の「検討層」はSUUMOを使ってもらえるかもしれません。ところが、世の中の大多数である「潜在層」の方々には、そのメッセージが刺さらず、水漏れを起こしています。そこをソーシャルメディアで受け止めようと考えました。ユーザーが潜在層の段階から寄り添いながら関係性を温め、検討層に移行したタイミングでSUUMOを一番に想起、利用してもらうことを狙います。継続的にカスタマーと接触する手段としてFacebookページやTwitterを活用しているのです。

 認知効果が一過性とはいえ、TV CMによる影響力が大きいのは事実です。TV CMは多くの方々に「リーチする力」は高いのですが、放送時間が限られているため「体験してもらう力」は弱い。その点Webはその表現力の高さからカスタマーに「体験してもらう力」があります。一方で体験したことを「拡散/浸透」させることはできません。拡散力が高いのはソーシャルメディアです。TV CMにより多くの方々に「リーチ」し、Webを通した「体験」をソーシャルメディアで「拡散/浸透」させる。3つのメディアには各々に強み/弱みがあるからこそ、互いに補完し合い有機的に連携させた「統合ブランドコミュニケーション」がSUUMOのブランド体験の蓄積につながるのです。

※本記事はリクルートSUUMOから学ぶ、Facebookの使い方5つのポイントをITmedia マーケティング用に編集し直したものです。


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