求職者を呼び込んで関心を持ってもらうインバウンドリクルーティング。今回は国内企業の事例を紹介します。
前回「HubSpotに学ぶインバウンドリクルーティング事例」では、ボストンで働きたい会社ナンバーワンといわれるHubSpotを例に、海外のインバウンドリクルーティングについて紹介しました。
HubSpotは顧客に愛されるためのマーケティングの考え方、いわゆるインバウンドマーケティングを提唱した会社だけあって、採用においても求職者視点に立った情報発信、カルチャーの公開、サイトへの導線設計など、多くの学びがありました。
今回は国内の事例として、メルカリ、ガイアックス、サイボウズ、そして筆者が代表を務めるコムニコについて紹介していきます。
事業拡大とともに、ここ数年採用に力を入れているメルカリ。同社の採用ページ(外部リンク)を開くと、ファーストビューに現れるのが、以下の3つのバリューです。
スクロールすると3つのバリューとミッション(新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る)の解説が表示されます。ここからはHubSpot同様、まずは自分たちのミッションとバリューを伝え、この価値観に共感する人だけを採用しようという強い意思を感じます。
採用関連のイベントや同社スタッフのインタビュー記事では、スタッフが3つのバリューがプリントされたTシャツを着ている姿をよく目にします。こういうところからも、メルカリへの就職を考える人たちのマインドに3つのバリューが自然と刷り込まれるのかもしれません。
もちろんメルカリの3つのバリューは言葉だけでは終わりません。同社の社内の仕組みやルールなども、3つのバリューに基づいて作られていると感じます。
例えば、メルカリには社員がリクルーターとなって友人や知人を会社に紹介するリファラル採用の施策があります。同社では社員による採用を目的としたランチやディナーなどは、相手が応募するかどうかにかかわらず、会社から全額費用が支払われます。同様の制度を設けている会社も増えつつありますが、メルカリではよくありがちな「1人3000円まで」などという金額の上限がありません。これは、採用を成功させるためには細かい取り決めに縛られず大胆な手を打つという彼らのバリューを体現しているのではないでしょうか。
また、米国にインターンに行く人を募集したときには、そこで何をするか、目的やゴールの設定は全て自分次第ということでした。これも、社員一人一人をプロフェッショナルとして信頼しているというバリューからでしょう。
採用サイトでは人事制度や福利厚生などについてまとめた「merci box」(外部リンク)が公開されています。メルカリでは産休や育休、介護休業などライフステージに合わせた休暇の取得や慶弔の制度を整えることで、働けないというリスクを抑え、社員が「Go Boldにおもいっきり働ける環境」をより充実させるという方針を取っているのです。
「メルカン」(外部リンク)は、社員インタビューやイベントレポート、オフィス紹介など、メルカリ社内の様子が分かるオウンドメディアです。更新頻度が非常に高く、毎日新しい記事を見つけられます。ほとんどの日において少なくとも2本は記事が公開されています。
トップにあるのは、やはり3つのバリューです。バリューに基づいて社員がどんな働き方をしているのか、Go Boldに働くためにどのような環境があるのかをここで伝えているのです。
記事によっては、日本語版と英語版の両方が用意されています。2018年10月にメルカリに入社した新卒メンバー50人のうち外国籍メンバーは44人。こうしたコンテンツの発信から、同社がダイバーシティー(多様性)に力を入れていることもうかがえます。
3つのバリューは一つ一つの記事中にも頻繁に登場します。この連載の第1回「なぜ人材採用にマーケティング発想が必要なのか」で、インバウンドリクルーティングにおいては社員自らがシェアしたくなるようなイベントや制度を用意することが重要だと紹介しましたが、メルカリではまさに理想的な社風ができていると感じます。
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