デジタル時代の人材採用。海外では既に実践されている「インバウンドリクルーティング」とは何か。
本連載のテーマは「インバウンドリクルーティング」です。
マーケティング業界では、「インバウンドマーケティング」という概念が認知されていますが、まさにこの考え方を人材採用に適用したのがインバウンドリクルーティングです。
「人材採用にマーケティング?」と思われる方もいるでしょう。しかし将来的に人材獲得競争がますます激しくなる国内市場において、インバウンドリクルーティングは自社にマッチする人材を獲得し、長期的に働いてもらうためにも、重要な施策になっていくでしょう。
第1回目の今回は、インバウンドマーケティングが支持される理由、この思想が人材採用にも必要になっている理由について解説します。また、なぜ筆者はインバウンドリクルーティングがこれからの採用活動の鍵になると考えるのか、事例を踏まえてお話します。
まず、本題である採用の話に入る前に、マーケティング業界で近年注目されているインバウンドマーケティングについておさらいしておきましょう。
商品を作り広告によって認知を得る、大規模なキャンペーンで注目を集めるといった従来のマーケティング手法が通じなくなっているというのは、各所でいわれていることです。
その背景の1つが、製品やサービスのコモディティ化です。B2C企業であれB2B企業であれ、既にモノやサービスがあふれている現代において、これまでになかった全く新しい製品というものは、生まれにくくなっています。言い換えれば、製品やサービスの特徴だけで顧客の興味・関心を引いて購買行動を促すこと、すなわち売ることが難しいということです。
同時に、インターネットが発達しSNSが普及したことも、生活者の購買行動における意思決定に影響を及ぼしています。生活者が商品の購入前やサービスの体験前に口コミやレビューを調べることは当たり前になっています。一方、SNSで自分の体験を発信することも容易になりました。こうして生活者の情報感度が高まる中、企業が発信する一方的な広告や宣伝のメッセージは、生活者の心に響きにくくなりました。そこで広まってきているのが、インバウンドマーケティングです。
これまでのWebマーケティングにおいては、検索エンジンのリスティング広告を出して見込み客をランディングページに誘導し、コンバージョン(購入や登録、申し込みなど)させるといった手法が一般的でした。もちろんこの手法は今でも健在ではありますが、マーケティング戦略全体で考えれば、これだけでは不十分です。
インバウンドマーケティングではまず、今後顧客になる可能性の高い見込み客像(ペルソナ)を設計します。そして、ペルソナがどういうコミュニケーションをへて購入までに至るのか、一つ一つステップを定義することで、見込み客をハッピーにするコミュニケーションをデザインするのです。
具体的には、企業が見込み客とのコミュニケーションをするためのコンテンツ(ブログ記事、動画、セミナーなど)を用意し、見込み客の方から来訪してもらうことを考えます。次に、無料のeBOOKやセミナーなど、申し込みのアクションを促すコンテンツを用意することで、見込み客のコンタクト情報を取得します。そこから見込み客の興味・関心度合いに合わせてメールやSNS、ブログなどを通して情報を発信し、関係を深めていくのです。アウトバウンドマーケティング、すなわち広告で自社や自社製品の魅力を声高にアピールする従来型のマーケティング手法とは対極をなすものといえるでしょう。
顧客と中長期的に良好な関係を築くため、企業は情報発信の段階から受け手のニーズや気持ちに寄り添い、愛されるマーケティングを実践することが重要です。結果、数ある競合の中から、好きな企業・ブランドとして選ばれることにつながるのです。
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