2018年8月、日本のB2Bマーケターが集い、熱気に包まれたライブイベントが開催された。その熱気の片りんをお届けする。
今、B2Bマーケターが熱い。エモい。ITmedia マーケティングでは2018年8月に開催されたB2Bマーケターのライブイベント「Bigbeat Live 2018」(主催:ビッグビート)から、そこに登壇したエキスパートたちの熱いメッセージを再録し、加筆編集の上お届けする。トップバッターは日本におけるB2Bマーケティングの第一人者であるシンフォニーマーケティング代表取締役の庭山一郎氏だ。
大学時代にマーケティングと出会って以来36年、B2Bマーケティングの世界に携わってきました。長年この分野に身を投じ、海外のマーケティングイベントや講演など情報交換の場にも積極的に参加してきたため、世界中にマーケターの知人、友人が多数います。
その友人たちが、私に必ず尋ねることがあります。それは「36年間もマーケティングに関わっていられるなんて、どんなセラピストにかかっているんだ」ということ。私が「セラピストにかかっていない」と答えると、彼らはびっくりします。
実は今、米国ではCMOやシニアマーケティングマネジャーの在籍期間が大体2年を切っています。彼らはROMI、つまりマーケティングに対する投資対効果(Return on Marketing Investment)をシビアに求められます。どんなに長くても、2年の間には成果を出さなければお払い箱になってしまう。そのようなプレッシャーにさらされている彼らは、ストレスを軽減するために優秀なセラピストを抱えているというわけです。
ちなみに成果を出し続けているCMOは在任期間が長いのかというと、そうではありません。彼らは彼らで、次の会社に引き抜かれていくので、やはり在任期間は2年程度なのです(笑)。
ROMIは、1990年代後半から注目されるようになった概念です。当時の米国は、今の日本と状況が似ていました。リードジェネレーションやリードナーチャリング、リードクオリフィケーションの重要性は認識されていたものの、これらが全てバラバラの部署で行われており、思うように効果が出ないのが課題でした。そこで、全てを統合した「デマンドジェネレーション」という概念が生まれました。見込み客のデータを集め、きれいに整えて1つの「箱」に蓄えて、その中でROMIを見ようとなったわけです。
このムーブメントを、あるエンジニアがカナダのトロントからずっと見ていました。チャットシステムの開発者であった彼は、世の中がデマンドジェネレーションに動いているが、そのプラットフォームがまだないということに気付き、1人の同僚とそれを開発することにしたのです。
エンジニアの名はスティーブン・ウッズ、同僚はマーク・オーガンといいます。彼らが開発したツールは「Eloqua」と名付けられました。世界初のマーケティングオートメーション(MA)の誕生です。その後、2006年に「Marketo」と「HubSpot」が登場し、MAの市場は拡大しました。
この流れを受け、GartnerでB2Bマーケティングを研究していたジョン・ネーサンがSiriusDecisionsという会社を設立し、「デマンドウオーターフォール」というマーケティングモデルを開発しました。このモデルは現在のB2Bマーケティングのスタンダードとなり、われわれは今もこのデマンドジェネレーションのムーブメントの影響を受けています。
日本でも、MAが上陸した2014年頃からROMIが意識されるようになりました。今日のマーケターは悪戦苦闘(Struggle)しながらスキルを上げ、キャリアを積み上げていかなくては生き残ることができなくなりつつあります。
そこで冒頭の話に戻りますが、実は私はセラピストとは無縁の健康体で、毎年人間ドックを受ける度に医師から「こんなにストレスのない人は珍しい」といわれるほどです。なぜストレスがないかというと、プロフェッショナルマーケターとして、自分の腕に絶対的な自信があるからです。どんな会社、どんな場所、どんな国にいても生きていけるし、絶対に自分と家族の食い扶持くらいは稼いでいけるという自信です。
マーケターは職人です。腕を磨いた料理人が包丁一本でどこでも生きていけるように、マーケターも真の自由の得るために、自分の腕を磨かなくてはなりません。
今だから話せるのですが、実はかつて当社も、会社がつぶれそうな危機に陥ったことがあります。当時、相談していた経営者の方がいたのですが、その方がある日スッと封筒を渡してくれました。「お金かな」と思って開けてみると、中には錠剤が入っていました。睡眠導入剤です。
その方は、きっと私が悩んで眠れないと思ったのでしょう。ところが私は、そんなときでも不眠症にかかることもなく、毎晩スヤスヤ眠れていたのです。自信は自由につながります。今プレッシャーの中にいるマーケターの皆さんも、ぜひ腕を磨いてこの自由を味わってもらいたいと思います。
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