「InterDirect Managers Meeting 2017」に参加するため2017年5月に欧州に出張したシンフォニーマーケティング代表取締役の庭山一郎氏。かの地におけるB2Bマーケティングの現状を解説する。
B2Bマーケティング一筋20数年。デジタル紀元前から日本企業が世界で互角に戦うためのマーケティング支援事業を営み、この道のオーソリティーとして知られるシンフォニーマーケティング代表取締役の庭山一郎氏が2017年5月、欧州に渡った。
渡欧の目的はInterDirect Network(以下、IDN)の年次イベント「InterDirect Managers Meeting 2017」に参加するため。IDNは、ダイレクト&デジタルマーケティング企業のグローバルネットワークで、現在は30カ国の企業が加入している。正規代理店として参加が認められるのは各国を代表する独立系企業1社のみ。庭山氏のシンフォニーマーケティングはさしずめ日本代表ということになる。
社会制度やビジネス慣習はまちまちでも、既存顧客からの引き合いや属人的な営業スキルに依存せず持続的に案件を創出するというB2B企業のマーケティング活動は、世界共通だ。各国企業がどのように創意工夫を凝らしているのか学ぶことは、日本のマーケターにとって大いに意義のあることだろう。
特に欧州における状況は、マーケティング大国である米国と異なり、なかなか伝わってこないもの。そこで今回、庭山氏が見聞したリアルな欧州事情を、前後編に分けて書き下ろしてもらった。
柔道の世界で「イッポン」「ワザアリ」などは世界中で使われる標準語です。郵便では幾つかのフランス語が、医療では多くのドイツ語が標準語になっています。つまり、あるカテゴリーにおいてはその発祥の地、もしくはそれが最も発達した国の言葉が標準の言語になります。
B2Bマーケティングの標準語は英語です。現代のB2Bマーケティングは米国で発達しましたからです。
B2Bマーケティングに関しては、1990年代まではGartnerが、2000年以降はGartnerのB2Bマーケティング&セールス研究部門から独立したジョン・ニーソン氏が率いるSiriusDecisionsが理論的なけん引者で、多くのモデルを発表しました。GartnerもSiriusDecisionsも、米国東海岸を本拠地としています。
また、マスメディアを使わないB2Bマーケティングは、古いカテゴリーでいえば「ダイレクトマーケティング(Direct Marketing)」に大きな影響を受けています。そして、このダイレクトマーケティングの総本山は、米国ニューヨークに本部を構えるData & Marketing Association(DMA)です。DMAはテクノロジーとデータ企業の業界団体で、今年で設立100年を数えます。
さらに、B2Bマーケティングと最も密接不可分な関係にあるテクノロジーといえばデータベースとインターネットですが、この両者も米国で生まれ、急速に発達したものであることはご存じの通りです。
現代のB2Bマーケティングの用語に英語や英語の略式表記(MQL、SALなど)が圧倒的に多いのはこうした理由によります。故に、欧州のB2Bマーケティングのエージェンシーと話していても、基本となる考え方や用語は米国のそれと変わりません。SiriusDecisionsが2000年代初頭にリリースした「デマンドウォーターフォール(Demand Waterfall/注1)」が標準モデルになっていますし、リードジェネレーション(Lead Generation)、リードナーチャリング(Lead Nurturing)といったプロセスの呼び方もほとんど同じです。
注1:購買のプロセスをファネル(じょうご)に見立て、見込み客獲得から育成、営業への引き渡しといった流れを整理して体系化したもの。
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