ノヤン先生と庭山特派員の二人旅も一段落。締めくくりはポートランドの静かな森のコテージから、日本のB2Bマーケティングの来し方行く末を考えます。
シンフォニーマーケティング代表取締役の庭山一郎氏が米国B2Bマーケティングの2大イベントを立て続けに取材し、その模様をほぼリアルタイムでお届けしてきた今回の短期集中連載も、いよいよ最終回。最後に、今回の旅をいま一度振り返りつつ、日本におけるB2Bマーケティングのこれからを展望します。
2017年4月21日に日本を出発し、サンフランシスコ、ラスベガスと回った遠征を終えて、飛行機で2時間半北上したポートランドの静かな新緑の森でこれを書いています。
いつも海外出張は事前にスケジュールをぎっしり埋めて、多くの収穫を期待しての旅となるのですが、今回は収穫よりもむしろ感動と興奮をもらった素晴らしい旅になりました。
米サンフランシスコで開催されたMarketoのイベント「Marketing Nation Summit 2017」では、Vista Equity Partnersによる買収と経営陣の交代を経てなお、同社の成長がむしろ加速していることを目の当たりにしました。米国のB2Bマーケティング業界の大物の参加も目立ち、会場で話してみると、やはり「新CEOのスティーブ・ルーカスを見に来たんだ」と言う人が多かったのが印象的でした。
そして、キーノートが終わった後では本当に多くの人が、「彼は素晴らしい!」「最高のCEOだね」「Marketoは素晴らしいCEOを獲得した」「CEOだけでなく、他の経営幹部にも良い人材をそろえたね」と、口々に話し合っていました。
キーノートで新CEOが語ったビジョンは、くしくも名前が同じである天才、スティーブ・ジョブス氏が創造したiTunesについて取り上げ、これをプラットフォームにしたエコシステムと同様のものをビジネスの世界で実現するという、壮大なものでした。
Marketoではこれを「エンゲージメントエコノミー」と呼んでいます。イベントの期間中、幹部のプレゼンテーションやセッションで何度も出てきたコンセプトワードです。
今後、Marketoのシステム開発やパートナー戦略、他社とのアライアンスは、このコンセプトを実現する方向にベクトルを合わせて行くのでしょう。
また、Marketoが優れたパフォーマンスを残したマーケターに贈るRevvie Awardsでは、複数の日本企業のマーケターがファイナリストにノミネートされ、Sansanの石野真吾氏が最優秀の「Marketer of the Year」を受賞しました。これは日本のマーケティング史に残る快挙といえるでしょう。
サンフランシスコから1時間半のフライトでラスベガスに到着しました。ここで開催されるOracleのイベント「Modern Customer Experience 2017」に参加するためです。
まだEloquaがOracleに買収される前から始め、今回で第11回を数えるB2Bマーケティングでは最も歴史と権威を持つ「Markie Awards」の、しかも、アカウントベースドマーケティング(ABM)部門でNECがファイナリストにノミネートされ、セレモニーに臨みます。この日は、Oracle バイスプレジデントのエイブ・スミス氏を交えての前夜祭でした。
Oracle CEOのマーク・ハード氏はカスタマーエクスペリエンス(CX)の重要性を語り、最良のCXを実現する具体的なソリューションを紹介しました。Oracleは、自社が持つマーケティングオートメーション(MA)、CRM、SFA、DMP、SNS管理などのソリューションを組み合わせ、10〜20年前に「未来はこうなる」といわれたシームレスなCXを、実際のビジネスの現場で実現しようとしています。ハード氏は実際にOracleのソリューションを組み合わせて売り上げを大きく伸ばした例を挙げながら、彼らの総合的なマーケティングとセールスの展開について紹介していました。
夕方のMarkie Awardsの時間になると、ついさっきまでビジネスカジュアルやロゴ入りのポロシャツでエキジビション会場やカンファレンスを駆け回っていた人たちが、見違えるようにドレスアップしたフォーマルスタイルで会場に集まってきます。
会場の入り口にはメディアも何社か来ていて、NECの東海林 直子氏がインタビューを受けています。
企業内のマーケターは営業のように売り上げに対する評価も受けられず、サポートのように顧客から感謝されることもなく、広告や広報のような華やかさもない世界なので、時々こうしたスポットライトを浴びることは、本当に意味のあることなのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.