エンゲージメントプラットフォームとして市場でプレゼンスを高めるMarketo。企業の成長戦略をどう支えていくのか。プロダクトマーケティング担当のトップに話を聞いた。
今日のマーケティングオートメーション(MA)市場においてMarketoがリーダー的なポジションを占めるのは自他ともに認めるところだろうが、Marketo自身のマーケティングメッセージの中に「マーケティングオートメーション」「MA」という用語は意外と表立って出てこない印象がある。同社は、これまでも自社製品を「エンゲージメントプラットフォーム」と呼び、その役割を「エンゲージメントマーケティングの支援」と表現してきた。さらに、同社の日本市場向けイベントのために来日したプロダクト・セグメントマーケティング担当のトップ、マット・ジリ氏は、特別講演の中で「エンゲージメントエコノミー」という概念について言及している。
エンゲージメントエコノミーの潮流を変化の兆しを捉え、経営と一体化した顧客中心のマーケティング戦略を推進すること、業務変革を加速するテクノロジーを活用することこそがこれからの企業が事業を成長させるためのキーになるというのだ。
2016年秋に発表した「Marketo ABM」をはじめ、大きな製品アップデートが続くMarketo。単なるMAにとどまらず、かつB2B市場にとどまらず市場を拡大していこうとする同社の狙いはどこにあるのか。そして、エンゲージメントエコノミーの中で進化するMarketoのプラットフォームはユーザー企業の成長戦略をどう支えていくのか。ジリ氏に聞いた。
――Marketoが掲げる「エンゲージメントプラットフォーム」「エンゲージメントエコノミー」とはどう定義されているのか。そこでどういう価値を提供し、どう市場を拡大しつつあるのか。全体的な戦略について聞かせてください。
ジリ氏 われわれのお客さまがあらゆるタッチポイントで、さらにその先にいるエンドユーザーとの関係性を構築できるプラットフォームを提供し続けること、それがMarketoの戦略です。市場には4000種類を超えるMAツールが出回っています。さまざまなマーケティングメッセージが飛び交う中でノイズをかいくぐり、その中から企業がそれぞれのビジネスモデルやユーザー層に最適なツールを選定し、効率的に運用し、しかも効果を上げるのは簡単なことではありません。Marketoを選んでいただければ、それぞれの企業におけるエンドユーザーとの関係性、つまりエンゲージメントの構築とそれをさらに強固にしていくという課題に対し、ベストアンサーを得ることができます。
――デジタルマーケティングの基盤としてMarketoだけ入れておけば大丈夫ということでしょうか。
ジリ氏 企業のあらゆるデータをMarketoに載せていくことを想定してはいますが、われわれだけでベストなマーケティングソリューションを構築することはできません。Marketoの強みの1つは、サードパーティーのエコシステムであるMarketo LaunchPointを通じて、お客さまが使いたいテクノロジーと自由に連携できるところにあると考えています。
――製品自体を多機能化させる、あるいは自社のブランドの中にたくさんの製品を抱え込むのではなく、機能としてはMAに特化しつつ、独立した中立的なプラットフォームであるところに価値があるというところでしょうか。
ジリ氏 そうです。われわれはお客さまがそれぞれの環境で自由に使いたいツールを使えることを重視しています。他のベンダーを買収して自分たちのプラットフォームの中で限定的に使えるツールを拡張していくといったモデルは、考えていません。
――買収といえば、Marketo自身は2016年に投資会社のVista Equity Partnersにより買収されました(関連記事)。今後のシナリオとしてジャーナリスティックな妄想込みでいえば、それこそマーケティングプラットフォーム強化のために他社がMarketoを傘下に入れようと狙ってくる可能性もあるかと思いますが。
ジリ氏 独立性ということは本当に重視しています。そして、Vistaによる買収で私たちが以前よりもさらに優れたプラットフォームを提供できるようになっているのは間違いありません。Marketoにおいては、ユーザーやパートナーコミュニティーをはじめ、マーケティングで継続的に成果を挙げるためのナレッジシェアや交流の場がオンライン、オフラインで展開されている。この「MarketingNation」というエコシステムがあることが、大きな強みになっているのです。将来的なことは分かりませんが、少なくとも現時点においては、独立性のあるマーケティング専業のノウハウを蓄積したプラットフォーマーであるからこそ、われわれはその強みが生かせると考えています。
――その強みは、顧客企業にとってはどのようなメリットをもたらすと考えればいいでしょう。
ジリ氏 そもそも私たちがエンゲージメントプラットフォームとして変革することになったのは、お客さまのニーズがあったからこそです。エンゲージメントの在り方が変わり、マーケティング部門の役割も変わりつつあります。そんな中で私たちのプラットフォームをどう活用していくべきなのかアドバイスを求められるようになってきました。自社のユーザーにより優れた体験を提供するために、今こそ行動を変えるべきと、多くの企業が気付いています。用途別、タッチポイント別にマーケティングツールを採用して活用するだけではなく、エンゲージメントを強固にするためにマーケティング活動の根本的な見直しが求められているのです。われわれの統一されたプラットフォームにエンドユーザーの情報を一元化することこそが、より深いユーザー理解を可能にするのです。
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