フラッシュ・マーケティング:短時間(フラッシュ)で集客や販売を行う【連載】恩藏教授のマーケティングキーワード解説

早稲田大学 恩藏直人教授がマーケティングの最新キーワードを解説する。第2回は「フラッシュ・マーケティング」。有効時間を極端に短く限定したクーポンの登場によって生まれた。米GROUPONやリクルートのポンパレがフラッシュ・マーケティングを活用した代表的なサービス。

» 2012年11月26日 08時12分 公開
[恩蔵直人,早稲田大学]

フラッシュ・マーケティング

 時間をベースとした競争、つまり「タイムベースド・コンペティション」や間髪入れぬ対応を重視する「リアルタイム・マーケティング」など、マーケティングの世界では時間を軸とした発想やキーワードが少なくない。今回取り上げた「フラッシュ・マーケティング」も、「瞬間(フラッシュ)」に決着するという特徴から時間を軸としたマーケティング発想の1つといえる。

 フラッシュ・マーケティングは、有効時間を極端に短く限定したクーポンの登場によって生まれたもので、新聞や雑誌で配布される伝統的な紙ベースのクーポンとはまったく異なる仕組みを展開できる。時間限定クーポンは、48時間以内などのように時間を限ってインターネットを通じて提供される。この種のクーポンでは、「最低100人」のようにクーポンが成立するための最低必要人数を課しているタイプが多いため、共同購入型クーポンと呼ばれたりもする。あらかじめ決められた時間内に希望者が一定数を超えれば、消費者は割引率の高いクーポンを利用できる。

 例えば、48時間以内で購入意向を示す100人が集まれば、60%引きのクーポンが提供されるといった具合だ。決められた時間内に希望者が一定数に達しなければ、そのクーポンは成立しない。そこで共同購入型クーポンを利用したいと考える消費者は、一定数を確保するためにTwitterなどでクーポン情報を人々に広め、購入希望者を短時間のうちに集めなければならない。そのためフラッシュ・マーケティングの仕組みでは、消費者は企業からの単なる情報の受け手ではなく、企業の販売促進に一役買う協力者の働きをする。

フラッシュ・マーケティングを活用した代表的なサービス:米GROUPON(左)とリクルートのポンパレ(右)

 米GROUPONによる共同購入型クーポンが有名で、日本でもリクルートのポンパレなどが類似したクーポンを展開している。時間を限定している点では、伝統的なタイムセールと似ているが、フラッシュ・マーケティングはソーシャルメディアの発展によってはじめて成立する手法といえる。

寄稿者プロフィール

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恩蔵直人(おんぞうなおと) 早稲田大学商学部卒業後、同大学大学院商学研究科へ進学。同大学部商学部助教授などを経て、1996年同学部教授。2008年9月から同大学商学学術院長兼商学部長。主な著書に「競争優位のブランド戦略」(日本経済新聞社)、「マーケティング」(日経文庫)、「コモディティ化市場のマーケティング論理」(有斐閣)など。

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