マーケティングと経営の融合を考えるなら、組織構造に配慮しないわけにはいかない。新会社「ポッカサッポロフード&ビバレッジ」の戦略企画本部長 征矢真一氏に、新組織の設計意図やその目指すところを聞いた。
マーケティングの意義やその役割範囲が広がるにつれて、それは限りなく経営と近づいていく。「第3回 CEOは『DNAの存続』を志向し、CMOは『適者生存』を追求する」では、マーケティングと経営について、CMOやCEOといった人に焦点を絞り、リーダーシップや役割の在り方について議論をした。
今回は組織をテーマにしながら、マーケティングと経営の融合について考える。
2013年1月、サッポロホールディングスの食品飲料事業会社である、サッポロ飲料株式会社と株式会社ポッカコーポレーションが経営統合し、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社として事業を開始する。
2012年10月には、経営ビジョンともに新会社の組織体制が発表された。発表によると、スピードをもって戦略を実行するために、経営戦略部門とマーケティング部門を一体化した「戦略企画本部」を設置する、とある。
今回は、新会社の戦略企画本部長となる征矢真一常務取締役(2013年1月1日付け人事として内定)に、新組織の設計意図、目指すところについてお話を伺った。
松風 まず、経営戦略部門とマーケティング部門を一体化された目的についてお聞かせください。
征矢 経営の意思決定スピードを上げたい、というのが最大の目的です。今までサッポロ飲料は営業本部の中にマーケティング部がありました。そして社長直轄の別組織として経営企画部がありました。
一方、ポッカは営業とは独立してマーケティング本部がありました。これを2年前マーケティング本部と商品開発本部に再編し、マーケティング本部はいわゆる4P(Product、price、Place、Promotion)を全て束ねて経営を補完することをしっかりやることにしました。実際にはプロダクトは商品開発がやり、セールスは営業が担うわけですが、全体の組み立てはマーケティング本部で行うという意図でした。経営戦略についてはポッカも社長直轄の別組織でした。
この、ポッカにおける新組織が立ちあがってみると、マーケティングと経営の連携がうまくいかないことが分かってきました。マーケティング本部が4Pを束ね、事業ドメインのコア部分の組み立てや意思決定を行うと、結果的に経営戦略はコア事業以外の部分を見ることになって、組織が二重構造状態になりました。しかし、マーケティングの本来の観点から考えると、マーケティング戦略とは、すなわち経営戦略となるはずです。
経営統合後のポッカサッポロでは、この二重構造を解消して経営スピードを上げていこうと考えています。
松風 “ホールディングス”ではまた違うと思いますが、“事業会社”においてはマーケティング部門の役割が深化すると経営戦略部門との二重構造が起こりうるということなのですね。さて、多くの企業のマーケティング責任者が、経営とマーケティングを融合させて企業成長へと脱皮させたいと考えていますが、そこにはいつも、いわゆる「既存組織の壁」「経営者認識の壁」があります。
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