LTVが「1.5倍」に ミツカン「腸活コミュニティ」が実証した、値上げ時代に選ばれ続ける方法(1/2 ページ)

ミツカンの新ブランド「Fibee」(ファイビー)はファンコミュニティが「Fibee腸内会」を運営している。コミュニティ参加者のLTVは、1.5倍。コミュニティへの投稿から、ブランド担当者が想定外のインサイトを得ることもあった。

» 2026年08月04日 09時30分 公開
[野本纏花ITmedia]

 相次ぐ値上げの波に、消費者の財布のひもは、かつてないほど固くなっている。ちょっと特別なぜいたく品はもちろんのこと、食料品や日用品といった生活必需品であっても「安さで選ぶべきか。それとも、少々値が張っても、本当に気に入ったものにするべきか。いや、そもそも、いま買わなくてもいいかもしれない……」と、ためらった経験のある人も少なくないだろう。

 消費者の商品を選ぶ目がシビアになればなるほど、企業が単発の広告や割引・キャンペーンのような従来の手法だけに依存するリスクは高くなる。可処分所得の奪い合いが激化する中では「“多少高くても”選びたい」「“他のものを我慢してでも”欲しい」といったプラスαの動機付けが必要になるからだ。

 そんな厳しい局面を打破するための打ち手として再注目されているのがコミュニティマーケティングだ。

 2010年代半ば、SaaSの登場とともに流行したコミュニティマーケティングだが、当時は「コミュニティが売り上げ・利益にどう貢献したのか」、その成果の証明が技術的に難しく、理想論にとどまってしまった感がある。

 しかし、AIをはじめとするテクノロジーの進化により「コミュニティで顧客と深い信頼関係を築き、中長期的な売り上げ・利益の向上を図る」「新たな顧客を呼び込むエバンジェリストをコミュニティの中から生み出す」「コミュニティで収集した顧客の声を商品開発に生かす」といったコミュニティマーケティングの真骨頂を発揮できるようになった。

 AI時代のコミュニティマーケティングを実践するミツカンの新ブランド「Fibee」(ファイビー)の事例をもとに、企業の生き残りを賭けたファン戦略の描き方を探る。

本記事では、Asobicaが7月23日に開催したメディア向け勉強会の内容を紹介します。


SNSとは異なる客層を獲得 ファンコミュニティ「Fibee腸内会」

 「Fibee」は、発酵性食物繊維をおいしく・手軽に摂りながら“腸活”ができるとする、ミツカンの新ブランドだ。デニッシュやワッフル、グラノーラやバウムクーヘンなどさまざまな商品があり、ミツカン公式通販サイトやECサイトのほか、一部のスーパーやコンビニでも購入できる。

「Fibee」ブランドの考え(Asobica提供)

 そんなFibeeのファンコミュニティが「Fibee腸内会」だ。ミツカングループの共通会員基盤「Mizkan ID」に登録すれば誰でも入会できるため、Fibeeを愛用する熱狂的なファンだけでなく、腸活に興味はあってもFibeeのファンだと強く自認しているわけではない一般顧客も参加しているという。

 いくら推し活ブームとはいえ、食品ブランドのコミュニティでどんなコミュニケーションが行われているのか、筆者は全く想像がつかなかった。運営が懸命に発信しているだけで、ユーザーからの反応はゼロなんてことになったりしないのか。あるいは、古参ユーザーがコミュニティを牛耳って、白けた空気が漂ったりはしないのか。

 ところが実際に入ってみると、想像以上に高い頻度で、しかも複数のユーザーが投稿していることが分かった。運営からの投稿に対しても、多くのユーザーが反応しており、アットホームな雰囲気に包まれていた。

 「腸民(ユーザー)の皆さまには、Fibeeのブランドを一緒につくるパートナーとして、どんどんのめり込んでもらいたいと考えている」という白岩真梨子氏(グロース事業グループ マーケティング&ダイレクト本部 マーケティング部)の言葉通り、Fibee腸内会にはユーザーの帰属意識を高めるためのさまざまな仕掛けが施されている。

 その一つがWelcomeページの存在だ。まずFibee腸内会にログインすると「ゆる腸活コミュニティ『Fibee』へようこそ!」というページが開く。そこでは運営スタッフとして白岩氏と栗原祐己氏(グロース事業グループ マーケティング&ダイレクト本部 マーケティング部 マネージャー)が顔出しで登場し、Fibeeのオリジナルキャラクター「Fibees」(ファイビーズ)とともに、Fibee腸内会でできることを紹介している。

Fibee腸内会の主なコンテンツ

  • みんなのおやつ・ごはんフォト……Fibeeに限らず日常的に食べたものを、写真やテキストでブログのように投稿できる場所
  • 回覧板……ファンミーティングのレポートや新商品・キャンペーンの紹介、投票企画やライブ配信のお知らせなど、運営スタッフがFibeeの最新情報を投稿する場所
  • ラクさんの豆知識……Fibee開発秘話(運営スタッフインタビュー)や食物繊維コラム、Fibeesのキャラクター紹介など、長文の読み物系コンテンツがメインの場所。ちなみに“ラクさん”は善玉菌/酪酸菌のキャラクター

 他にも、なんでも自由に投稿できる「集会所」や、Fibeeをお店で見つけたら報告しあう「みつけた!Fibee」などもあり、全てのコンテンツに対してユーザーは「いいね」やコメントを付けられる。

 SNSが普及している昨今では「わざわざ独自のコミュニティをつくらなくても、SNSの公式アカウントでも同じようなことができるのではないか」と考える人もいるかもしれない。だが「コミュニティとSNSでは、発信している人が異なることが分かってきた。不特定多数の目に触れない、心理的安全性が担保された空間の中だからこそ言えることがあるのだと捉えている」と、コミュニティの意義について栗原氏は分析した。

ミツカン白岩真梨子氏(グロース事業グループ マーケティング&ダイレクト本部 マーケティング部、画像左)、栗原祐己氏(グロース事業グループ マーケティング&ダイレクト本部 マーケティング部 マネージャー、画像右)
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