インタビュー
» 2012年08月31日 11時00分 UPDATE

ゲーミフィケーションはマーケティングを変えるか:BadgevilleのCEO直撃インタビュー:ゲーミフィケーションは中小企業も取り入れられる

ゲーミフィケーション先進企業Badgeville CEOのKris Duggan氏へのインタビューを通じてゲーミフィケーションをビジネスやマーケティング取り入れる上でのポイントを紹介する。

[Social Media Experience]
Social Media Experience

 いろいろな分野で注目を集めているゲーミフィケーション。Social Media Experienceでも、その可能性について以前より取り上げてきました。今回は、ゲーミフィケーションプラットフォームを提供するBadgevilleのCEO、Kris Duggan氏に直接お会いすることができたので、ゲーミフィケーションについてのインタビューを行いました。Badgevilleのプラットフォームを使ったWebサイトには、Samsung Nationなどがあり、Social Media Experienceでもその仕組みについて分析しました。

 今回のインタビューでは、改めて同社の取り組みやゲーミフィケーションの活用効果についてうかがってきました。なお、Kris Duggan氏は日本初のゲーミフィケーションのイベントである「ゲーミフィケーションカンファレンス2012」(主催:ゆめみ)のために来日されていました。

設立からわずか2年、急成長する初のゲーミフィケーション企業

Social Media Experience:深谷[1] Badgevillのバックグラウンドについて簡単に教えてください。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] ゲーミフィケーションを一言でいうと、ゲームのテクニックをゲーム以外の分野に適用する方法です。ゲーミフィケーションはあらゆる分野への適用が可能です。例えば、顧客管理や従業員の業務管理など、あらゆる分野にそれぞれに適した異なる方法で適用することができます。

 顧客管理の観点からは、ロイヤリティを高めるために使うことができますし、従業員管理の観点からは、労働のモチベーションを上げるために使うということができます。

photo Badgeville Webサイトより

 Badgevilleは、設立してからわずか2年の会社ですが、現在従業員は75人まで増えました。顧客はおよそ200社、ベンチャーキャピタルから4000万ドルの資金調達も受けています。

 ゲーミフィケーション業界を引っ張る企業として成長していますが、先日、日本のマーケットにもサービスを提供し始めました。来年は200人規模の採用を予定しています。多くの企業がゲーミフィケーションの仕組みを、顧客管理、開発、コミュニティ、従業員管理など、さまざまな分野で取り入れたいということから、急成長しているのです。

photo

ゲーム以外の領域にゲームの要素を取り入れるのがゲーミフィケーション

Social Media Experience:深谷[1] ゲーミフィケーションというのは、時として誤解されやすい単語ですが、どう定義し、具体的な手法としてどんなものがありますか。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] ゲーミフィケーションというのは、ゲームのテクニックをゲーム以外の分野に適用することです。ゲームのテクニックというのは、達成に応じたポイントの付与、レベルアップ、ランキング、リーダーボードなどがありますし、友達のレベルやステータスを見られることなども含まれるでしょう。つまり、たくさんのテクニックを適用することが可能です。

 よってゲーミフィケーションにおいては、ターゲットに応じてどのテクニックが効果的かを考えなければなりません。例えば、顧客ロイヤリティを高めたいという場合は、再購入などの行動が分かるようにすると効果的でしょう。あるいは、社内の営業チームでゲーミフィケーションを適用するとしたら、お互いを競争させるようにして、従業員のモチベーションを上げてパフォーマンスを改善するというような使い方ができます。

 要するに、たくさんのやり方がある分、要求に応じてビジネスに適したやり方を探す必要があります。

急速に普及する新概念「ゲーミフィケーション」

Social Media Experience:深谷[1] ゲーミフィケーションの考え方は、USでは多くの人に受け入れられていますか。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] そうですね。「ゲーミフィケーション」という言葉自体新しいものです。私たちが会社を作った後くらいに、コミュニティで「ゲーミフィケーション」という言葉が使われるようになりました。

 今、Googleで検索してみると、300万以上の検索結果がヒットします。つまり、2年の間にゼロから300万になったということで、急速に広がりました。でもまだ「聞いたことがある」「理解の途中」という人も多く、完全に理解されているわけではありません。中には、ゲーミフィケーションは「競争のことでしょ」という人もいますし。

 私たちの考えでは、ゲーミフィケーションには常に競争という要素が含まれますが、競争といっても、複数人で一緒に何かを成し遂げるというようなやり方もゲーミフィケーションです。私のみたところ、ゲーミフィケーションの方式はアメリカでは今人気になっています。なぜなら、効果を人々が目にしているからです。

ソーシャルメディアからオウンドメディアへ

Social Media Experience:深谷[1] ゲーミフィケーションとソーシャルメディアはとても相性がよいですが、ソーシャルメディアの人気も影響していますね。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] そうですね。しかし、少しずつ変わるでしょう。

 ここ数年、ソーシャルメディアは、Facebookページに代表されるソーシャルメディアサービスを通して顧客ロイヤリティを高めるために使われることが多くありました。多くのブランド、企業はその価値を実感していますが、顧客が自社のWebサイトやモバイルサイトで直接エンゲージメントを高める方がもっと価値があることに気づいています。こうしたとき、ゲーミフィケーションの仕組みを使って顧客との関係をより密接にすることで、Facebookを使わなくてもよくなるでしょう。

 多くのソーシャルメディアの専門家が今ゲーミフィケーションの考え方を取り入れようとしています。ゲーミフィケーションは顧客ロイヤリティ、従業員パフォーマンスなどさまざまな分野で適用できますが、そもそもFacebook、Twitter、LinkedIn、Kloutなどにも、ゲーミフィケーションの要素はすでにあり、彼らのやり方で取り入れています。

Social Media Experience:深谷[1] ゲーミフィケーションはさまざまな分野に取り入れられているということですが、どのような事例がありますか。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] Universal Musicなどは取り入れています。同社に所属するアーティストはそれぞれWebサイトを持っているのですが、アーティストのWebサイト上でファン同士がコミュニケーションしたり、音楽をシェアしたり、友だちになったり、交流できるコミュニティを作っています。

 ファンの次の活動を促したりコミュニティ内でユーザーのアクションがリアルタイムで表示される仕組みがあります。バンドの方はファンの可視化やロイヤリティの高いファンを知ることができますし、シェアによって音楽を広めることができるのです。つまり、ファンにとってもバンドにとってもWin-Winです。

日本はゲーミフィケーション巨大市場となる

Social Media Experience:深谷[1] 面白い仕組みですね。USの音楽業界はその形を大きく変えている一方で、日本の音楽業界はまだうまく変化に対応できていない部分があるので、日本にそのまま適用というのはちょっと難しそうな気がしますが。日本のマーケットとゲーミフィケーションの可能性はどうでしょうか。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] そうですか。ただ、日本のビジネス分野にゲーミフィケーションを取り入れることは可能だと思っています。というのも、日本というのは文化的に「順番」というものが好きですし、ゲームもよくやります。それに、パフォーマンスや達成の可視化にも関心があるし、Webサイトだけでなく、モバイルの利用も普及していますし。

 ゲーミフィケーションは、次のステップを表示したり、達成度を可視化できるので、初めての人に向けた「ガイド」にも使えますし、あらゆるWebサイト、モバイル、メディア、プロダクトサイトなどに適用可能です。例えば、プロダクトサイトであればカタログの閲覧の状況に応じたポイント付などもできます。

「期待する行動」の実行率を大きく上げることも

Social Media Experience:深谷[1] ゲーミフィケーションの効果測定はどのように行うんですか。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] ゲーミフィケーションでは、ユーザーに期待する行動を定義することから始まります。そしてその行動を取ってもらうようにするための仕組みです。よって、その期待する行動がどれくらい増えたかなどは簡単に計測できます。

 例えば、購入頻度を上げる、ロイヤリティを上げるなどをゲーミフィケーションの方式から可視化することができます。実際ゲーミフィケーションは、ROIを向上させます。ゲーミフィケーションを取り入れたことで、購入額や頻度、プロダクトレビューシェア回数、コンテンツ閲覧などが少し上がるのではなく、大きく上がるので、顧客も満足しています。

 ゲーミフィケーションは、次に何をすればいいのかをユーザーに示すので、ユーザーにも分かりやすくなります。例えば、コーヒーショップなどでもゲーミフィケーションに基づくロイヤリティプログラムを構築することは可能です。再来訪すればステータスが上がったり、Webサイトの特定のコンテンツにアクセスしたら、割引が受けられるというようなことです。ゲーミフィケーションは、提供する側が何を期待しているのかを明らかにするので、ユーザーも行動しやすくなります。Samsung Nationはまさにわかりやすい例で、ゲーミフィケーションを取り入れることによって、プロダクトレビューは2倍になりました。

すでに国内の事例も

Social Media Experience:深谷[1] 日本国内において、BadgeVilleのゲーミフィケーションプラットフォームをすでに導入している企業はありますか。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] (インタビュー前日の6月26日に)ドクターシーラボさんが新しいWebサイトをリリースしました。

ゆめみ:深田浩嗣氏[3] ビンゴの形式を取り入れています。Webサイトの中で特定の行動(商品説明閲覧、メルマガ登録など)をすると、穴が開き、ビンゴになると特典があります。ビンゴを揃える中で、Webサイトの中を見てもらったり、知らなかった商品に気づいてもらえるような設計になっています。

Social Media Experience:深谷[1] 実際の導入コストというのはどれくらいかかるのでしょうか。エンタープライズレベルが対象になるのでしょうか。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] いいえ。月額数千ドルから始められます。なので、中小企業でも取り入れることは可能ですよ。

ゆめみ:深田浩嗣氏[3] もう少し説明すると、ページビューで段階が用意されていて、数百万PVのWebサイトであれば月額10万円くらいから始めることもできます。

Gamification.orgの買収意図

Social Media Experience:深谷[1] 先日、コミュニティサイトである  Gamification.orgを買収したということですが、買収の理由はどこにあるのでしょうか。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] みんながゲーミフィケーションのベストプラクティスやケーススタディなどをシェアできるようなパブリックコミュニティを作りたかったからです。

 Gamification.orgは現在GoogleでGamificationという単語を検索したときに一番に表示されるコミュニティであることから、買収を决めました。

 私たちは、コミュニティ内で情報を公開できますし、よいゲーミフィケーションの例を紹介することで、他の人達のモチベーションを上げることができ、コミュニティに貢献することができます。

 今後2、3カ月を目処にコミュニティを設計しなおし、再ローンチする予定です。とてもワクワクしています。

コンプガチャはゲーミフィケーションに取り入れられるか?

Social Media Experience:深谷[1] 日本のソーシャルゲーム市場についてはどのようにお考えでしょうか。例えば「コンプガチャ」という仕組みを聞いたことはありますか?

Badgeville:Kris Duggan氏[2] いいえ、何でしょうか、それは。

ゆめみ:深田浩嗣氏[3] バーチャルアイテムを収集するための仕組みです。有料のクジをひくとランダムでアイテムが手に入り、コレクションを揃えるとレアなアイテムがもらえますが、全てのアイテムを収集するには相当の費用がかかります。また、収集したアイテムが増えると次のアイテムが出にくくなるような仕組みにもなっています。多額の費用を費やすユーザーが増えてしまい、社会問題となり、現在はコンプガチャの仕組みは違法になって、禁止されることになりました。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] なるほど。ポジティブな面とネガティブな面があるのですね。ポジティブな面としては、効果が高いこと、ただし今は法律で禁止されてしまった。ネガティブな面は、ユーザーが多額の費用をかけてしまうことですね。

 ビジネスにおいて、このコンセプトをどう活用できるかを考えてみたいですね。集めるということに、みんな動機付けされてエンゲージしてくれます。例えばプロダクト情報を読めばアイテムが貰えるようにします。この場合ユーザーに費用はかからない分、時間をかけてもらう。

 このコンセプト自体は、ビジネスの活性のためにも使える手法です。時間をかけることでバーチャルなアイテムをもらえ、コレクションできるようにしてもいいですね。

 何かをコレクションするというのは人間の本能の1つともいえます。ある人は切手集めに熱中しますし、私自身もコイン集めをやっています。

 そして人は何かをコンプリートするということも好きです。USではベースボールカードというものがあります。みんな、カードを全部集めたくなる。最初のカード、2枚目のカードは簡単に手に入りますが、だけど、だんだん集めるのが難しくなって、最後のカードを手に入れるのはとても大変になります。

 コレクションというコンセプトはビジネスのいろんな分野に適用できます。例えばコーヒーショップでも使えます。コーヒーショップの全店舗に来店すれば景品がもらえるといったラリーなどがありますね。

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ゲーミフィケーションの啓蒙活動にさらに注力

Social Media Experience:深谷[1] 次のステップとしてはどんなことを目指したいですか。

Badgeville:Kris Duggan氏[2] 事業規模を拡大していきたいですね。マーケティング部門、プロダクトエンジニアリング部門などを強化していきたいです。また、国際展開も予定しており、ヨーロッパオフィスを設立しますし、日本のマーケットにも期待しています。

 もちろん人材採用も積極的に行い、現在75人の社員は、年内に100人、来年は200人になる予定です。

 そして、マーケットに対してゲーミフィケーションという考え方を啓蒙することも必要です。ゲーミフィケーションの事例としても、顧客管理にフォーカスした事例、従業員管理にフォーカスした事例などがありますし、こうした情報を提供していきたいです。また活用方法、使い方についても啓蒙していきたいです。当分忙しい日々が続きそうですよ。

参考:ドクターシーラボに取り入れられたゲーミフィケーション

 インタビュー後、早速、ドクターシーラボに新しく取り入れられたというビンゴを試してみました。Webサイトにログインしてみると、右下にキャラクター「げるんちゃん」がビンゴの参加を促します。クリックすると、ビンゴの説明ページが開きます。ビンゴをはじめると、カードが開き、それぞれの列にヒントが隠されています。

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 ヒントを頼りにWebサイトの中を探してみると、ビンゴの足あとを発見! クリックすると1つクリアしたことになり、その部分に穴が空きます。これを繰り返して、列を揃えていきます。

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 列をそろえると、ポイントが貰えたり、プレゼントが貰えたり、いろいろな特典があります。

 普段からドクターシーラボを使っている人にとっては、いつもどおりに閲覧しているだけで、ゲームに参加できますし、ヒントを頼りに普段は見ないページにもアクセスして新しい商品を知るきっかけになりそうです。

 欲を言えば、カードの状況を見るために、毎回ウィンドウを開かなければならないので、カードの達成状況などが常にサイトのどこかに表示されると、もっと簡単に楽しめるかなと感じました。

まとめ:ゲーミフィケーションの取り入れ方、ユーザー体験が勝負に

 ゲーミフィケーションをWebサイトに取り入れるという動きは今後、国内でも活性化していきそうです。インタビュー内でも言われたように、ゲーミフィケーションの方式がたくさんある中で、ユーザーが楽しみ、提供する側の期待する行動を取りたくなるような仕組みを設計することが非常に重要になってきています。

 あらゆる分野に適用できる分、ユーザー体験をより向上させるように設計しなければならないので、動機付けや熱中度合い、難易度調整など、一般のゲーム設計のプロフェッショナルの経験や知識も求められるようになるでしょう。

※この記事はSocial Media Experience「BadgevilleのCEO直撃インタビュー:ゲーミフィケーションは中小企業も取り入れられる」を一部修正して転載しています。


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