「Adobe Summit 2017」で発表された新たな製品群「Adobe Experience Cloud」の目指すものとは何か。ITアナリストの冨永裕子氏が解説する。
2017年3月に米国ラスベガスで開催されたAdobe Systems(以下、Adobe)の年次イベント「Adobe Summit 2017」のテーマは「Make Experience Your Business」だった。今回、Adobeはこれまで以上に顧客体験重視の姿勢を前面に押し出し、「エクスペリエンスビジネス」を推進しようとする企業を新しい製品体系で支援する姿勢を明確に示した。本稿では同社の狙いと、「Adobe Marketing Cloud」からより広い製品体系に生まれ変わった「Adobe Experience Cloud」について解説する。
基調講演で、AdobeはこれまでAdobe Marketing Cloudとして提供してきたマーケター向けの製品体系を刷新することを発表した。
企業向けにはAdobe Experience Cloud、個人向けには「Adobe Creative Cloud」「Adobe Document Cloud」を提供するようになった。企業向けのAdobe Experience Cloudの傘下に入る製品コンポーネントは、「Adobe Marketing Cloud」「Adobe Analytics Cloud」「Adobe Advertising Cloud」の3つ。この主要3製品同士、そして個人向け2製品も含め、シームレスな連携が可能だ。
旧Adobe Marketing Cloudでは、共通基盤のコアサービス上に8つのソリューションが存在する形だったが、新しいAdobe Experience Cloudではどう変わったのか。3つのクラウドをそれぞれ詳しく見ることにしよう。
Adobe Experience Cloud傘下で再編成された新たなAdobe Marketing Cloudには「Adobe Target」「Adobe Experience Manager」「Adobe Campaign」「Adobe Social」「Adobe Primetime」が含まれている。ターゲティング、コンテンツの管理とパーソナライゼーション、キャンペーンの実行をスケーラブルに展開することができ、顧客とのエンゲージメントを高めることにフォーカスする。
Adobe Analytics Cloudには「Adobe Audience Manager」と「Adobe Analytics」が統合されている。企業が持つデジタルとオフラインのデータを統合し、インサイトからアクションまでのプロセスをより早く、より賢く実行することを支援する顧客インテリジェンスエンジンの役割を担う。Adobeはこれまでも「データ民主化」というスローガンを掲げ、専門家だけではなく、スキルレベルの異なるさまざまなユーザーがデータから導かれるインサイトを活用できるよう支援してきた。今後もこの方針を継続する。
「Adobe Media Manager」と2016年11月に買収した「TubeMogul」の製品を連携させ、動画やディスプレイ、検索、ソーシャル、テレビと、どんな出稿先、どんなデバイスでも対応できるクロスチャネルの広告出稿ソリューションを提供するのがこの製品群だ。メディアプランニングからメディアバイイングが1つのソリューションの中に統合されているため、企業は予算や展開状況に合わせて出稿先を柔軟に最適化できる。
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