ソニーが逆境の時代を乗り越えるために実践したワンツーワンマーケティングとデータ活用の取り組みファンを増やし選ばれ続けるブランドへ(1/2 ページ)

ファン創造に向けカスタマーマーケティングを展開しているソニーマーケティング。どのような顧客コミュニケーションを目指し、いかにデータを活用しているのか。

» 2018年06月12日 07時00分 公開
[やまもとはるみITmedia マーケティング]

 2018年3月期連結決算で過去最高益を更新したソニー。事業のポートフォリオほ大きく入れ替わったが、ホームエレクトロニクスにおいても今なおソニーファンは根強く残る。

 ソニー製品をこよなく愛するユーザーと向き合い、高いLTV(顧客生涯価値)を実現してきたソニーマーケティングのデジタル領域における取り組みはどういうものか。

 2018年5月に開催された「TREASURE DATA “PLAZMA” TORANOMON」におけるソニーマーケティング カスタマーリレーション部 ダイレクトコミュニケーション企画推進課 橋本好真氏の講演内容から探る。

橋本好真氏 橋本好真氏

ソニーマーケティングが目指したワンツーワンマーケティング

 橋本氏は、ソニーマーケティングにおいてデジタル広告やWebサイトマネジメント、ECシステム構築、DMP、マーケティングオートメーションなどを担当し、ワンツーワンマーケティングを推進している。

 同社が販売を手掛けるテレビやオーディオ機器、カメラといったAV家電市場は、2010年をピークに縮小傾向にある。2010年に地デジ移行によるテレビ特需と家電エコポイント制度終了によって生じたバブルは、その後の急激な需要減退をもたらした。さらには、スマートフォンの台頭によってデジタルカメラや音楽プレーヤーの需要も減り、デジタル家電のコモディティ化も進むなど、コンシューマー向けAV機器を主軸としてきたソニーには逆境の時代となった。

 そうした中、ソニーは経営戦略の大幅な見直しを決断する。いたずらに規模を追うことをやめ、高付加価値製品による市場創造へと舵を切ったのだ。4Kテレビ、有機ELテレビ、ハイレゾ音響機器、フルサイズミラーレス一眼カメラなど、ソニーの技術力を生かした高付加価値の新製品を投入したことにより、製品の平均価格は2011年度で底を打ち、以降は上昇を続けている。ソニーの業績も回復に転じ、市場全体の活性化にも貢献した。

 では、業績回復と市場活性化を支えたマーケティング施策とは、どのようなものだったのだろうか。橋本氏たちは、まず「ソニーのファンを増やし、結果的に継続的に選ばれるブランドになる」というコンセプトを掲げた。ソニー製品を使い、楽しんで、生活の変化を感じてもらう。そこで得た満足感を基に、次もソニー製品を買ってもらいたい。こうした思いから、ファン創造に向けたカスタマーマーケティングへの取り組みが始まった。

顧客が心地よいと思えるアプローチとは何か

 取り組みを進めるに当たり、橋本氏たちは「ロイヤリティループ」の概念を活用した。これは、顧客が商品やサービスの購入・体験を通じて企業やブランドに対する愛着・信頼性を高め、ロイヤルカスタマーに変化させるまでの一連の流れを現したものだ。製品やサービスに満足した顧客がロイヤリティループに突入すると、より自社の製品を購買しやすくなるとされている。

ロイヤリティループ ロイヤリティループ《クリックで拡大》

 このフレームワークに沿って顧客とのコミュニケーションを設計するに当たり大切にしたのが、相手を理解し、顧客が心地よいと思えるアプローチを行うことだった。心地よいアプローチとは、ユーザーにとって有用で受け取って不快でない情報を、ユーザーが必要とする適切なタイミング提供することであると橋本氏は考えた。

 そして、それを実現するために、ユーザーの態度変容を捉えてワンツーワンコミュケーションを実践することにポイントを絞った。こうして、メール配信や広告出稿の方法を見直したところ、成約数や受注額は増加しコストは低減するという成果が出ている。

 メール配信や広告手法を変えたのと同時に、ユーザーとのタッチポイントの充実も図った。具体的には、従来のメールやWebに加えてアプリでのワンツーワンアプローチを拡大したり、購入後のユーザーに向けてはメールやコミュニケーションサイト、リアルの場での体験会などを開催したりしている。

 このようなコミュニケーション活動を通じてユーザーのLTVが向上していることは、数字にも表れている。そして、ここまでの実践結果を基に、橋本氏はカスタマージャーニーの設計と運用にも取り組み始めた。

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