インタビュー
» 2020年02月28日 13時00分 公開

単独インタビュー:福田康隆氏がアドビ退社後初めて語ったB2Bマーケティング&セールスと自身の「これから」の話 (1/2)

アドビ システムズ専務執行役員の座を退いた福田康隆氏が新天地ジャパン・クラウドで再始動。これからの方向性について聞いた。

[冨永裕子,ITmedia マーケティング]

 マーケティングオートメーション(MA)あるいはエンゲージメントマーケティングという概念を日本に定着させる上で、旧Marketoの日本法人マルケトが残した功績は多大なものといえるだろう。

 そのマルケトをけん引したのが福田康隆氏だ。セールスフォース・ドットコム専務取締役からマルケト社長へと転身し、AdobeによるMarketo本社買収後はアドビ システムズ専務執行役員・マルケト事業統括として活躍していたが、2019年末をもって退社。2020年1月に新天地ジャパン・クラウドに転じた。今回、再始動した福田氏がこれから挑戦したいことについて語った。

福田康隆氏 福田康隆氏
ジャパン・クラウド パートナー。JCCコンサルティング代表取締役社長。1972年生まれ。早稲田大学卒業後、日本オラクルに入社。2001年にOracle本社に出向。2004年、Salesforce.comに転職。翌年、同社日本法人のセールスフォース・ドットコムに移り、以後9年間にわたり、日本市場における成長をけん引する。同社専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを 務めた後、2014年にマルケト入社と同時に代表取締役社長に就任。2017年10月からはMarketoアジア太平洋日本地域担当プレジデントも務める。AdobeによるMarketo買収に伴い、2019年3月にアドビ システムズ専務執行役員マルケト事業統括に就任。2020年1月より、ジャパン・クラウドのパートナーおよびJCCコンサルティングの代表取締役社長に就任。ハーバード・ビジネススクール General Management Program修了。著書に『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』 (翔泳社、2019年)。

なぜジャパン・クラウドだったのか

――最初に、新たなポジションとこのタイミングで転身に至ったいきさつを聞かせてください。

福田 ジャパン・クラウドは、海外で急成長している企業との合弁会社の設立を通して、日本市場への進出と中長期的成長をサポートする会社です。過去にセールスフォース・ドットコムやコンカー、マルケト設立をサポートしたアレン・マイナー氏(『THE MODEL』の序文を執筆)とアルナ・バスナヤケ氏が立ち上げた会社で、B2B SaaSに特化した投資を行っています。最近では、NewRelic、WalkMe、ブラックライン、nCinoの4社の日本法人設立をサポートしました。

 ジャパン・クラウドに転じた理由は大きく分けて2つあります。1つは2年ほど前からアドバイザーとしてジャパン・クラウドに関わる中で、自分なりに気づいた外資系日本法人の成長のベストプラクティスをノートに書きためてきました。そのノウハウや知見を生かしたいと考えたのです。

 もう1つは、自分自身の視野を広げたいからです。テクノロジー業界の面白さはその変化が早いことにあります。セールスフォース・ドットコム、マルケトでやってきた営業やマーケティングを深掘りするよりは、もう少し横に視野を広げて成長ポテンシャルの高い会社をサポートしたいと考えました。

――ジャパン・クラウドでの役職に加え、モビリティデータプラットフォームを提供するスマートドライブの社外取締役にも就任されました。有望な市場であるMaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動)において福田さんのSaaSやマーケティングの知見、そしてスタートアップが急成長を遂げるためのノウハウが期待されています。

福田 私自身がスマートドライブとの接点を持ったのが今から1年前のことです。2018年から続けているユーザベースでのマネジメントアドバイザーの仕事とも共通するのですが、外資系のベンダーにいては得られない意思決定のダイナミズムを目の当たりにし、感銘を受けました。スマートドライブは東南アジア市場の開拓を進めていますし、そこにも自分の経験を生かしたいと思っています。

――ジャパン・クラウドやスマートドライブにはマルケトで福田さんと一緒に仕事をしてこられたメンバーも何人か移られていますね。百戦錬磨の「マルケトマフィア」たちがB2Bスタートアップの世界に解き放たれた印象があります。

福田 アドビのビジネスにとっては寂しいことかもしれませんが、成長した人たちが求められて新天地に行くのは良いことなので、ぜひ新しい職場でも活躍してもらいたいと思います。

マルケトで得たもの

――福田さんはもともと営業畑の出身ということですが、マルケトの事業に参画して感じられたマーケティングの魅力というのはどのようなところでしょうか。

福田 セールスフォースで営業を経験させてもらって、CRM/SFAの可能性をすごく感じていたのですが、同時に営業の限界も感じていました。営業、特にB2Bの世界で売り上げを上げようとすれば人員を増やしていかなくてはいけません。そうなるとスキルの標準化などにものすごく労力がかかります。営業に対してSFAにデータを全て正しく入力するよう求めても全員がそれを規律正しくやるのはほとんど不可能です。しかし、マルケトで社内にマーケティング経験者に入ってもらってやっていく中で思ったのは、マーケティングにおいては一人の優秀な人間の考えたシナリオや施策をスケールさせる方法がいくらでもあるということです。これが最大のポイントですね。営業は良くも悪くも全員を統率する必要があるけれど、マーケティングは少数精鋭で事業に大きなインパクトを与えられる。そのことはマルケトのユーザー会で登壇するような優秀なマーケターの事例を見てもよく分かります。

――お客さまから学んだことも大きかったのでしょうか。

福田 それはそうですね。もともと私はマーケターではないということもあったので、マルケトでは最初からお客さまに学ぼうと考えていました。早々にユーザー会を立ち上げたのはそのためです。また、これまでマーケティングの経験があまりなくツールの導入をきっかけにマーケティングの世界に入ってきた人からも、柔軟に新しいものを取り入れる姿勢に学ばせてもらいました。

――経験豊富なマーケターからも、経験の浅いマーケターからも得られたものがある。

福田 だいたいどの会社でもセールストレーニングでやることは同じですが、マーケティングは業界が違えばやることが全然違ってきます。多種多様なやり方があることを知ったのは学びになったし、他社の成功事例が簡単に当てはまらない難しさもあると感じました。

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