「Instagramストーリーズ」が浸透する一方で「いいね!」数の非表示を試験導入するなど、「インスタ映え」よりも日常のコミュニケーションツールにシフトしつつあるInstagram。マーケターが注目すべきポイントをまとめた。
Facebook傘下のInstagramは2019年10月29日、毎年恒例となった広告主・マーケター向けのイベント「Instagram Day Tokyo 2019」を開催した。
「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」をミッションとし、進化し続けるInstagram。本稿では、今回のイベントで発表されたマーケティングプラットフォームとしてのInstagramの新たな機能や広告フォーマットとその効果、今後の方向性などについてポイントを絞ってレポートする。
ショッピングやグルメなど、購買行動には口コミの力が強い。SNSでフォロワーを多く獲得しているインフルエンサーは企業のマーケティング支援の観点でも注目されている。
インフルエンサーは一般ユーザーとは桁違いのいいね!を集める。故にいいね!数はこれまで、インフルエンサーがインフルエンサーであるための重要な評価指標とされていた。
しかし、Instagramは2019年7月からグローバルでいいね!数を非表示にするテストを行っており、日本でも数の表示は消えた。この件に関して冒頭に登壇したInstagram製造部門責任者のヴィシャル・シャー氏は、「いいね数にとらわれず、コンテンツそのものに集中してほしいが故に非表示にした」とコメントし、それが安全なプラットフォーム作りに結び付くという考えを述べた。
利用者は新しい発見のためにInstagramを訪れている。Ipsos Japanの調査ではInstagramで商品やサービスを見つける人が83%、Instagramで最新トレンドを把握する人が61%、Instagramでインスピレーションを受ける人が50%いる。
新しい発見を求めるユーザーのために、Instagramは「発見タブ」を充実させようとしている。発見タブとは、画面下部にある検索ボタンをタップすると表示される画面だ。ここには、利用者の興味関心に合わせてパーソナライズされた投稿が並ぶ。シャー氏はこの「発見タブ」に広告を表示できるようになったことを明かし、潜在顧客へのアプローチに活用してほしいと述べた(具体的な説明は後述)。
Instagram利用者の最近の動向として見逃せないことといえば「Instagramストーリーズ」へのシフトだ。ストーリーズの利用者数は1日当たり5億人を突破した。
Instagram利用者の9割は何らかのビジネスアカウントをフォローしている。ビジネスのメッセージであっても興味のある内容であれば受け入れやすい素地があるといえる。特にストーリーズにおいては広告を積極的に視聴してくれる。現在、ストーリーズ広告では一般利用者と同様にアンケートスタンプでインタラクティブな交流を図ることができるようになった。このような新しい機能を積極的に使ってストーリーズでブランドのストーリーテリングを行うことはますます重要になっている。
縦型全画面に対応した新しいクリエイティブを作らなければならないとなると、コストが課題になることがある。しかし、横型の素材しか持っていない場合でも、それをつなぎ合わせて縦型に加工することも簡単にできる。
もう1つInstagramが注力しているのが「ショッピング機能」だ。商品やサービスの購入を決めるためにInstagramを訪れる国内利用者の割合が80%であると述べ、新たなショッピング機能をテスト中であると明かした。
その一つが、新商品に「発売日」タグを表示させる機能だ。新商品をストーリーズに掲載し、発売日が書かれたスタンプをタップするとリマインダーを設定できる機能を現在準備中で、Adidasが新しいシューズの発売時にこれを試したところ、何と発売後3分で完売したという。この他、口紅の色やジュエリーなどをInstagramのカメラを使ってARで試着できる機能も開発中だ。
続々と発表されるInstagramの新機能の一部は、日本からも生まれている。日本はInstagramが初めて米国以外に設けた製品開発拠点だ。これはInstagramがそれだけ日本市場を重視していることの表れでもある。シャー氏は「エンジニア、デザイナー、データリサーチャーたちと日本で起こっていることを現地で学ぶ。非常に楽しみだ」と今後への期待を熱く語った。
続いて、フェイスブック ジャパン執行役員本部長の鈴木大海氏が国内におけるInstagramの現状について説明した。
InstagramのMAU(月間アクティブユーザー)数は2019年5月に3300万に達した。特に若年層にとってInstagramは「マスメディア」になっていると鈴木氏は主張する。博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所が発表した「メディア定点調査2019」によると、若年層のメディア接触時間のはテレビよりモバイルが多くなっているとされる。18〜29歳の若年層がInstagramに接触する時間は2017年の倍以上になっており、この世代の1カ月間の総利用時間は1億時間以上に上ると鈴木氏は述べた。
鈴木氏は、若年層の行動パターンが「ググる」から「タグる」に変わったという電通の天野 彬氏(電通メディアイノベーションラボ 主任研究員)の言葉を引用し、若年女性層がファッション、グルメスポット、レジャースポットをInstagramで発見しているというデータを公開した。「キーワードサーチは探したいものが明確に決まっているが、”こういう感じの店”といった検索にはビジュアルで探せるInstagramが使われている」と鈴木氏は語る。
求めるものをInstagramで探す際、使われるのが前出の発見タブだ。発見タブでは自分の感覚に近いものが見られる。フォローしていないアカウントからもコンテンツがレコメンドされる。見つけたら「保存」するなど、行動まで促せるのがInstagramの特徴で、若年層の85%はInstagramを見て何かしらの行動を取っているとのことだ。
続いてはInstagramストーリーズについて。鈴木氏によれば日本は世界有数のストーリーズ大国であり、日本で1日当たりに投稿されるストーリーズの数は700万に上る。DAU(デイリーアクティブユーザー)の70%が投稿を行っている。最も見られたストーリーズの中でビジネス投稿が占める割合は3分の1もあり、日本においてもビジネス投稿はしっかり利用者にリーチしている。
ビジネス投稿にインタラクティブ機能を利用している投稿は60%。ストーリーズのインタラクティブ機能がどれほど人気かといえば、2018年最も使われたスタンプとして、ハートやロケーションスタンプを抑えて「質問」スタンプが1位になったことからも推測できる。鈴木氏は、「インタラクティブ機能は友達や顧客との距離を縮めるもの。アカウントをより身近に感じられる」とビジネスシーンでの活用を勧めた。
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